2020年12月15日に厚労省から「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その31)」の通知がされました。
昨今のコロナ禍における保険医療機関の厳しい経営状況を加味して、診療報酬や調剤報酬において小児の外来において臨時の加算を算定できるようなりました。現状は令和3年2月調剤分までの措置とされています。場合によっては延長されるかもしれません。
今回の記事ではこの通知の確認と、当薬局での取り組みについて紹介します。
(簡潔な内容にするため、医科に対する部分は取り除き、薬局に関係する部分のみとします)
今回の臨時措置については小児の外来において、新型コロナウイルスの感染拡大に特に手厚い措置が必要であるとして、薬剤服用歴管理指導料又はかかりつけ薬剤師指導料に所定の点数が上乗せされる形になっています。
対象患者は6歳未満の乳幼児です。薬剤服用歴管理指導料又はかかりつけ薬剤師指導料に乳幼児服薬指導加算に相当する点数(12点)をさらに加算できるとされています。
レセコンをバージョンアップして確認すると「乳幼児服薬加算(臨時)」との加算項目がありました。
※名称はレセコンメーカーによって異なるかもしれません。
6歳未満の乳幼児に対して乳幼児服薬加算12点と、乳幼児服薬加算(臨時)12点の計24点が加算することが可能になります。これはとても大きいですね。
算定要件について見てみましょう。
・6歳未満の乳幼児であること
・小児の外来診療等において特に必要な感染予防策を講じること
・必要な薬学的管理及び指導を行うこと
以上の3点になります。
ここで「特に必要な感染予防策」とは何かが問題となります。これについて回答が出ました。
原文ママ↓
「小児の外来診療におけるコロナウイルス感染症 2019(COVID-19)診療指針・第1版(小児 COVID-19 合同学会ワーキンググループ)」を参考に、小児の外来における院内感染防止等に留意した対応を行うこと。」
(院内感染防止等に留意した対応の例)
・COVID-19 に特徴的な症状はなく、小児では出現しても訴えとして現れることが期待できないことから、一人の患者ごとに手指消毒を実施すること。
・流行状況を踏まえ、家庭内・保育所内等に感染徴候のある人がいたか、いなかったのかを確実に把握すること。
・環境消毒については、手指の高頻度接触面と言われるドアノブ・手すり・椅子・スイッチ・タッチパネル・マウス・キーボードなどは定期的に 70~95%アルコールか 0.05%次亜塩素酸ナトリウムを用いて清拭消毒し、特に小児が触れる可能性が高い場所は重点的に行うこと
実際に薬局ではどうするか検討しました。
①来局した患者さん全員に手の消毒をしてもらいます。受付カウンターにアルコールが設置してあるので、処方箋受け取り時に声掛けして使ってもらいます。
②「流行状況を踏まえ、家庭内・保育所内等に感染徴候のある人がいたか、いなかったのかを確実に把握すること。」ですが、これが一番悩みました。風邪で受診した患者さんなら分かりますが、例えば怪我やアトピーなど、コロナに全く関係の無い疾患で受診した患者さんにも確認するの?となります。正直これらの人には周囲の感染状況を確認する必要もないと思ったのですが、6歳未満の乳幼児なら疾患にかかわらず算定できる制度です。制度趣旨に従うためにも全員に聞くことにしました。
正直聞かれる方としては嫌な気分になるかもしれません。患者さんには一言「新型コロナウイルスの流行状況の把握のために」と付け加えて訊ねることにしました。今のところ皆さん快く協力してくれています。
③環境消毒については開店前、門前医院のお昼休み中、外来終了後の3回、患者の触れる可能性のある箇所をアルコールを噴霧して拭き取り、ソファーには片っ端からアルコール噴霧することにしました。もちろん換気はマストです。
とりあえずこれだけやれば算定要件は満たしているのかな?もちろん従業員も定期的に消毒が必要です。バックヤードにアルコール噴霧を設置して、通るたびに使用です。
新型コロナウイルスの感染防止のため、オンライン診療、オンライン服薬指導を行っているところもあると思います。この場合は乳幼児服薬加算(臨時)は算定できるのかとの問いに対する回答は「算定できない」です。
小児の外来における感染防止のための予防策を評価しての加算になるので、感染のリスクのないオンライン服薬指導では算定できないのは当然でしょう。
最後に6歳未満の患者の薬歴には上記の感染防止措置、周囲の感染状況の確認の結果は薬歴に残すことにしました。まあこれについては定型文でも作っておけば簡単に記載できるでしょう。
今回の措置については6歳未満の乳幼児が対象になっていますが、むしろ本当に必要なのは基礎疾患を抱えた高齢者のような気がします。そして「特に必要な感染予防策」は薬局全体で感染防止策を行えば誰でもできることです。制度の本音は小児科の受診抑制が特に著しいので、小児科を救済するために出した臨時措置といったところでしょう。いい機会なので薬局内の消毒の徹底をし、少しでも安心できる環境を作る次第です。
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