非結核性抗酸菌症

疾病・病態

先日読者の方から非結核性抗酸菌症についての記事のリクエストがありましたので、今回の記事で紹介したいと思います。非結核性抗酸菌症とは何なのか、その治療法、治療薬の副作用などについて書いていきます。量が多くなりそうなので、2回に分けて書きます。今回の記事では非結核性抗酸菌症とはどんなものなのか、次回の記事では治療薬と副作用について書いていきます。


まず始めに抗酸菌について説明します。
抗酸菌とはマイコバクテリウム属の細菌です。マイコバクテリウム属の細菌の特徴として、細胞壁の構造が他の細菌と異なります。特徴としてはミコール酸といった脂質が多く含まれています。

細菌の分類の1つにグラム染色による分類があります。これは細胞壁の構造の違いを調べるものであり、クリスタルバイオレットという試薬により紫色に染まるものをグラム陽性菌ピンク色から赤色に染まるものをグラム陰性菌といいます。これにより検体などからある程度、菌の推定をすることが可能になります。
(ex)グラム陽性菌:黄色ブドウ球菌、レンサ球菌、ジフテリア菌、炭疽菌etc
グラム陰性菌:大腸菌、サルモネラ菌、百日咳菌、カンピロバクターetc

ところが抗酸菌においては細胞壁が他の細菌と異なる構造をしているので、グラム染色で染まりにくいといった特徴があります。そのため抗酸菌かどうか調べるのには抗酸菌染色法といった手法が取られます。抗酸菌染色法で染色したあと酸やアルコールで脱色しにくくなる特徴があります。そのため抗酸菌と呼ばれているわけですね。(酸に強いからではありません)

さてこの抗酸菌ですが、170種程度の菌種が存在します。その中で病原性をもつ代表的なものが結核菌とらい菌です。そして結核菌とらい菌以外の抗酸菌を非結核性抗酸菌と呼んでいます。結核菌に感染したものを結核、らい菌に感染したものをハンセン病、非結核性抗酸菌に感染したものを非結核性抗酸菌症と呼ぶわけですね。

非結核性抗酸菌は170種程度ありますが、その中で病原性を持つものは40~50種程度です。その中で代表的なものがアビウムとイントラセルラーレで、この2つをまとめてMACと呼びます。その他に多いのがカンサシイです。アビウム、イントラセルラーレ、カンサシイで非結核性抗酸菌の9割近くを占めます。そのため非結核性抗酸菌症というとアビウム、イントラセルラーレ、カンサシイによる感染症と思ってよいでしょう。そして非結核性抗酸菌症というと一般的にMAC症かカンサシイ症をさします。(その次に多いのがアブセッサス症です)

ここまでで非結核性抗酸菌および非結核性抗酸菌症について分かりましたでしょうか?
ここからはその疾患の特徴と、治療薬について見てみましょう。

非結核性抗酸菌への感染についてです。
非結核性抗酸菌は、水まわりや土壌などに存在します。自然界の他に浴室や水道、貯水槽などの家庭環境ですね。また感染しても急激に発症するのではなく、徐々に進行するといった特徴があります。そのため感染源が特定できないといったケースが多いです。
最大の特徴としては人から人への感染をしないことでしょう。結核菌は感染力が強いため、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」の2類に分類されます。そのため入院治療が原則となります。一方、非結核性抗酸菌は人から人へ感染しないため、一般の外来での治療になります。

次に非結核性抗酸菌症の症状について見てみましょう。
前述したように非結核性抗酸菌症は徐々に進行します。初期段階では本人に自覚症状がないこともしばしばです。そのため健康診断等で肺のレントゲンを撮ってに偶然見つかるといったケースも多く見られます。主な症状は以下のようなものです。

・咳、痰(血痰になることもある)
・発熱
・倦怠感
・体重減少
・呼吸困難

これらは結核と同様の症状です。結核も非結核性抗酸菌症も特徴的な症状があるわけではないので、症状だけから疾患を疑うのは困難です(ほとんどの方が最初は風邪と思います)。そのため2週間以上咳が続くは場合は受診することをお勧めします。肺のレントゲンやMRIで非結核性抗酸菌症を疑い、喀痰検査を行うことで確定診断します。

ここまでで非結核性抗酸菌症についてのイメージはだいたい掴めましたでしょうか?次回の記事で治療薬について書きますので、少しお待ちください。

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