オラスポア小児用DS 尿路感染症の予防に使用

感染症の薬

先日うちの薬局に乳幼児の処方箋が持ち込まれました。
処方内容は以下の通りです。

Rp(1)オラスポア小児用ドライシロップ 35㎎
           1日1回 就寝前 90日分

抗生剤が90日分、圧倒的に少量、この2点で何らかの感染症の予防のための処方とピンときました。お母さんにお話を伺ってきたところ、ついこの間まで尿路感染症で入院していたようです。今回は小児における尿路感染症と、予防のための処方について見てみたいと思います。

まずは尿路感染症について知っておきましょう。
尿路感染症のほとんどは外尿道からの細菌感染によって引き起こされます。主な原因菌は大腸菌ですが、緑膿菌などが原因のこともあります。
尿路は外尿道口から膀胱までを下部尿路尿管と腎臓を上部尿路といいます。

下部尿路に感染した場合、細菌の排出も早い(尿と一緒に排出される)ので、治療は基本的に抗生物質の内服だけで済むことが多いです。膀胱炎、尿道炎、前立腺炎などがそうですね。
一方、上部尿路に感染すると細菌の排出は下部尿路感染症に比べて困難になります。そのため入院治療を要することになります。
今回の患者さんのケースでは入院治療をしていました。そのため上部尿路感染症でしょう。
お母さんはお子さんの病名までは覚えていませんでいたが、おそらく上部尿路感染症で最も多い腎盂腎炎でしょう。

腎盂腎炎は腎臓の腎盂や腎実質への細菌感染症です。

特に基礎疾患や尿道の異常がないものを急性単純性腎盂腎炎といい、基礎疾患を有するものを複雑性腎盂腎炎といいます。
※複雑性腎盂腎炎の基礎疾患には尿路カテーテル、尿路結石、糖尿病、前立腺肥大症、膀胱尿管逆流症などがあります。

急性単純性腎盂腎炎は主に大腸菌によるもので、女性に多い疾患です。女性は構造上どうしても大腸菌が外尿道口から侵入しやすいですからね。
症状としては頻尿、排尿痛、尿の混濁といった膀胱炎症状の他に、悪寒や発熱、側腹部から背部への痛みなどがあります。

複雑性腎盂腎炎は大腸菌の他に緑膿菌などが原因となり、近年では腸球菌やブドウ球菌などが原因菌となるケースも出ています。
原因となる基礎疾患は様々ですが、今回の患者さんは0歳の乳幼児です。間違いなく膀胱尿管逆流症などの先天的な尿管異常が原因のはずです。
症状は急性単純性腎盂腎炎と同様のものから、細菌が腎臓からの血流にのって全身に広がり炎症を起こし、臓器障害を起こすケースもあります。※これを敗血症といいます。

今回の患者さんのケースを振り返ってみましょう。
0歳児が尿路感染症(おそらく複雑性腎盂腎炎)で入院しました。入院中は抗生物質の点滴をしていたはずです。その後退院しましたが、上部尿路感染症は繰り返すことがあります。そのため再発防止のために少量の抗生物質を長期間服用することになります。
今回のケースではオラスポア®小児用ドライシロップでした。
オラスポア®(セフロキサジン)は体重1kgあたり1日30㎎を1日3回に分けて服用します。この患者さんは8kgでしたので、本来は240㎎を分3で使用しますが、予防的使用では10%ちょっと程度で使うみたいですね。予防的使用なので服用も1日1回のみです。
この処方を約1年続けることになります。その後検査をして問題なければ薬をやめられることになります。
膀胱尿管逆流症は年齢とともに自然治癒することもある疾患です。なんとか自然治癒して普通の生活を送ってもらいたいものです。

乳幼児の尿路感染症のほとんどは便中の大腸菌が外尿道口から侵入するために起こります。オムツ交換はこまめに行うことが大切です。またお尻を拭く時は尿道に当たらないように、前から後ろに拭くことも大切です。お尻拭きについてはパパママ学級で詳しく教えてくれます。これから子供を授かる人は是非参加して色々学んできて下さい。

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ
にほんブログ村

記事が良かったと思ったらランキングの応援をお願いします。

0

コメント

タイトルとURLをコピーしました