偽痛風

関節痛
どこの薬局でも高尿酸血症の患者さんはいらっしゃると思ます。その中の何人かは痛風発作を起こし、足を引きずって通院することがあります。当薬局で尿酸値は高くないのに痛風発作様の症状を繰り返す患者さんがいました。この患者さんは偽痛風だったようです。今回は偽痛風について知ってもらいたいと思います。
偽痛風はピロリン酸カルシウム結晶沈着症(以下CPPD症)の一種です。
CPPD症はピロリン酸カルシウムが析出して、関節内に沈着し石灰化を起こし、炎症を起こします。
ピロリン酸カルシウムが過剰に存在するメカニズムは分かっていませんが、遺伝の他に副甲状腺機能亢進症、低リン血症、低マグネシウム血症、ヘモクロマトーシス、関節の外傷が引き金となって生じるケースが認められています。
※ヘモクロマトーシス
 貯蔵鉄の異常な増加により臓器に鉄が沈着することで生じる組織障害
CPPD症は以下のように分類されています。
type A:急性偽痛風発作
type B:偽関節リウマチ
type C:偽変形性関節症(発作あり)
type D:偽変形性関節症(発作なし)
type E:潜伏性あるいは無症候性
type F:偽神経障害性関節症
その他:偽リウマチ性多発筋痛症など
いわゆる偽痛風の発作はtypeAに分類されますね。
痛風発作と同様に急性の関節炎や関節周囲炎を起こし、発赤、熱感、腫脹、激しい痛みを生じます。痛風発作は主に足の親指の関節に多発するのに対し、偽痛風は手・足・肩・膝・肘・股関節・首などあらゆる箇所で生じます。ただし単独で見られることが多いようです。最も症状の起きやすい部位は膝です。痛みの持続期間は痛風発作に比べてやや長いです。
痛風発作は発作前に予兆があるのが特徴ですが、偽痛風発作の場合、予兆もなく突然発症します。
痛風発作は男性に多いですが、偽痛風は女性の方がやや多めの傾向にあります。
偽痛風の根治療法はなく、NSAIDsによる対症療法が中心となります。
先述した患者さんもボルタレン®(25)を用いて痛みをとっていました。
またステロイドの関節内注射や全身投与、コルヒチンを使うこともあります。
偽痛風が慢性化すると変形性関節症を併発することがあります。(CPPD症 type C,Dです)
治療は急性偽痛風と同様にNSAIDs、コルヒチン、ステロイドなどを用いますが、リウマチ症状を生じる場合(CPPD症 type Bです)は抗リウマチ薬を用いたり、関節の変形が進んだ場合は人工関節に置換することもあります。
偽痛風は症状だけでは他の疾患と区別がつきにくく、キチンと検査してもらって鑑別診断をしてもらうことが大切です。偽痛風は急性で痛みがあるだけならまだいいですが、慢性化すると関節の破壊につながることがあります。定期的に関節の痛みや腫脹がある場合は早めに外科で見てもらって下さい。
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