先日おかかりの患者さんで肺がんの治験を行っている患者さんがいらっしゃいました。治験参加証を見せて下さり、治験内容も分かりました。いい機会なので肺がんの分類、その治験薬の中身について解説したいと思います。
まずは肺がんの分類について知りましょう。
肺がんは組織型により分類できます。組織型とはがんの病変部位を採取して顕微鏡等で確認し、組織の状態(大きさ、形、状態など)により分類したものをさします。
小さくて丸い細胞で構成されたものを小細胞性肺がんといいます。小細胞肺がんは他の組織型と増殖速度や治療内容が異なりますので、それ以外の組織型と別に分類されます。小細胞肺がん以外の肺がんを非小細胞肺がんといいます。
小細胞肺がんと非小細胞肺がんは前述したようにその性質が大きく異なります。違いをまとめると以下のようになります。
非小細胞肺がんは組織型でさらに扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんに分類されます。
(正確にはもっと種類がありますが、ほとんどがこの3種になるので、その他の型については割愛します)
体の内外の表面を覆っている組織を上皮といい、上皮細胞が平らに重なった組織を扁平上皮といい、上皮が陥入し分泌能力(外分泌や内分泌)を持ったものを腺上皮といいます。
扁平上皮にできたものを扁平上皮がん、腺上皮にできたものを腺がんというわけですね。
一方、扁平上皮や腺上皮への分化が無い、大きな上皮細胞の悪性腫瘍を大細胞がんといいます。
それぞれの特徴をまとめると以下のようになります。
※肺門とは肺の入口近くの太い気管支の部位であり、それ以外の末梢の部位を肺野といいます。
ここまでで肺がんの組織型による分類、その特徴は理解できたでしょうか?
ここで患者さんの持参した治験参加証を確認します。治験参加証には使用中の薬剤の内容が記載されています。内容は以下のものでした。
「パクリタキセル+カルボプラチン+アテゾリズマブの併用療法」
これは化学療法による治療歴のない、切除不能な進行・再発の非扁平上皮非小細胞肺がんに対する治験です。つまり腺がん又は大細胞がんということが分かります。
肺がんの進行度を大まかに示すと下図のようになります。
(実際は腫瘍の状態T、リンパ節への転移N、遠隔転移Mによってもう少し細かく分類します)
この治験はステージⅣにおけるものと分かりますね。肺がんは進行しても症状が出ず、気づいたときはステージⅣなんてこともあります。この患者さんも、もしかしたらいつの間にか進行していて発見した時には根治不可能といった状態だったかもしれません。
今夏の記事では肺がんの分類について学びました。次回の記事で治験内容について見ていこうと思います。次回の記事も是非ご覧下さい。
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