2023年2月24日にアメナリーフ®錠に「再発性の単純疱疹」の適応が追加されました。これにより現在発売されている抗ヘルペスウイルス剤はいずれも単純疱疹と帯状疱疹の両方に使えることになりました。今回の記事では単純疱疹と帯状疱疹の違い、アメナリーフ®錠の特徴を解説します。どう使うのか、他の抗ヘルペスウイルス剤と比べてどこが違うのかを理解してもらえると嬉しいです。
まず単純疱疹についておさらいしましょう。
単純疱疹とは単純疱疹ウイルス(単純ヘルペスウイルス・HSV)による感染症です。皮膚の他に口唇粘膜、眼粘膜、性器などに感染します。
患部のピリピリ感から始まり、炎症、丘疹、水疱といった症状が出現します。
患部に直接触れるだけでなく、ウイルスの付着した食器やタオルなどを介しても感染します。
HSVは感染後の多くは不顕性感染(症状を発症していない状態)になりますが、粘膜から侵入したウイルスは神経節に残ってしまいます。これを潜伏感染といいます。
※潜伏する場所は三叉神経節や脊髄後根神経節です
ストレスや疲労、日光の曝露などの刺激や免疫の低下が生じると、潜伏していたウイルスが再活性化しまうことがあります。これが再発性の単純疱疹です。単純疱疹は頻繁に再発を繰り返すことがあります。
次に帯状疱疹についておさらいします。
帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)による感染症です。VZVに初めて感染した時の感染症は水痘(水ぼうそう)といいます。
VZVに感染すると2週間ほどの潜伏期間を経たのち発症します。VZVは上気道から感染し、その後全身に広がり、38℃程度の発熱や倦怠感を伴います。まず体幹部で発疹を発症し、そこから全身に広がっていきます。この発疹は通常は痒みを伴います。
体にできた皮疹は
紅斑(赤い斑点)⇒水疱(水ぶくれ)⇒膿疱(水疱で中に膿が溜まったのもの)⇒痂皮(かさぶた)
といった過程をとります。
※新しい皮疹が次々にできるので、急性期はこれらの皮疹が混在します
VZVは水痘が完治した後でもHSVと同様に知覚神経節に一生涯残ります。そしてストレスや体力低下、他の疾患等で免疫力が低下した場合、再活性化することがあります。これが帯状疱疹です。
単純疱疹と同様にピリピリ、チクチクした神経痛の症状から始まり、その後痛みのある部位に紅斑が出現します。
皮膚症状は水痘と同様に 紅斑⇒水疱⇒膿疱⇒痂皮 の経過をたどります。
水痘が全身に皮疹が起きるのに対して、帯状疱疹はVZVが潜伏感染している知覚神経節の神経支配領域に限定して皮疹や痛みが生じるのが特徴です。
VZVに感染すると免疫が付くので再発は非常に少ないですが、数%程度の人は再発するとされています。
ここまでで単純疱疹と帯状疱疹の違いは分かったでしょうか?
症状が全身的か局在的か、痛みの程度(帯状疱疹の方が強い)、再発の頻度(単純疱疹の方が多い)などの違いはありますが、比較的似た症状ですね。
HSVとVZVの感染症の総称をヘルペスといいますが、これは別々のウイルスです。(世間一般にはHSVの感染症がヘルペスと認識されていますね)
症状が似ていること、そして治療薬も両方のウイルスに有効なものが存在することから、よく混同されてしまいます。
今回の記事になっているアメナリーフ®錠ですが、今までは帯状疱疹のみ有効でした。しかし今回の改訂により「再発性の単純疱疹」の効能効果が追加されました。あくまで再発性なので、初めて単純疱疹の症状が出る人には使えません。
再発性の単純疱疹の初期症状出現後に、あらかじめ処方された薬を服用することで治療します。つまり過去に単純疱疹を発症したことのある人が、あらかじめ再発に備えて処方してもらう必要があります。なお用法・用量は以下のようになります。
アメナリーフ®錠の規格は200㎎なので、1回に6錠服用することになります。これを1回だけです。1回に飲む量は多いですが、単回投与なので比較的使いやすいですね。
なお服用はなるべく早くする必要があります。基本的に初期症状が出現後6時間以内に服用する必要があります。6時間経過後の有効性のデータはありません。
アメナリーフ®錠が単純疱疹に使えるようになって、単純疱疹の治療の幅が広がりました。実はこれには大きな意味があります。アメナリーフ®錠は腎機能障害患者でも使いやすいからです。これはアメナメビルがCYP3A4で代謝され、約80%が糞中に排出され、腎臓での排出は少なめなことが影響しています。
実際にアメナリーフ®錠はクレアチニンクリアランスによる用量の調節も必要なく、透析患者でも用量の調節は不要と考えられています。
現在発売されている他の抗ヘルペスウイルス剤のアシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルはいずれもクレアチニンクリアランスによって投与量の調節が必要となります。特に高齢者では腎機能の低下していることが多く、場合によっては面倒な計算をして適切な薬用量を算出する必要があります。
※参考記事 ⇒ 腎機能低下患者への投薬 わずかな情報から、他の検査値を算出
しかしアメナメビルなら調節は不要です。腎機能に問題のある患者にも使え、単回投与のため使いやすく、今後は使用頻度が増えていくでしょう。
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