何度でも確認して! 硝酸イソソルビド徐放錠と一硝酸イソソルビド錠の違い

ヒヤリ・ハット

先日うちの薬局に新患さんが処方箋をもってきました。持参した処方箋の内容で、よーく確認しないとミスにつながりかねないものがありました。結論からいうと硝酸イソソルビド徐放錠と一硝酸イソソルビド錠の違いです。よく間違えやすい薬の代表例みたいなものであり、薬剤師向けの雑誌のヒヤリ・ハットの紹介には必ずと言っていいほど記載されています。にもかかわらず一向になくならないミスなので、今回の記事で紹介します。定期的にこのような事例を見直し、事故防止に役立てて頂ければと思います。


今回の新患さんが持参した処方箋は、この患者さんのかかりつけ医から発行されたものでした。患者さんに確認すると、やはり以前からずっと使っている薬との事でした。
一緒にお薬手帳を持参していたので内容を確認したことろ、3日前まで入院していたことが分かりました。そこでもらった退院処方もお薬手帳に記載してあり、その内容も今回のかかりつけ医による処方内容とほぼ一緒のものでした。

上の図を見て分かるように、かかりつけ医に通っていた患者さんが入院して、その間は入院先で同じ薬を出してもらっていたようです。そして退院処方でも同じ薬を1週間分もらい、その薬が無くなる前に再びかかりつけ医にかかり、同じ薬をもらいに行ったようです。
しかし1点だけ違っていたものがあります。それが冒頭で紹介した硝酸イソソルビド徐放錠と一硝酸イソソルビド錠でした。入院前、入院後では硝酸イソソルビド徐放錠を、入院先および退院処方では一硝酸イソソルビド錠が処方されています。

ここで硝酸イソソルビド徐放錠と一硝酸イソソルビド錠の違いを確認しておきましょう。
硝酸イソソルビド徐放錠、一硝酸イソソルビド錠の製剤としては以下のようなものがあります。

硝酸イソソルビドと一硝酸イソソルビドの違いはニトロ基1個だけです。
※硝酸イソソルビドの方はニトロ基が2個あるので、個人的には二硝酸イソソルビドと頭の中で変換しています

ほんのわずかな違いですが、一硝酸イソソルビドはこの構造の違いにより硝酸イソソルビドに比べて肝臓で代謝されにくく、作用時間が長くなります。
一硝酸イソソルビド錠の添付文書⇩

これに対して硝酸イソソルビドは肝臓で速やかに代謝されます。そのため硝酸イソソルビドは基本的には徐放錠が用いられるわけですね。
ちなみに硝酸イソソルビドの徐放製剤ではないニトロール®錠(5)の薬物動態は以下のようになっています。

Tmaxが25分前後と非常に短いです。そのため舌下投与することで狭心症発作時にも使えるわけですね。(舌下投与した場合はTmaxが18分前後になります)


ここまでで硝酸イソソルビドと一硝酸イソソルビドの構造、それによる代謝、作用時間の違いについて分かったでしょうか?
次に硝酸イソソルビド徐放錠と一硝酸イソソルビド錠の製剤の違いを見てみましょう。

どちらも主に狭心症に使われます。硝酸イソソルビド徐放錠はその他の虚血性心疾患(心筋梗塞、弁膜症など)にも用いられますが、処方箋を見ただけでは疾患を特定するのは困難でしょう。そしてどちらも基本的に1回20㎎を1日2回で用います。
ただでさえ名前が似ており、対象となる疾患もかぶっており、薬用量も通常は同じなので、間違えが一向になくならないのも納得できます。

話しを戻して、今回の新患さんが入院先では硝酸イソソルビド徐放錠から一硝酸イソソルビド錠に変わっていました。これには治療上の理由があるのかが問題になります。この患者さんは狭心症発作が頻発したため入院しました。そのため一硝酸イソソルビド錠を使っても問題ありません。しかし硝酸イソソルビド徐放錠と一硝酸イソソルビド錠では薬物動態が若干異なります。

硝酸イソソルビド徐放錠の方がより穏やかに血中濃度が上がるのが分かります。単に入院先の病院で硝酸イソソルビド徐放錠の採用がなかったので一硝酸イソソルビド錠にしていたのか、あるいは患者の容態に対して一硝酸イソソルビド錠の方が良かったのかが分かりません。もし後者の場合はかかりつけ医に連絡し、一硝酸イソソルビド錠にするか検討してもらわなくてはなりません。
そのため入院していた病院に連絡をし、入院前は硝酸イソソルビド徐放錠が処方されていたこと、入院中に一硝酸イソソルビド錠になっていたこと、退院後のかかりつけ医は硝酸イソソルビド徐放錠を処方していることを伝え、一硝酸イソソルビド錠にしたのは採用品の問題か、あるいは治療上の意味があって行ったものかを質問しました。
(しっかり質問意図を伝えるため全て時系列にして記載し、お薬手帳のコピー、動態パラメーターも添付してFAXしたので、かなり大変でした💦)
結果としては病院の採用品が一硝酸イソソルビド錠しかなかったこと、退院後は硝酸イソソルビド徐放錠に戻して問題ないことが分かったので、処方箋通りに調剤しました。

今回は単に採用品の問題で薬が変わっていただけなので、処方箋通りに調剤して問題なかったですが、もし狭心症のコントロールのために処方変更していた場合は、ちょっとした見落としで致命的になる可能性もあります。
今回のように一つの疾患で入院等により複数の病院を挟んでいるケースでは、入院した経緯、入院前後の治療内容の変化、退院後はどのような治療方針になるかを患者にしっかり確認するようにしないといけません。一連の流れと処方薬に矛盾点があれば必ず確認するようにしましょう(実際にこれで薬用量のミスを発見したこともあります)。
また繰り返しになりますが、硝酸イソソルビド徐放錠と一硝酸イソソルビド錠は非常に間違えが多い薬です。定期的にヒヤリ・ハットの事例を振り返ることによって、硝酸イソソルビド製剤が処方されたら硝酸か一硝酸徐放の文字が入っているかを確認するクセをつけ、ミスを未然に防いで下さい。

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