涼しくなってきましたね。
冬になってくると毎年病院、薬局では繁忙期になります。いわゆる風邪やインフルエンザに罹患する人が増えてきます。今年はコロナもあるので混乱を招く恐れもあります。
感染性疾患にかかると発熱を起こすことが多いです。その中でも小児で起きる熱性痙攣について知っておいてほしいと思います。小児科の門前で働いていたり、お子さんのいる人にはおなじみかもしれませんが、接点のない人はなかなかピンとこないのが現状です。
熱性けいれんは生後6ヶ月~6歳の間に起こることが多い疾患で、発熱に伴って生じる痙攣であり、「ひきつけ」などと表現することもあります。
38℃以上の高熱の際に突然の意識消失、全身の左右対称性の痙攣を起こします。
痙攣の種類としては強直性痙攣、強直間代痙攣が多いです。
※強直性痙攣:筋肉が異常な収縮を起こし、全身がピーンと硬直します。
間代性痙攣:筋肉が収縮と弛緩を繰り返し、手足がバタバタします。
強直間代痙攣:強直性痙攣と間代性痙攣を繰り返します。
痙攣の持続時間は1~2分と短く、長くても5分以内にはおさまることがほとんどです。
原因としては小児は脳の発達が未熟なため、発熱をきっかけに脳のあちこちで異常な放電を起こすためとされています。また遺伝的要素もあり、両親のどちらかに熱性痙攣の既往歴があると、子供も起こす可能性が高いとされてます。
脳の未発達が原因なので、脳がある程度発達する6歳以上で起こる可能性は極めて低いです。
熱性痙攣を起こしても再発する可能性は30%程度であり、大多数の子は生涯で1回であり、たまに2回起こす子もいます。(私対応した患者さんで3回起こした子が一人だけいました)
熱性痙攣を起こした際の対処法について知っておきましょう。
熱性痙攣をおこした場合、まずは落ち着いてお子さんを寝かせます。特に立っている時に起こると意識消失で転倒する可能性があるので注意が必要です。
また稀に吐いてしまう事もあります。その際に吐瀉物で気道が塞がらないように顔を横にしてあげることも必要です。
そして熱性痙攣かを見極めるために、発作の持続時間を測りましょう。前述したように熱性痙攣は長くても5分以内におさまることがほとんどです。万が一それ以上続くようなら熱性痙攣ではなく、別の疾患の可能性があります。その際は救急車を呼んでもいいでしょう。
熱性痙攣に適応のある薬はジアゼパム坐剤(ダイアップ坐剤®)があります。これは熱が上がり切る前に使用して、熱性痙攣を未然に防ぐためのものです。だいたい37.5℃程度になったら使います。
しかし熱性痙攣を警戒してジアゼパム坐剤を頻繁に使うものではありません。ジアゼパム坐剤を使うかの基準については以下のようなものがあります。
以下の適応基準1)または2)を満たす場合に使用する
1)遷延性発作(持続時間15分以上)
2)次のⅰ)〜ⅵ)のうち二つ以上を満たした熱性けいれんが二回以上反復した場合
ⅰ)焦点性発作(部分発作)または24時間以内に反復する
ⅱ)熱性けいれん出現前より存在する神経学的異常、発達障害
ⅲ)熱性けいれんまたはてんかんの家族歴
ⅳ)12ヶ月未満
ⅴ)発熱後1時間未満での発作
ⅵ)38度未満での発作
※日本小児神経学会、熱性けいれん診療ガイドライン2015より抜粋
ジアゼパム坐剤を使っても38℃以上の熱が続く場合は、8時間後にもう一度挿入するのが良いとされています。(1回挿入して8時間後にもう1個挿入すると、24時間効果が持続するみたいです)
熱性痙攣を知らない人はお子さんが意識を失って痙攣を起こすとパニックになって今います。ですが知っていれば落ち着いて対処することが可能です。薬局の待合室で小児科受診後の子供が熱性痙攣を起こすこともあります。そんな時に不要な混乱を防ぐためにも薬剤師も正しい知識をもって対応しましょう。
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