先日薬局に肺高血圧症のWebシンポジウムの案内が来ました
最近は勉強会がほとんどWebになっているので、参加しやすいですね。
参加する予定ですが基礎知識があった方がより理解しやすいので、今回は予習もかねて肺高血圧症について書いてみようと思います。
肺高血圧症は肺動脈の動脈圧が上昇する疾患です。
まずは心臓、肺、全身における血液循環についておさらいしておきましょう。
血液は左心房から動脈を介して全身に送られます。この時の血液は酸素を多く含んでいます(動脈血)。その後全身の組織に栄養と酸素を送り出し、毛細血管でガス交換をし、今度は二酸化炭素を多く含んだ血液(静脈血)が静脈を介して右心房に運ばれます。ここまでの流れを体循環(または大循環)といいます。
前置きが長くなりましたが、肺高血圧症の病態についてみてみましょう。
肺動脈圧が高くなると肺への血液の供給量が低下し、肺循環が低下します。すると肺でのガス交換が抑制されるため、全身へ送り出される酸素の量が低下することになります。その結果動悸、息切れ、疲労感、呼吸困難といった症状が出ます。さらに症状が進行すると浮腫み、咳、失神などの症状が出ます。
今回は肺高血圧症の中で最も多い、肺動脈性肺高血圧症(PAH)について解説します。PAHは肺動脈そのものが原因で圧が高くなる疾患で、通常左心系の圧の上昇は起こりません。原因不明の特発性PAH、遺伝性PAH、薬物・毒物誘発性PAH、膠原病やHIV感染症、住血吸虫症などの各種疾患に伴うPAHなどがあります。
PAHの治療薬は肺動脈を拡張して肺動脈圧を下げることを目的とします。
主な治療薬はプロスタグランジンI2(PGI2)製剤、ホスホジテステラーゼ-Ⅴ(PDE-Ⅴ)阻害薬、エンドセリン受容体拮抗薬があります。
・PGI2製剤
PGI2受容体はGs共役型なので、血管拡張作用をしめす。
イロプトスト(ベンテイビス®)、エポプロステノール(フローラン®)、トレプロスチニル(トレプロスト®)、ベラプロスト(ケアロードLA®、ベラサスLA®)、セレキシパグ(ウプトラビ®)
※ベラプロストのみ妊婦に禁忌
・PDE-Ⅴ阻害薬
グアニル酸シクラーゼの分解を阻害し、cGMPを増加させる。cGMPがGキナーゼを活性化し、ミオシンホスファターゼを活性化。平滑筋においてミオシンがアクチンと結合しなくなり、血管が拡張する。
硝酸系薬物、CYP3A4阻害薬と併用禁忌。
シルデナフィル(レバチオ®)、タダラフィル(アドルシカ®)
・エンドセリン受容体拮抗薬
エンドセリンは血管内皮細胞から産生され、エンドセリン受容体を刺激する。エンドセリン受容体はGq共役型の受容体であり、血管を強力に収縮させる。そのためエンドセリン受容体を阻害することにより血管が拡張する。
肝機能障害に注意。
アンブリセンタン(ヴォリブリス®)、ボセンタン(トラクリア®)、マシテンタン(オプスミット®)
とりあえず一通り予習は済みました。これで講習を受けられます。
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