ツートラム錠

神経系の薬
先日うちの薬局に新薬情報の案内が届きました。
2021年1月8日に発売したツートラム®錠についてです。うちで採用する可能性は低いですが、モノとしてはいいと思うので、今回の記事で紹介します。

 

ツートラム®はトラマドールの徐放性製剤です。
他にトラマドール製剤はいくつかあるので、それらと比較してツートラム®の特徴について解説していきます。

まず有効成分のトラマドールについておさらいしましょう。
トラマドールは非麻薬性の合成オピオイドであり、オピオイドはオピオイドμ受容体を刺激し、さらにノルアドレナリン・セロトニン再取り込み阻害をすることにより、上行性痛覚伝達を抑制し、下行性痛覚抑制を刺激します。
癌性疼痛に対するWHO方式3段階除痛ラダーによれば

第一段階:NSAIDs、神経障害性疼痛治療薬(プレガバリンなど)、鎮痛補助薬
第二段階:弱オピオイド(コデイン、トラマドールなど)
第三段階:強オピオイド(モルヒネなど)

となっていることから、NSAIDsに比べて鎮痛効果は強いと言えます。
そのためトラマドール製剤は一般に癌性疼痛にたいして適応を持ちます。(ツートラム®は適応外です。後述します)

トラマドール製剤で一番初めに登場したものがトラマール®OD錠です。
規格は25㎎と50㎎であり、1日100~300㎎を4回に分服します。
これに対してトラマドールを徐放性製剤にしたものがワントラム®です。
ワントラム®は規格は100㎎のみであり、1日100~300㎎、1日1回の服用になります。

今回のツートラム®はワントラム®同様の徐放剤ですが規格は50㎎、100㎎、150㎎になります。そして用法は1日100~300㎎、1日2回になります。
1日1回のワントラム®がある状況で1日2回のツートラムが®発売されました。これって意味あるの?と思うかもしれませんが、ちゃんと意味を持っています。
下記にツートラム®の特徴について解説していきます。

・速放部と徐放部の二層錠である
ツートラム®最大の特徴は速放部と徐放部があることです。

ワントラム®は徐放部のみです。添付文書を見ると Tmax:約10時間 です。
ツートラム®は速放部があるので Tmax:約1~1.5時間 となっています。
これを見て分かるようにツートラム®は効果発現が早く、速やかな鎮痛効果が期待できます。Cmax、T1/2を100㎎錠で比較すると

ワントラム®:Cmax:約120(ng/mL)   T1/2:約7時間
ツートラム®:Cmax:約200(ng/mL)   T1/2:約8時間

半減期はほとんど変わりません。半減期の約4倍で体内から消失と考えられるので、ワントラム®では1回服用してから、次回服用まで半減期の約3.5倍、つまり次回服用時点ではほとんどが体内から消失しており、鎮痛効果はほとんど残っていないことになります。

一方ツートラム®では12時間おきの服用とすると、次回服用時点ではまだそれなりに血中に残っていることになります。 そのため服用している間は常に一定の鎮痛効果が得られることになります。 
※なおトラマール®ODと比べてみるとTmaxはほぼ一緒です。ツートラム®を使っても、トラマール®ODと同じ速さで鎮痛効果が得られることになります。  

・適応は慢性疼痛のみ
同一成分のトラマール®OD、ワントラム®は疼痛を伴う各種癌、慢性疼痛の2つに適応がありますが、ツートラム®は慢性疼痛のみです。成分的に癌における疼痛に効果が無いなんてことはありえないでしょう。しかし保険適応がない以上、使うわけにはいきません。使用の際には癌性疼痛ではないことを確認しましょう。
※トラマドール、アセトアミノフェンの合剤のトラムセット®の適応は非癌性慢性疼痛と抜歯後疼痛です。これも間違えないようにしましょう。

・最も多い副作用は悪心
ツートラム®の副作用で最も多いのは悪心(43.9%)であり、次いで便秘(41.1%)、傾眠(21.4%)です。トラマール®OD、ワントラム®の添付文書を見ても頻度は書いていませんでしたが、おおむね同じ内容でした。トラマドールによる副作用なのでどの薬剤でもほとんど同じでしょう。しかし特質すべきはその頻度です。悪心に至ってはかなりの割合で生じます。基本的にメトクロプラミドなどを併用することが必須になりそうです。傾眠の頻度も高いので注意です。添付文書上でも自動車の運転に従事させないようにと書かれています。

以上分かっていることを書いてみました。 痛みがある程度落ち着いた人や、とにかく服用回数が少ないのを希望する人にはワントラム®がいいかもしれませんが、痛みの酷い人にはツートラム®がおススメできると思います。 少なくともツートラム®の登場でトラマール®ODは役目を終えたと思います。同じ中身でも、製剤的な工夫でここまで優れた内容になるので、他の薬もこんな感じでより使いやすい物に変わっていって欲しいです。

0

コメント

タイトルとURLをコピーしました