リウマトレックスカプセルを基礎から応用まで詳しく理解

免疫系の薬

リウマチの治療に最も多く用いられるのはリウマトレックス®カプセルでしょう。しかし飲み方が変わっているので、定期的に見ていないとすぐに忘れてしまう薬でもあります。ついこの間、中堅薬剤師が久しぶりにリウマトレックス®カプセルの処方を見て、内容が正しいのか理解できていませんでした。今回の記事でリウマトレックス®カプセルを詳しく理解し、どのように服用するか、なぜそのようになるかを理解してもらえればと思います。


初めにリウマトレックス®カプセルの働きについて確認しておきましょう。
有効成分のメトトレキサートはジヒドロ葉酸還元酵素を阻害し、葉酸の活性化を阻害します。活性化したテトラヒドロ葉酸はチミジンの合成に必要な補酵素なので、これが阻害されることによりDNAの合成が阻害されます。

※この他にも血管内皮細胞や滑膜細胞におけるアデノシン合成促進による抗炎症作用もありますが、複雑な作用機序なので、ここでは割愛します。

葉酸の代謝を阻害することでDNA合成が阻害され、細胞増殖が抑制されます。リンパ球の細胞増殖抑制により免疫系の異常による疾患を改善することになります。そのためリウマチや乾癬などに有効なわけですね。
その他にも細胞増殖を抑制するので抗がん剤としても用いることができます。
メトトレキサート製剤でリウマチや乾癬に用いるのがリウマトレックス®カプセル、抗がん剤として用いるのがメソトレキセート®錠、メソトレキセート®注射です。


次にリウマトレックス®カプセルの用法用量を確認しましょう。
適応によって使い方は以下のように分けられています。

・関節リウマチ、局所療法で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症
通常、1週間単位の投与量をメトトレキサートとして6mgとし、1週間単位の投与量を1回又は2~3回に分割して経口投与する。分割して投与する場合、初日から2日目にかけて12時間間隔で投与する。1回又は2回分割投与の場合は残りの6日間、3回分割投与の場合は残りの5日間は休薬する。これを1週間ごとに繰り返す。なお、患者の年齢、症状、忍容性及び本剤に対する反応等に応じて適宜増減するが、1週間単位の投与量として16mgを超えないようにする。

関節症状を伴う若年性特発性関節炎
通常、1週間単位の投与量をメトトレキサートとして4~10mg/m2とし、1週間単位の投与量を1回又は2~3回に分割して経口投与する。分割して投与する場合、初日から2日目にかけて12時間間隔で投与する。1回又は2回分割投与の場合は残りの6日間、3回分割投与の場合は残りの5日間は休薬する。これを1週間ごとに繰り返す。なお、患者の年齢、症状、忍容性及び本剤に対する反応等に応じて適宜増減する。

この変則的な服用法が、定期的に扱っていないとすぐに使い方を忘れてしまう理由の1つですね。
今回の記事ではリウマチや乾癬に用いるケースについて見てみましょう。
基本的には1週間で6mg(つまり3カプセル)を服用することになります。多くの場合は分1で服用するので、下図のような飲み方になります

MTX 6mg/week

なお2~3回に分割して服用することも可能です。1週間で6mgの場合は下図のような飲み方になります。

MTX 6㎎/week 分2

予後不良因子をもつ非高齢者では1週間に8mg(つまり4カプセル)で開始することが勧められています。この場合は下図のような飲み方になります。

MTX 8㎎/week

6mgを分1の時もですが、基本的に夕食後の分を少なめにします。これは睡眠中にはメトトレキサートの排泄が低下するためです。使用上の注意にも以下の様な記載がされています。

メトトレキサートの副作用は用量依存的です。排泄量が低下すると当然副作用の発現率が高くなるわけですね。

メトトレキサートの1週間の投与量は最大16mgまでです。そのため1週間で12mg、16mgどもありえます。代表的な服用方法も紹介しておきます。

紹介したのはあくまで一例であり、厳密な決まりはありません。医師によって出し方は異なります。2日目までに服用を終えて残りは休薬期間にすること、夕食後の分はなるべく2カプセルを服用しない事を守っていれば大丈夫です。(夕食後に2カプセルの服用にする医師もいます)

ここまででリウマトレックス®カプセルの飲み方は分かったでしょうか?なおリウマトレックス®カプセルを服用した後に葉酸を処方することがあります。これはメトトレキサートによる副作用を軽減するためです。メトトレキサートは葉酸の代謝を阻害することによって効果を発揮しますが、これが副作用の原因にもなるわけですね。
基本的には1週間に8mg以上服用する場合や、高齢者、腎機能低下患者に用います。
副作用としては胃腸障害や口内炎、肝障害などがあり、重篤なものには間質性肺炎や骨髄抑制などがありますね。
葉酸を服用するのはメトトレキサートを服用した翌日又は翌々日です。(メトトレキサート最終投与後24~48時間後)

※葉酸はメトトレキサートと一緒には服用しません。同時服用ではメトトレキサートの効果が減弱するためですね。そのため翌日または翌々日になるわけです。
多くはフォリアミン®錠を1日1回、1日間の服用です。
重篤な副作用が起きた場合は、ロイコボリン®注によって治療を行います。ロイコボリン®注の有効成分のホリナートカルシウムは活性型葉酸なので速やかな効果が期待できるわけですね。


さてここまででリウマトレックス®カプセルについて大分理解できたでしょうか?
ここまでの情報は教科書や文献を見れば載っている内容です。ここから追加の情報をお伝えしておきます。
メトトレキサートは腎排泄されるので、リウマトレックス®カプセルは腎障害患者には使えません。

とは言え腎障害の程度が分かりません。リウマトレックス®カプセルは多くが高齢者に処方されます。高齢者なら軽度の腎機能低下などは当たり前です。むしろ全く正常の方が少数派でしょう。そのためファイザーの製品情報センターに問い合わせてみました。結果は

「クレアチニンクリアランスが50以上なら専門医の判断による。50未満なら禁忌」

とのことでした。リウマチの処方箋には血液検査の数値が記載された処方箋が多いです。クレアチニン値、eGFRは記載されていることが多いですが、クレアチニンクリアランスまで記載されているものは稀です。そのため必ず計算サイトを薬局のPCにブックマークしておき、年齢、体重、クレアチニン値から速やかに計算できるようにしておきましょう。
⇒ ke!san 生活や実務に役立つ計算サイト 腎機能推定計算
また健康診断の結果ではeGFRだけ記載されているものもありますので、この場合はeGFRからクレアチニン値を逆算し、クレアチニン値からクレアチニンクリアランスを算出できるようにしましょう。
⇒ 腎機能低下患者への投薬 わずかな情報から、他の検査値を算出


今回の記事ではリウマトレックス®カプセルの薬用量はリウマチや乾癬のケースで解説しましたが、この他に「関節症状を伴う若年性特発性関節炎」にも用いられます。この場合は体表面積から薬用量を決めます。処方箋鑑査で薬用量をチェックする時に患者の身長、体重から体表面積もすぐに出せるようにしておきましょう。
⇒ eGFRをもう少し詳しく 体表面積による補正・未補正
例えば身長170㎝、体重65kgなら体表面積は約1.75㎡(Du Bois式)になります。この場合のメトトレキサートの使用量は1週間で7~17.5mg、つまりリウマトレックス®カプセルで4~8カプセルを2日間で服用するわけですね。


リウマトレックス®カプセルは変則的な使い方をし、また副作用も多いのにかかわらず、頻用される薬剤です。使い方だけでなくその意味まで理解し、適切な薬物治療に活かして頂ければと思います。また過去に何度も書いた腎機能に関する知識はいたるところで活用されます。こちらも合わせて役立ててくれると嬉しいです。

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