今年は新型コロナウイルスの影響でインフルエンザ患者がほとんど出ていません。インフルエンザウイルスは海外から持ち込まれることが多いようなので、海外との行き来がほとんどなくなった昨今では感染が流行しないのは当たり前かもしれませんね。それ以外にも皆さんしっかりうがい、手洗いをしているのでなおさらですね。
しかしいつ流行してもおかしくないので、今のうちにインフルエンザ治療薬について勉強し直しておくのがいいと思います。今回は昨年11月27日にインフルエンザの予防に承認をとったゾフルーザ®について、他剤と比較しながら書いていこうと思います。
従来の治療薬であるタミフル®、リレンザ®、イナビル®はいずれもノイラミニダーゼ阻害薬でした。
ノイラミニダーゼはインフルエンザウイルスが感染した細胞から放出する際に必要な酵素であり、これを阻害することにより、インフルエンザウイルスが他の細胞に感染していくの阻害します。ウイルスそのものを殺菌するのではなく、すでに感染してしまった細胞から広がるのを防止するといった形です。
ゾフルーザ®の有効成分はバロキサビル マルボキシルといいインフルエンザウイルスのキャップ依存性エンドヌクレアーゼを阻害します。このキャップ依存性エンドヌクレアーゼはRNAからmRNAを合成する際に必要な酵素であり、これを阻害することによりインフルエンザウイルスの増殖を抑制します。従来のインフルエンザ治療薬と異なり、直接細胞に入ってウイルスを殺菌します。そのためインフルエンザウイルスの排出がいち早く止まると言ったデータもあります。
ゾフルーザ®は10㎎錠、20㎎錠と顆粒(2%)があります。
※顆粒は0.5g包 力価は0.5(g)×20(mg/g)=10mg になります。
用法は1日1回、1日分のみ服用です。ゾフルーザ®が登場したときはかなり注目されました。1回飲んで終わりですからね。添付文書に食前食後は書かれていませんが、空腹時投与の方が血中濃度は高くなります。薬局でもらったらその場ですぐに飲んでしまうのがおススメですね。
薬用量についてはちょっと面倒くさいです。
12歳以上:1回40㎎ ただし体重80kg以上は1回80㎎
12歳未満:10~20kg未満は1回10㎎
20~40kg未満は1回20㎎
40kg以上は1回40㎎
注意すべきことは10㎎錠は20㎎錠、顆粒とは生物学的同等性がないことです。そのため20㎎を服用するのに10㎎錠を2錠にしたり、10㎎錠の代わりに顆粒を使用したりはできません。
※20㎎錠と顆粒は生物学的同等です。
ゾフルーザ®の説明が長くなりましたが、インフルエンザの治療と予防に対する使い方について説明します。他のインフルエンザ治療薬と比較して見ましょう。
ゾフルーザ®の予防的使用で注意しなくてはならないことは、予防は20kg未満の小児には使えないことです。そのため10㎎錠は予防に対して適用をもっていません。
つまり10㎎錠は10kg以上20kg未満の小児の治療にしか使い道はありません。10kg以上20kg未満というと1~5歳くらいです。この年齢だと錠剤を飲める子は僅かでしょう。10㎎錠はかなり使い道が限られていますね。私自身扱ったことがありません。それ以外の面では治療と全く同じ使い方なので、比較的覚えやすいですね。
ついでにタミフル®の小児薬用量についても注意しておきましょう。幼小児の薬用量が1回2mg/kgは結構知っている人が多いですが、新生児・乳児には1回3mg/kgを知らない人は多いです。予防は小児からのみになります。
以下の記載の定義↓についてもおさらいしておきましょう。
新生児:生後28日未満 乳児:生後28日以上1年未満 幼小児:1~6歳 小児:7歳~15歳未満
インフルエンザ治療薬は医師によって使う薬がハッキリ別れる印象です。イナビル®やゾフルーザ®など1日1回タイプが出てもタミフル®やリレンザ®が大好きな医師もいますしね。何が処方されても大丈夫なようにしておきましょう。
ゾフルーザ®がインフルエンザの予防に使えるようになっても、今年度は需要がないかもしれないですね。それにしてもゾフルーザ®は治療においても予防においても1回飲んで終わりとは凄いです。耐性株の出現などの問題もありますが、新型コロナウイルスもこれくらい気軽に治療できるようになれば世の中がもっと明るくなりそうです。
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