ラゲブリオカプセル 脱カプセルして服用してもらった事例

調剤業務

相変わらずコロナ患者が減らず、どの薬局でもラゲブリオ®カプセルやパキロビットパックの処方が続いていることでしょう。ラゲブリオ®カプセルを直接見たことがある人は分かるでしょうが、カプセルが大きいです(長さ21.7㎜ 直径7.64㎜)。基本的に重症化リスクのある高齢者に処方されることになるので、中には飲み込むのが困難な患者さんもいます。うちの薬局でもつい最近、認知症も患っており、さらに嚥下能力もあまり高くない患者さんに処方されました。今回の記事でその時の対応を紹介します。いつもに比べて短く簡易な内容ですが、読者の皆さんに共有しておいて損はないと思います。


まずラゲブリオ®カプセルの服用の仕方について確認しましょう。添付文書を見ると以下のように記載されています。
「通常、18歳以上の患者には、モルヌピラビルとして1回800mgを1日2回、5日間経口投与する」
ラゲブリオ®カプセルの規格は200㎎なので、1回4カプセルを1日2回服用することになります。ここまでは誰でも知っているでしょう。

問題はこの大きいカプセルを1回に4カプセルも服用することです。嚥下能力の低い患者さんが飲み込むのは至難の業でしょう。冒頭で紹介した患者さんに処方しようとした医師から「ラゲブリオ®カプセルを脱カプセルして飲ませられないか?」と相談を受けました。

ラゲブリオ®カプセルの添付文書やインタビューフォームを見ても脱カプセルに関する情報は記載されていません。また新しい薬なので「錠剤・カプセル剤粉砕ハンドブック」にも記載されていません。
そこで製造販売元のMSD株式会社のWebサイトを調べると医療従事者向けのMSD Connectというサイトがありました。

そこから 各領域情報⇒感染症⇒ラゲブリオ⇒製品基本Q&A と移動するとラゲブリオ®カプセルに関する詳しい情報が出てきます。 ⇒ 製品基本Q&A ラゲブリオ®カプセル200㎎

その中に”脱カプセル・懸濁・簡易懸濁投与の可否、使用経験は?”という項目があります。そこには以下のような記載があります。

「本剤を脱カプセルや懸濁、簡易懸濁して投与することは、承認された用法ではないため、やむを得ない場合を除き、おすすめしていません。臨床試験では脱カプセルして調製した懸濁液の経口、経管投与の経験があります。」

まあ脱カプセルが推奨されないのは当然でしょう。承認された使い方ではないわけですからね。しかし今回のように上手く飲み込めないのは”やむをえない場合”に該当します。臨床試験では脱カプセルした懸濁液の投与の経験があるようです。使用経験があるというだけで実際どうだったかが書かれていないので、これは直接カスタマーサポートセンターに問い合わせてみました。そこで分かったことは以下の2点です。

・脱カプセルして服用したケースでも有害事象は見られなかった
・脱カプセルした場合でもAUCに有意な差は見られなかった

脱カプセルしても臨床試験の段階では有害事象はなく、体内に取り込まれる総薬用量もあまり変化がなかったことになります。これらの情報をもって医師に面会しました。
ここまでのデータをみると脱カプセルして服用することになんら問題が無いように感じますが、あくまで承認された用法ではありません。そのため医師に情報提供してOKをもらってからにしないといけません。
結果としては問題なくOKでした。なお脱カプセルし散剤として分包するのでは無く、服用の直前に脱カプセルして、これを水に懸濁して服用する形になります。散剤として用いる方法は経験が無いので試せません。患者さんのご家族に説明し、面倒ですが1回に4カプセルを脱カプセルしてもらい、これを水に溶かして飲んでもらうことにしました。
後日フォローアップも兼ねて症状がどうなったか確認してみました。既に症状は改善しており、お元気になっていました。


今回のようにイレギュラーな飲み方をさせなくてはならないケースもあります。新しい薬やマイナーな薬は「錠剤・カプセル剤粉砕ハンドブック」にも載っていないことがあります。このような時は製薬会社のHPやカスタマーサポートセンターなどに問い合わせて迅速に情報を入手しましょう。またそれらの情報を入手したら医師に情報提供し、粉砕や脱カプセルをするかなどを決めておくと次回以降の対応が速やかにできるでしょう。言うまでもありませんが、普段から病院と連携を取り良好な関係が構築されていることが必須になります。こういう面倒なケースでも逃げすに、全力で対応するからこそ医師から信頼してもらえるのだと思います。

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