前回の記事で高カルシウム血症について触れました。
今回は高カルシウム血症について詳しく書いてみようと思います。
体内のカルシウムは99%以上が骨や歯に保存されていますが、カルシウムが腸管での吸収促進、腎での尿中への排出障害、骨吸収亢進による血中へ流出などにより血中カルシウム濃度が高くなってしまうことがあります。
高カルシウム血症は血清カルシウム値が10.4(mg/dL)又は2.6(mmol/L)を上回った状態をいいます。
原因として最も多いのが骨吸収の促進による血中へのカルシウム流出です。
原発性副甲状腺機能亢進症や癌などによるものがほとんどをしめます。
原発性副甲状腺機能亢進症では副甲状腺ホルモン(パラトルモン、以下PTH)が副甲状腺上皮小体から過剰分泌されます。PTHは骨からカルシウムを血中に流出する働きがあり、平常時はPTHと甲状腺C細胞から分泌されるカルシトニンの相反する作用によって血中カルシウム濃度を一定に保っています。しかしPTHが過剰分泌されることによって、骨からのカルシウムの流出が促進し、高カルシウム血症を生じます。
癌よるものは癌細胞がPTHと同様の働きをする副甲状腺ホルモン関連ペプチド(以下PTHrP)というタンパク質を分泌します。これにより原発性副甲状腺機能亢進症と同様の機序で血中カルシウム濃度が上昇します。これを悪性体液性高カルシウム血症(以下HHM)といいます。
また骨に癌細胞が転移、浸潤することで癌細胞が破骨細胞を刺激し、骨吸収が促進します。これを局所性骨溶解性高カルシウム血症(以下LOH)といいます。
高カルシウム血症の原因は原発性副甲状腺機能亢進症と癌によるもので80%以上をしめます。
それ以外には前回の記事で書いたように、活性化ビタミンD3製剤とカルシウムの併用(腸管でのカルシウムの吸収促進)や、腎機能障害(腎臓で尿中へのカルシウムの排出が低下)などが原因になることもあります。
高カルシウム血症の症状は漠然としていてこれといったものがありません。
軽度の場合は無症状のことがほとんどであり、症状があるとすれば倦怠感や便秘、食欲不振など他の疾患と見分けのつかないものであり、多少カルシウム値が高くなると悪心、嘔吐、多尿、口喝などの他に筋力低下が起きます。
さらに高濃度になると、精神症状を起こし情緒不安定、めまい、昏睡といった状態になります。
特徴的な症状としては筋力低下と情緒不安定や昏睡といった、高度の時に生じる症状であり、やはり定期的な血清カルシウム値の測定による早期発見が大切なようです。
高カルシウム血症治療は軽度の場合は原因薬物の除去になります。
活性化ビタミンD3製剤やチアジド系利尿薬などの中止ですね。
血清カルシウム濃度が高い時はビスホスホネート製剤、カルシトニン製剤、デノスマブ製剤を用いることがあります。
・ビスホスホネート製剤
破骨細胞をアポトーシスさせ、骨吸収を抑制し、カルシウム濃度が低下。パミドロン酸二Na®、ゾメタ®は悪性腫瘍による高カルシウム血症に適応あり。
・カルシトニン製剤
PTHと拮抗して作用する。エルシトニン®が高カルシウム血症に適応あり。
・デノスマブ製剤
破骨細胞の分化促進因子のRANKLに対するモノクロナール抗体。破骨細胞の分化を抑制する。アメリカでは癌患者の高カルシウム血症治療薬として適応を受けています。
血清カルシウム濃度がかなり高い時は利尿剤の静脈注射を行います。生理食塩水も投与して血清カルシウム濃度の低下を測ります。重症例では血液透析を行います。透析は最も効果が確実で安全性も高いですが、他の方法がない時や重度の時にのみ用いるようです。
前回の記事との関連で高カルシウム血症について書いてみました。
正直、薬剤師が発見するのは難しく、やれることは少ないかもしれません。
しかし原因となる薬物や疾患を知っておくことにより、生活背景や使用している健康食品などを把握しておくことで未然に防止できるかもしれません。やれることは一つでも多くやってみたいと思います。
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