2020年8月にオピカポン錠(オンジェンティス®錠)が発売されました。
今回はこの薬について説明してみようと思います。
オピカポンは末梢性COMT阻害薬です。
COMTとはカテコール-O-メチルトランスフェラーゼの事で、ドパミン、ノルアドレナリンなどのカテコールアミンを分解します。
(COMT以外にカテコールアミンを分解する酵素としてはMAOがありますね。)
COMTを阻害する⇒ドパミン、ノルアドレナリンなどの分解が抑制される
作用機序から見て分かるように、オピカポンはパーキンソン病の治療薬です。
適応としては「レボドパ・カルビドパ又はレボドパ・ベンセラシド塩酸塩との併用によるパーキンソン病における症状の日内変動(wearing-off現象)の改善」となっています。
つまり単体で効果を示すのではなく、メネシット®やネオドパストン®、マドパー®やイーシードパール®などとの併用により、投与したレボドパが末梢で分解されるのを抑制し、中枢への移行をよくすることを目的としています。
⇒DCIとの合剤でドパミンへの代謝を抑制したレボドパが、さらにCOMTで分解されるのを抑制し、よりレボドパの濃度を上げる
これまでのCOMT阻害薬はエンカタポン(コムタン®)やエンカタポンとレボドパ・カルビドパの合剤(スタレボ®)がありました。
オピカポンもエンカタポンもどちらも末梢におけるCOMT阻害薬です。
エンカタポンは作用時間が短く、1日に数回服用する必要がありました。(1日最大8回まで)しかしオピカポンは作用時間が長く、1日1回の服用になります。これはかなり便利ですね。
相互作用を見てみましょう。併用注意に以下のようなものがあります。
・COMTにより代謝される薬剤、MAO-B阻害薬、鉄剤:エンカタポンと一緒
・三環系・四環系抗うつ薬、ノルアドレナリン再取り込み阻害薬、SNRI
⇒エンカタポンには無いです。ノルアドレナリンの濃度を増加させるので、ノルアドレナリンの代謝酵素であるCOMTを阻害すると血圧上昇を起こす可能性あり。これはエンカタポンも同じ気がしますが、なぜかエンカタポンの添付文書に記載はありません。
・キニジン:エンカタポンにはないです。作用機序不明
目立った副作用にはジスキネジア(17.3%)、幻覚(4.4%)、幻視(2.8%)、幻聴(0.7%)、せん妄(0.5%)、傾眠(2.1%)、前兆のない突発的睡眠(1.2%)があります。(添付文書参照)
ジスキネジアはレボドパの長期使用により起こることが多いです。オピカポンはレボドパ製剤との併用を前提としているので、レボドパによるものなのでは?
幻覚、幻視、幻聴、せん妄、傾眠、突発的睡眠についても、他のパーキンソン病治療薬に多く見られる副作用です。いずれも中枢におけるドパミンの作用で生じるものでしょう。
オピカポン特有の副作用は見当たりませんでした。
オピカポンは新たな作用機序というわけではありませんが、1日数回服用が必要だったCOMT阻害薬が1日1回になり、服用が格段に楽になりました。
今度はレボドパ・DCIとの合剤とかでて、さらに便利になるといいですね。
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