3月13日にアッヴィがリンヴォック®錠を尋常性白斑への適応拡大を申請しました。これが承認されれば尋常性白斑の治療薬初めてJAK阻害薬が加わることになります。承認されると現場で扱う機会も増えると思うので、今回の記事で尋常性白斑の病態について、リンヴォック®錠を含むJAK阻害薬の働きについて記事にしました。今のうちに復習してもらえると幸いです。
まず初めに尋常性白斑について病態と現在の治療法について確認しましょう。
・尋常性白斑について
尋常性白斑とは別名「しろなまず」とも呼ばれ、皮膚の一部が本来の肌色から色が抜けてしまい、その部分だけ白くなってしまう疾患です。皮膚には色素を作るメラノサイトという色素細胞があり、これが茶褐色のメラニン色素を産生することで肌色になっています。
しかし何らかの原因でメラノサイトが死滅してしまうとメラニン色素を産生することができず、その箇所だけ皮膚が色が抜けたように白くなってしまいます。このようにメラニン色素が抜けて白くなった箇所を白斑と呼びます。
尋常性白斑に痒みや痛みの症状はありません。ただしメラニン色素がないため紫外線に対しては無防備なので、日焼けによる炎症や痛みには注意が必要です。
尋常性白斑は症状によって以下のように分類できます。
・非分節型(汎発型)
全身のどこにでもでき、白斑は体の左右対称にできます。尋常性白斑で最も一般的なタイプです。
時間の経過とともに白斑が広がったり、新たな場所に白斑ができることがあります。
・分節型
体の片側だけに帯状に白斑ができます。脊髄から伸びている末梢神経に沿って白斑ができるのが特徴です。そのため体の正中線あたりから片側に伸びて症状がでます。
・局限型
1箇所または数箇所の狭い範囲にだけ白斑ができるタイプです。稀に非分節型などに移行することがあります。
尋常性白斑になる原因はまだ解明されていませんが自己免疫説が最も有力です。
免疫系の異常によりT細胞がメラノサイト攻撃してしまい、メラノサイトが破壊されてしまいます。これによりメラニン色素が作られなくなり、白斑ができてしまうと考えられています。
その他の原因として自己破壊説や遺伝的要因が考えられています。
※自己破壊説
メラニンを作る過程で発生する過酸化水素などの有害な中間代謝物を上手く処理できず、細胞が自ら壊れてしまうという説です。ストレス、外傷、日焼けなどが引き金になることがあります。
・尋常性白斑の治療
外用薬による治療が最も一般的です。
外用ステロイド、免疫抑制剤(タクロリムス)、活性化ビタミンD3製剤などです。外用ステロイド、免疫抑制剤については過剰な免疫反応を抑制するため、自己免疫説によれば尋常性白斑に有効なのが分かりますね。
活性化ビタミンD3製剤はメラノサイトの分化・増殖を促進し、また免疫機能を調整する働きがあります。そのため尋常性白斑に対する有効性が報告されています。一般的には外用ステロイドや後述するナローバンドUVB、エキシマライトなどの光線療法との併用が基本になります。また尋常性白斑に対する保険適応はないので注意が必要です。
その他に光線療法(紫外線療法)があります。
光線療法は特定の波長の紫外線を白斑に照射することで、休眠状態にあるを刺激して活性化させたり、白斑の周囲や毛包に残っているメラノサイトの幹細胞を刺激し、メラノサイトへの分割・増殖を促進します。光線療法には主に以下の2つが用いられます。
ナローバンドUVB
波長が非常に短い紫外線であり、広範囲に照射する場合に用います。そのため非分節型に用います。
エキシマライト
ナローバンドUVBよりさらに短い波長の紫外線です。皮膚の深部まで高いエネルギーが届くため、狭い範囲に用いるのに適しています。そのため分節型や局限型に用います。
ここまでで尋常性白斑について病態と現在の治療法は理解できたでしょうか?
それでは今回の記事のリンヴォック®錠について見てみましょう。
・リンヴォック®錠の作用機序
リンヴォック®錠の有効成分はウパダシチニブといい、これはJAK阻害薬です。
メラノサイトの死滅にはインターフェロン‐γ(以下IFN-γ)が関係しています。IFN-γ受容体はIFNGR1とIFNGR2からなり、IFNGRにはJAK1が、IFNGR2にはJAK2が共役しています。IFN-γがIFN-γ受容体に結合するとJAK1とJAK2がリン酸化し活性化します。活性化されたJAK1、JAK2はSTAT1をリン酸化し活性化します。活性化されたSTAT1は2量体を形成し、この2量体がCXCL9やCXCL10、CXCL11などのケモカインの遺伝子発現を誘導し、産生を促進します。
※ケモカイン 特定の細胞を特定の場所へ誘導するメッセンジャータンパク質の総称
このケモカインによりT細胞がメラノサイトへ誘導され、T細胞がメラノサイトを破壊します。
ウパダシチニブはJAK1を阻害します。
JAK1とJAK2はそれぞれSTAT1をリン酸化しますが、JAK1の方がより優位にあります。そのためJAK1を阻害することでケモカインの産生が抑制され、結果的にメラノサイトへの攻撃が減少します。
・リンヴォック®錠の尋常性白斑への適応拡大
現在のリンヴォック®錠の効能又は効果は以下のようになっています。
いずれも自己免疫疾患や自己免疫系の異常による炎症性疾患です。
前述したようにウパダシチニブはJAK1の阻害によりT細胞の特定の部位に誘導するのを抑制する免疫抑制薬です。尋常性白斑が自己免疫説によるものだとしたら、免疫系の異常を抑制することでメラノサイトの死滅を防ぐことが可能という事が分かると思います。
リンヴォック®錠はJAK阻害薬で最も適応疾患数が多く、8個の適応疾患があります。これに尋常性白斑が加われば9個目となり、JAK阻害薬でダントツの1位ですね。
今回の記事で尋常性白斑について、またJAK阻害薬であるリンヴォック®錠がなぜ有効と考えられているか分かったでしょうか?今回の申請が承認されれば尋常性白斑の治療薬にJAK阻害薬が加わる形になります。外用薬や光線療法でも効果不十分だったケースに新たな選択肢が加わります。承認されないと分かりませんが、これまでの治療薬との併用もありうるでしょう。リンヴォック®錠の申請が承認されれば他のJAK阻害薬も続いて保険適応を取得するかもしれません。尋常性白斑の治療が一気に進化すると嬉しいですね。
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