腸閉塞の患者 NSAIDsを避ける理由

調剤業務

あまりの忙しさにまたまた更新が途絶えてしまいました💦6月から調剤報酬改定があるため、まだまだ忙しい日が続きますが、1つでも記事が書けるようにしたいと思います。
先日知人に会ったのですが、その人はトラムセット®配合錠を使っていました。腰痛で使っているようなので、随分と酷い痛みなのかと聞いたら、「痛みはそこまで酷くないが、過去に腸閉塞で手術をしているので、主治医にロキソニンなどは使わない方がいいと言われている」との事でした。ロキソニンなどのNSAIDsといえば胃腸障害、腎障害の副作用が有名ですが、実は腸閉塞を誘発することもあります。今回の記事でNSAIDsがなぜ腸閉塞に悪影響か紹介します。是非メカニズムを理解してもらえればと思います。


・腸閉塞について
腸閉塞はイレウスともいい、様々な原因で腸の内容物が肛門側に通過できなくなり滞留してしまう状態をさします。腫瘍や胆石・異物、手術後の腸管粘膜の癒着などが原因で腸管が物理的に塞がってしまうのを機械的イレウスといい、血流障害を伴わない閉塞性イレウス(単純性イレウス)と、血流障害を伴う絞扼性イレウス(複雑性イレウス)があります。

腸に器質的な異常はないですが、蠕動運動に異常が生じすることで内容物の滞留が起きるのを機能的イレウスといいます。開腹手術後などに麻酔の影響で腸管が麻痺してしまい蠕動運動が麻痺してしまう麻痺性イレウス、ストレスなどによる自律神経の乱れや、細菌・ウイルス・毒素などが原因で腸管が痙攣して内容物が流れなくなってしまう痙攣性イレウスがあります。


腸閉塞になると内容物が腸に滞留するため腹痛を生じます。また腸内の内容物からガスが発生し腹部膨満感も起きます。内容物の滞留により逆流が起きるため悪心・嘔吐が起きることもあります。腸が完全に閉塞してしまうと排便や排ガスが起きなくなります。

腸閉塞の治療は以下のようなものがあります。

・保存療法
絶食し腸を休める方法です。その間は点滴によって栄養補給をします。改善しない場合は症状が重い場合は、鼻から腸までチューブを挿入し、内容物を吸引して腸管内を減圧します。

・内視鏡治療
内視鏡を用いて腸の狭窄部分にステントを広げたり、腸の捻じれ(腸捻転)を元に戻します。

・手術療法
癒着性イレウスに対し癒着部分を剝がしたり、血流障害によりや壊死した部位、腫瘍、重篤な狭窄部位を切除します(切除後は正常な腸同士をつなぎ合わせます)。


ここまでで腸閉塞についてある程度理解できたでしょうか?それではNSAIDsがなぜ腸閉塞に悪影響かを紹介します。

・NSAIDsが腸閉塞に及ぼす影響
まず初めにNSAIDsの作用機序をおさらいしましょう。
NSAIDsはシクロオキシゲナーゼ(以下COX)を阻害し、プロスタグランジン(以下PG)の産生を阻害します。PGには血管拡張作用があり、腸の血流を保っています。(PGF2αは血管を収縮)


またPGは消化管粘膜を保護していています。 PGの産生低下により腸の虚血や腸管粘膜のバリア能が低下し、腸管粘膜に腸内細菌・毒素・胆汁酸などが侵入しやすくなります。その結果粘膜で炎症が起きます。炎症と改善を繰り返すことで細胞修復のために産生されるコラーゲンが線維芽細胞に吸収されず沈着し、組織の線維化が起きます


粘膜下層が維化する結果、腸の内側に数ミリ程度の薄い膜のような突起が出てきます。この膜は環状になっており、腸管粘膜を仕切るような形状になります。これをダイアフラム病(または横隔膜様狭窄)いいます。この膜が複数箇所にできると腸管が極端に狭くなり、腸閉塞になる原因となります。

虚血、炎症が悪化するとそれ以上の刺激を避けるために蠕動運動が低下することがあります。つまり麻痺性イレウスを誘発することになります。


また腸が捻じれたり絞まったりする絞扼性イレウスでは急激に血流が途絶えることがあります。

この状態でNSAIDsを使うと粘膜がさらに傷つき、潰瘍や穿孔を起こす恐れがあります。

ここまでの説明でNSAIDsが腸閉塞に悪影響だという事は理解できたと思います。
添付文書をみるとNSAIDsは腸閉塞に禁忌とはなっていません。しかし重大な副作用の項目に”小腸・大腸の狭窄・閉塞”といった記載があります。

このことからも腸閉塞の患者、既往歴のある患者にNSAIDsが処方された場合は、念のため疑義照会しておくのが良いでしょう。
代替薬としてはアセトアミノフェンが最も安全性が高いといえます。今回の記事で紹介した知人はトラムセット®配合錠を使っていました。腸閉塞の手術をした担当医も了承のもとなので問題ないでしょうが、トラムセット®配合錠も注意する必要があります。トラムセット®配合錠に含まれるトラマドールはオピオイドμ受容体を刺激し、蠕動運動を抑制します。これが便秘の副作用がおきる原因ですね。前述したように腸閉塞では便秘になります。万が一腸閉塞が再発した場合は便秘がさらに悪化することになります。そのためたんなる便秘だけでなく、ガスも出なくなる、腹部がパンパンに張る、強い腹痛があるといった症状がある場合、腸閉塞になってる可能性があります。その場合は速やかに受診する必要があります。今回知人にはその旨は伝えておきました。
※トラムセット®配合錠の添付文書に腸閉塞を起こす旨の記載は見つかりませんでした。


今回の記事で腸閉塞について、NSAIDsが悪影響な理由が理解できたでしょうか?
腸閉塞は保存療法、手術療法を行っても再発することのある疾患です。一度治ると患者自身も腸閉塞だった旨を忘れて、医師や薬剤師に伝えることを忘れてしまうことも十分考えられます。患者との話し合いの中で腸閉塞の既往歴が判明した場合は必ず薬歴に残しておくようにしましょう。特にサマリーの一番目立つところに書いて、薬歴を開いたらすぐに分かるようにしましょう。NSAIDsが処方されていた場合は疑義照会するのをおススメします。

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