ヒヤリ・ハット分析 エディロール服用中の患者がカルシウムを摂取

ヒヤリ・ハット

以前の記事に引き続き、公益財団法人日本医療機能評価機構の薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の事例の紹介、考察について書きたいと思います。

少し前になりますが、活性化ビタミンD3製剤のエディロールカプセル®を服用中の患者が、カルシウムを含むドリンク剤を服用していた事例です。特に健康被害が出たわけではないですが、今後も起きないとも限らないので、健康被害を未然に防いだ事例として、とてもいいものだと思います。

【事例の内容】
エディロールカプセルを服用している患者に、カルシウムを含有するサプリメントの摂取の有無を確認したところ、カルシウムを含むドリンク剤(1本にカルシウム250mg含有)を毎日飲んでいること、飲み始めて間もないことがわかった。患者に高カルシウム血症の症状は見られなかった。

【背景・要因】
当薬局では、エディロールカプセルを服用している患者に対し、カルシウムを含有するサプリメントの摂取の有無の確認を行っている。本患者に対しては、エディロールカプセルの服用を開始する際の説明や、定期的な確認が不十分であった可能性がある。

ご存じのように、腸管からカルシウムの吸収が吸収される際には活性化ビタミンD3が必要です。骨粗鬆症の患者は血中カルシウム濃度が十分でないことが多く、そのため活性化ビタミンD3製剤でカルシウムの吸収を促進します。
カルシウムの吸収が促進される反面、過度に血中カルシウム濃度が高くなってしまう事もあります。これを高カルシウム血症といいます。
※高カルシウム血症については詳しい解説が必要だと思ので、次回の記事で書きます。

エディロールカプセル®の添付文書をみると
「本剤投与中は血清カルシウム値を定期的(3~6カ月に1回程度)に測定し、異常が認められた場合には直ちに休薬し、適切な処置を行うこと。」
と記載されています。
同じ活性化ビタミンD3製剤のアルファロール®の添付文書にも「過量投与を防ぐため、本剤投与中、血清カルシウム値の定期的測定を行い、血清カルシウム値が正常値を超えないよう投与量を調整すること。」と記載されています。

このようにカルシウムの吸収を促進する薬物では定期的に血清カルシウム濃度を測定することが定められています。高カルシウム血症を防ぐために、カルシウムの過度な摂取は控えなければなりません。

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版で、食事指導において
「高用量のカルシウムを摂取することにより、急激に血清カルシウム濃度が上昇する可能性が考えられることから、現時点では、サプリメント、カルシウム薬として1回に500mg以上を摂取しないように注意する必要があろう。また、ビタミンDとの併用時には高カルシウム血症にも注意が必要である。」
と書かれています。
どこの薬局でも、普段からお薬手帳や薬歴を用いて医療用医薬品の併用薬については気を配っていると思われます。カルシム製剤はアスパラCA®や乳酸カルシウム®、カルチコール®など限られたものしかありませんが、健康食品、サプリメントなどにはカルシウムを含むものが多くあります。

例えばDHCのカルシウム/マグでは1日360㎎、ディアナチュラのカルシウム・マグネシウムでは1日350㎎、栄養機能食品の牛乳の「毎日骨太」ではコップ1杯(200mL)あたり340㎎のカルシウムが含まれています。
高カリウム血症については医療用医薬品の併用薬よりも、健康食品やサプリメントの方を気にしなくてはいけないでしょう。

薬剤服用歴管理指導料の算定要件について、通知を見直すと以下のようになっています。
(3)薬剤服用歴の記録には、次の事項等を記載し、最終記入日から起算して3年間保存する。
(ア)~~
(イ)~~
(ウ)に患者の体質(アレルギー歴、副作用歴等を含む)、薬学的管理に必要な患者の生活像及び後発医薬品の使用に関する患者の意向
(エ)~~
(オ)併用薬(要指導医薬品、一般用医薬品、医薬部外品及び健康食品を含む。)等の状況及び服用薬と相互作用が認められる飲食物の摂取状況

投薬の際には健康食品、サプリメント、その他患者の生活像についても情報を収集しなくてはならないことを忘れずに、患者の安全を守っていかなくてはなりません。

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