先日ある病院に通院していた患者さんが訪問診療に切り替え、そこから処方箋が発行されました。処方内容は今までの病院での内容をそのまま引き継いだものでした。その中に以下のものが含まれていました。
・グルコンサンK細粒4mEq/g 3包 1日3回 毎食後
現在グルコンサンKは錠剤が販売中止になっており、また細粒4mEq/gにおいても1g包の分包品が販売中止になっています。
⇒ サンファーマ株式会社「グルコンサンK錠2.5mEq/5mEq」販売中止及び「グルコンサンK細粒4mEq/g」一部包装規格単位 販売中止のお知らせ
そのため非常に入手し辛くなっています(バラの細粒のみ残っています)。今後のことも考えて当薬局で多く使われているアスパラカリウム®錠(300)に変更してもらうことにしました。
しかしここで問題があります。グルコンサンK細粒のカリウムはmEqで表記されています。一方アスパラカリウム®錠(300)は1錠あたりアスパラカリウムが300mg含まれているという事で単純なカリウム量がすぐに分かりません。今回の記事でmEqについての説明と他剤へ切り替える際の注意点を紹介します。薬が足りていない現状では他剤への切り替えは頻繁に起きると思います。意味を理解してカリウム剤の切り替えの際の参考にして下さい、
・mEqとは何か?
mEqとはミリ当量ともいい、電解質(イオン)の化学的活性を表す単位です。つまりイオンの電気的な化学反応の能力を示します。化学反応の能力を示すには単純に何g、何mgという重さではなく、物質量(mol:モル)を求める必要があります。
mEqは主に輸液の投与量を設計する際や、体の電解質の状態を表すのに用います。
例えばNaClの原子量はNaが23、Clが35.5です。これは1molあたりの重さがNaが23g、Clが35.5gであることを意味します。
※1molは6.02×1023個を集まりを意味します。原子や分子はあまりにも小さいため一定の個数をまとめて数えます。一定の個数がアボガドロ定数(6.02×1023個)です。
生理食塩水の場合のナトリウムのmEqを計算してみましょう。
生理食塩水は0.9%です。つまり1L中にNaClが9g含まれます。
この場合NaClは 9/58.5≒0.154 mol となります。molでは計算し辛いので10-3のmを用いて154mmolとします。mEqはこのmmolにイオンの価数をかけて算出します。電気的な影響を及ぼす能力を表しているからですね。
mEq=mmol ×イオンの価数
Na、ClのイオンはNa+、Cl–といずれも1価なので、Na、Clはいずれも154mEqとなります。
※Ca²⁺の場合は2価のイオンなので、154mmolの場合は154×2=308mEqとなります。
mEqについて理解できたところで、冒頭で紹介したグルコンサンK細粒に含まれるカリウムを計算しましょう。
・グルコンサンK細粒4mEq/g 3包 1日3回 毎食後
4mEq/gなので1g包に4mEqのカリウムが含まれています。1日のカリウムのmEqは 4×3=12mEq ですね。
※カリウムの原子量は39.1、イオンはK⁺と1価のイオンなので、グルコンサンK細粒4mEq/g 1g包に含まれるカリウムの質量は 4mEq=4mmol×39.1=156.4mg となります。
グルコンサンK細粒4mEq/gに含まれるカリウムの1日分のmEqが分かったところで、これをアスパラカリウム®錠(300)に換算しましょう。
アスパラカリウム®錠(300)には1錠あたりカリウムが1.8mEq含まれていることが記載されています。
そのためグルコンサンK細粒4mEq/gに換算するのは簡単そうです。
現在グルコンサンK細粒4mEq/gを1日3gなのでカリウムは1日4×3=12mEqです。
これをアスパラカリウム®錠(300)に換算すると 12÷1.8≒6.67 錠になります。1日3回で服用するなら6錠を分3といったところでしょうか。
しかし実際は上記のような単純計算は出来ません。L-アスパラギン酸カリウムはカリウムがL-アスパラギン酸と結合し細胞内に移行します。L-アスパラギン酸カリウムは細胞膜に存在するトランスポーターを介して細胞内に移行するため、細胞内への移行が極めて優れています。そのためグルコンサンカリウムと同量を投与すると、細胞内カリウム値が過剰になってしまいます。
ニプロ株式会社によるとグルコンサンカリウムから切り替える際は、グルコンサンKで摂取しているカリウムのmEq数の約4割を目安にするとされています。
⇒ ニプロ株式会社 アスパラカリウム錠300 よくある質問
このことを考慮すると アスパラカリウム®錠(300)は 12×0.4÷1.8≒2.67 錠となります。アスパラカリウム®錠(300)を3錠分3でよいでしょう。
なお塩化カリウムから切り替える際はカリウムのmEqの約5割を目安にします。
(ex)塩化カリウム「St」徐放錠(600) 4錠 朝夕食後
1錠あたりK⁺:8.0mEq 4錠で 8×4=32mEq 32×0.5=16mEq
アスパラカリウム®錠(300)1錠 K⁺:1.8mEqなので 16÷1.8≒8.89錠
以上のようなやり方でアスパラカリウム®錠(300)への切り替えが可能です。しかし他剤への変更をしている以上、どうしても多少の量がズレますし、また組織移行性も計算通りにいかない可能性も高いでしょう。切り替え後は定期的な採血を行って血清カリウム値を確認する必要があるのは言うまでもありません。
今回の記事でミリ当量の意味、また切り替えの際は単純な計算だけでなく、細胞内への移行性を考慮しなくてはならないことが分かったでしょうか?現在Webにカリウム剤の他剤への切り替えを簡単に換算してくれるサイトもあるので、それを利用すればすぐに換算量が分かります。ただしミリ当量の意味を知らなかったり、組織移行性が薬剤によって異なることを忘れると、うっかり単純計算をして誤った量を算出してしまうリスクもあります。実際に過去に組織移行性の考慮を忘れてしまったヒヤリ・ハットも存在します。
⇒ 青森県薬剤師会 ヒヤリ・ハット事例
今回のような他剤への切り替えがあった場合は、記事にして紹介して注意喚起をしていこうと思います。
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