計数できない量の錠剤が処方された。落ち着いて考えて!

                    焦る
調剤業務をしていると錠剤を半錠に割ったり、場合によっては4分の1錠にしたりすることがあります。しかし時にあり得ないような量の錠剤を調剤しなくてはならないこともあります。今回は当薬局で実際にあった処方を例にとって解説してみたいと思います。
※他にももっといい方法があるかもしれません。ご存じの方がいらっしゃいましたら、お教えいただけると幸いです。

2歳の患者さん、心室中隔欠損症であり、エナラプリルが処方されました。

心室中隔欠損症は肺高血圧や心不全を起こすことがあります。肺高血圧の治療薬はエンドセリン受容体拮抗薬、PDE-Ⅴ阻害薬、グアニル酸シクラーゼ刺激薬、PGI2薬、PGI2受容体刺激薬などになるので、この場合は心室中隔欠損症のよる心不全の防止のために処方されたと思われます。
エナラプリルは生後1ヶ月以上の小児にも使用可能です。
処方された内容が以下のものになります↓
レニベース錠(5) 0.17錠 1日1回 朝食後 30日分
エナラプリルは小児薬用量が 1日 0.08mg/kg です。
5(㎎) × 0.17 = 0.85(㎎)  0.85(㎎) ÷ 0.08(㎎/kg) = 10.625(kg)
体重約10kg分の薬用量。2歳の子なので10kgは普通です。薬用量に問題ないでしょう。
処方箋監査は済みました。さて問題は0.17錠? どうやって測るの?
エナラプリルは錠剤しかありません。
粉やシロップに変えるわけにはいかないので、錠剤で調剤するしかありません。
管理薬剤師たるものこういう時は先陣を切って対処しなくてはなりません。
必死に考えて自分なりのやり方で対処できました。以下に方法を書きます。
①まず錠剤の全量を用意します。
0.17  × 30 = 5.1  小数点以下を切り上げて6錠を用意します。
②用意した錠剤を粉砕します。
篩にかけてちゃんとフィルムコートを取り除くのを忘れないようにしましょう。
③粉砕した錠剤に乳糖を賦形します。
この時に粉砕した錠剤と乳糖の合計が「錠剤の数×1g」(つまり今回は6g)になるようにします。
※このとき普段の散剤の混合よりも余計によ~~く混ぜて下さい。
出来あがった錠剤の粉砕+乳糖は、全量6gの中にレニベース(5)が6錠含まれていることになります。
④出来あがった粉を必要な分だけ測り取ります。
今回は5.1錠必要なわけです。散剤は1gあたり錠剤が1錠含まれているわけなので、5.1g測り取れば、レニベース(5)が5.1錠測れたことになります。(0.9gはもったいないけど捨てましょう)
⑤測り取った散剤を撒いて出来上がり。
今回は30包に撒けば、1包あたりレニベース(5)が0.17錠含まれていることになります。
やっていることは高校の化学のような考え方ですね。
滅多にないケースですが突然目の当たりにすると結構みんな焦ります。そんな時に少しでも記憶の片隅に残っていれば冷静に対処できるはずです。基本的に恐怖は無知からくると言われています。色んなことを経験し、また他の事例から学び、少しでも多くの知恵をつけて業務にあたりましょう。
「恐怖は常に無知から生まれる。知識は恐怖の解毒剤である。」
                                                   byエマーソン(思想家)
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