2025年3月3日に丸石製薬からロゼックス®ゲルの後発品であるメトロニダゾール®ゲル「マルイシ」が発売されました。先発品はがん性皮膚潰瘍臭および酒さに有効ですが、後発品はがん性皮膚潰瘍臭のみに有効です。この機会にこの商品の説明と、対象となる疾患についても解説したいと思います。
ロゼックス®ゲル、メトロニダゾール®ゲル「マルイシ」の有効成分であるメトロニダゾールは抗原虫薬として用いられています。メトロニダゾールは原虫や嫌気性菌の持つ還元酵素によって還元され、生成するフリーラジカルや還元型メトロニダゾールがDNAを切断、不安定化するとで殺菌作用を発揮します。(この還元酵素はヒトは有していないため、原虫、嫌気性菌のみに毒性があるわけです)
トリコモナス原虫の他にランブル鞭毛虫、アメーバ赤痢、各種嫌気性菌、ヘリコバクターピロリ菌にも有効です(嫌気性ではない細菌に対しては効果なし)。
メトロニダゾールの働きについては分かったでしょうか?それでは今回の治療の対象となる疾患についても見てみましょう。
・がん性皮膚潰瘍臭
がん性皮膚潰瘍とはがん細胞が皮膚に浸潤、転移、あるいは再発し、それが体表面に現れることで潰瘍化した状態をさします(特に乳がんで多いです)。
潰瘍部位ではがん細胞が増殖と死滅を繰り返しています。この潰瘍部位では嫌気性細菌が感染し、臭気物質である脂肪酸を発生します。また腫瘍組織が壊死する際にプトレシン、カダベリンといった臭気物質が発生します。これらによって特有の臭気がおきます。これががん性皮膚潰瘍臭です。
メトロニダゾールが皮膚潰瘍部位の嫌気性菌を殺菌することでがん性皮膚潰瘍臭を防いでいるわけですね。
・酒さ(しゅさ)
赤ら顔とも呼ばれ、顔に赤みやニキビのような丘疹や膿疱ができる疾患です(眼に起きることもあります)。皮膚の赤みの他に火照りやヒリヒリ感、浮腫みなどの症状が起きることもあります。
酒さが起きる原因は紫外線・寒暖差などの外的要因、ストレスや食べ物、遺伝などの内的要因が複数重なって発症すると考えられています。
酒さの症状の赤みの原因の1つとして、ニキビダニの過剰増殖があります。
※ニキビタニとは顔ダニともいい、皮膚の常在菌です。
このニキビダニの殺菌にメトロニダゾールが有効なわけですね。
※酒さのその他の薬物治療としてはビブラマイシンやミノマイシンによる殺菌、十味敗毒湯、黄連解毒湯、桂皮茯苓丸、荊芥連翹湯などによる排膿などがあります。
ここまででメトロニダゾールと、今回の治療の対象となる疾患について分かったと思います。続いてこの商品の特徴について見てみましょう。
・効能、効果について
先発品のロゼックス®ゲルの効能・効果は「がん性皮膚潰瘍部位の殺菌・臭気の軽減」「酒さ」となっています。
これに対して後発品であるメトロニダゾール®ゲル「マルイシ」は「がん性皮膚潰瘍部位の殺菌・臭気の軽減」のみです。内容は同じなので酒さに効かない事は無いでしょう。そのうち酒さにも適応が追加になると思われます。
・用法、用量について
がん性皮膚潰瘍臭と酒さで用法が異なります。
がん性皮膚潰瘍では患部をガーゼで保護する必要があります。酒さでは直接塗布するのみですね。
また酒さでは使用期間は原則12週間までとなります。
がん性皮膚潰瘍臭に用いる場合には以下のような注意事項があります。
メトロニダゾールは分子量が小さいため吸収がよいです。メトロニダゾールの内服薬であるフラジール®錠も消化管からほぼ100%が吸収されます。そのため広範囲に使う場合は全身の副作用を加味しなくてはなりません。
・禁忌について
禁忌は以下の3つになっています。
過敏性については当然として、脳・脊髄に器質的疾患のある患者、妊婦についてはメトロニダゾールの分子量の小ささが原因です。
前述したようにメトロニダゾールは分子量が小さいため吸収が非常に良いです。そのため血液脳関門、血液脳脊髄液関門、血液胎盤関門を通過します。脳・脊髄、胎盤を通過してしまうため脳・脊髄に器質的疾患のある患者や、胎児が出来上がっていない妊娠3ヶ月以内の妊婦は使えないわけです。(妊娠3ヶ月以降は全ての器官が形成されているので使えるようになります ※有益投与)
今回の記事でメトロニダゾール®ゲル「マルイシ」および、がん性皮膚潰瘍臭、酒さについては理解できたでしょうか?
がん性皮膚潰瘍臭は患者のQOLを著しく低下させる疾患です。新たな治療薬ではありませんが、安価で治療薬が提供できることになったことは喜ばしいことではないでしょうか?今後は新たな治療薬が登場して治療の幅が広がると嬉しいです。

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