先日うちの薬局を以前から利用していくれている人が、お子さんの処方箋を持ってきました。処方内容は以下のものでした。
Rp(1)オーグメンチン配合錠250RS 3錠
1日3回 毎食後 7日分
患者は13歳の男の子です。怪我でもしたか?男子には珍しい膀胱炎か?などど考えましたが、お話を聞いてきいてみると、学校の健康診断の尿検査で異常が見つかったようです。その後病院で再検査をしたところおそらく溶連菌に感染していたのではないかとのことでした。今回は溶連菌についての確認と、溶連菌感染後糸球体腎炎について解説していきます。
まずは溶連菌感染症について確認しておきましょう。
溶連菌とは正確にはA群β溶血性連鎖球菌といい、学童期に多い感染症です(ただし大人も罹患します)。接触感染および飛沫感染を起こします。
急性症状としては発熱、咽頭痛といった風邪症状がでます。特に咽頭痛が酷く、熱も高熱にあることが多いです。また舌の表面にブツブツができるのも特徴です。(これを苺舌といいます)
発熱、咽頭痛から1~2日して細かな赤みを伴う発疹といった皮膚症状が出て、掌や足の裏では皮膚が剥がれることがあります。これは溶連菌毒素によるものと考えられています。
治療はペニシリン系やセフェム系の抗生物質が推奨されています。
(ペニシリン系は10日間、セフェム系は5日間の服用します)
※ペニシリン系アレルギーの場合はマクロライド系を用いたりします。
抗生物質を服用すれば24時間程度で感染力はなくなるため、学校保健安全法における第1~3種の出勤停止の疾患には含まれていません。治療開始から24時間以上経過し、全身症状が良くなっていれば登校可能です。(ただし学校で流行が起こった場合、必要に応じ学校長が学校医の意見を聞き、第3種の感染症として出席停止措置をとれます)
治療は抗生物質だけで済み、早めに治療をすれば感染を広げるリスクも少ない疾患です。しかし溶連菌の最も注意すべきは続発性症状です。
溶連菌に感染すると回復後2~4週間してから急性糸球体腎炎・リウマチ熱・アレルギー性紫斑病などを起こすことがあります。続発症状は細菌による毒素や、抗体との免疫複合体により生じるとされています。続発症状は多数ありますが、今回の記事で患者さんが罹患した急性糸球体腎炎ついて説明します。
溶連菌感染後急性糸球体腎炎(PSAGN)は感染した溶連菌が腎炎惹起抗原を産生することで引き起こされます。腎炎惹起抗原に対して産生された抗体が免疫複合体を形成し、糸球体に沈着します。免疫複合体が補体の活性化などを生じ、糸球体が障害され急性糸球体腎炎を起こします。
症状としては糸球体が障害されることによる血尿、尿タンパクが生じます。糸球体からタンパク質が漏出することにより血管内浸透圧が低下するため、高血圧、浮腫も生じます。
一般的に血尿と浮腫がハッキリでるようですね。
溶連菌感染後糸球体腎炎において特異的な治療法はありません。安静、水分・塩分制限といった保存療法、浮腫に対して利尿剤、高血圧に対して降圧剤と言った対症療法が主流となり、2~3ヶ月程度で尿の所見は消失し、小児で90%、成人で50~80%が治癒するとされています。
さて今回の患者さんの事例を振り返ってみましょう。
学校での尿検査異常が見つかったとのことですので、おそらく尿タンパクや血尿が見られたのでしょう。病院に行って検査した結果、おそらく溶連菌に感染したのだろうとのことでした。
この患者さんは尿検査を受ける前に咽頭痛や発熱などの自覚症状はなかったようです。症状が軽く、本人は気付かないうちに感染していることもあるのですね。尿タンパクも自覚症状はないですし、血尿もよく見ないと分からない程度のものもあります。浮腫もなかったようです。急性糸球体腎炎の自覚症状も軽く、本人も全く気づかなかったようですね。
溶連菌に感染した可能性が高いので、念のため抗生物質を使って残っている可能性のある溶連菌を殺菌し、また来月検査することになりました。これで何ともなかったら終わりのようです。
溶連菌に感染したらこのように続発症状に早めに気付くためにも、治ってから1ヶ月後くらいに尿検査をした方がよいです。早期発見をすればそれだけ治癒の可能性が上がりますからね。
余談ですが私は大人になって溶連菌に感染したことがあります。子供が感染し、それがうつったせいです。その時は掌の皮膚が向けて痛かったです。仕事で一包化をする時に手が痛くてヒートから錠剤が出せなくて辛かったです・・・。
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