ナウゼリンが入荷せずプリンペランで代用 切り替え時の注意点

調剤業務

相変わらず様々な薬の出荷調整が続いており、常に何かしらの薬が入ってこず、現場での混乱は一向に減りません。つい最近ナウゼリンOD®錠(5)を発注しようとしたら、先発品・後発品ともに入ってこず困ってしまいました。あと少しで在庫も底をつきそうだったので、プリンペラン®で代用することを考えました。一見同じような薬に見えますが、注意点もあります。今回の記事を切り替えの際の参考にしてもらえればと思います。


ナウゼリン®もプリンペラン®も多くの適応がありますが、今回の記事では吐き気止めとして使う場合のみ想定しています。

・薬用量について
プリンペラン®には錠剤、細粒、シロップがありますが、錠剤、細粒の薬用量は以下のように書かれています。

「メトクロプラミドとして、通常成人1日7.67~23.04mgを2~3回に分割し、食前に経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。

メトクロプラミドは塩酸メトクロプラミドとして含まれており、メトクロプラミドは塩酸メトクロプラミドに換算すると メトクロプラミド  3.84mg ⇒ 塩酸メトクロプラミド  5mg となります。そのため錠剤、細粒は製剤量として以下のようにかかれています。


ここで問題となるのは小児に使う場合です。錠剤、細粒ともに”年齢、症状により適宜増減する”です。これでは具体的にどの程度使えばよいか分かりません。
ここでシロップの添付文書を見てみましょう。シロップには薬用量は以下のように書かれています。

「メトクロプラミドとして、通常成人1日7.67~23.04mgを2~3回に分割し、食前に経口投与する。小児は、1日0.38~0.53mg/kgを2~3回に分割し、食前に経口投与する。

そして製剤量に換算した量が以下のように書かれています。

シロップには体重あたりの使用量がキチンと記載されています。
例えば体重20kgの子供に使う場合、1日量は 20(kg)×0.5~0.7(mg/kg)=10~14(mg) となります。プリンペラン®シロップの規格は0.1%なので1mL中に1mgの成分が含有されていることになります。そのためシロップとして計量するのも10~14mLとなります。

これを細粒に換算してみましょう。
先ほどと同様に体重20kgの子供の1日量は 20(kg)×0.5~0.7(mg/kg)=10~14(mg) です。細粒の規格は2%です。つまり20mg/gになるので、10~14(mg)÷20(mg/g)=0.5~0.7(g) が製剤量となります。
体重別一覧表を作ると以下のようになります。


このように一方の剤形に小児薬用量が記載されていないのに、別の剤形には小児薬用量が記載されている薬が存在します。小児薬用量が書かれていない剤形の薬を使いたい場合は、他の剤形の薬用量から換算することで適量を導き出すことが可能です。
参考記事 ⇒ トランサミン散が入ってこない 錠剤で代用

なお体重15~20kgで、錠剤が飲める子供ならプリンペラン®錠(5) 2錠 を1日2回などでもよいでしょう。上記の表を見れば1日量が10mg以上であり、2~3回に分割して飲むので添付文書通りの用法・用量になります。22kg以上ある子供なら3錠を1日3回でもよいかもしれませんね。

・妊婦への投与
妊婦への投与についてはナウゼリン®錠よりプリンペラン®錠を用いた方がよいでしょう。
ナウゼリン®は妊婦への投与は禁忌になっていますが、プリンペラン®は有益投与です。

なおドンペリドンは妊婦への投与は禁忌とされてきましたが、2020年に国立成育医療研究センターはドンペリドンと乳児の奇形発生のリスクにと因果関係がないとの報告をしています。⇒ こちらからご覧ください
いずれドンペリドンも妊婦に有益投与になるかもしれませんが、現在は禁忌なのでプリンペラン®を使った方が無難でしょう。

・副作用について
副作用についてはプリンペランの方が注意が必要になります。それは錐体外路症状が起きる可能性があるからです。この原因を見てみましょう。
ドンペリドン、メトクロプラミドともに薬理作用は同じドパミンD2受容体の阻害にあります。
末梢ではドパミンD2受容体はコリン作動性神経の神経終末に存在し、アセチルコリンの放出を抑制しています。アセチルコリンは消化管運動を促進するので、これにより内容物が消化管に停留する時間が短くなり、制吐作用を生じます。

また中枢では化学受容器引金帯(CTZ)が刺激されると、その刺激を嘔吐中枢に伝わることで嘔吐が起きます。
一部の刺激はCTZを介さず、直接嘔吐中枢に伝わります
CTZにはドパミンD2受容体、セロトニン5-HT3受容体、ニューロイキンNK1受容体が存在し、これらの受容体を刺激すると嘔吐中枢に刺激が伝わりますが、これらの受容体を遮断することで制吐作用を生じます。

なおドパミンD2受容体、セロトニン5-HT3受容体は末梢にも存在し、末梢に存在する受容体を刺激するとCTZに刺激が伝わり、嘔吐を生じます。

つまり末梢、中枢のいずれのドパミンD2受容体を遮断しても制吐作用を生じるわけです。
ドンペリドンは中枢にほとんど移行せず、末梢での薬理作用により制吐作用を生じるため末梢性制吐薬と呼ばれます。一方メトクロプラミドは末梢で作用するだけでなく中枢にも移行し、制吐作用を生じます。末梢と中枢の両方に作用するので混合型制吐薬と呼ばれます。

メトクロプラミドは中枢へ移行することで、CTZ以外に存在するD2受容体を遮断してしまうわけです。これは錐体外路症状の原因となります。
中枢ではドパミン作動性神経は運動に対して抑制的に、コリン作動性神経が運動に関して促進的に作用しています。そのためD2受容体の遮断によりドパミンの働きを阻害してしまうと、錐体外路症状と呼ばれる筋肉の固縮、振戦、無動、姿勢反射障害といったパーキンソン病と同じ症状(パーキンソニズム)やアカシジアが出現する原因になります。また長期連用することで遅発性ジスキネジアの原因にもなりえます。
小児では特に錐体外路症状を起きやすいので投与量は十分注意しなくてはなりません。適量を短期間のみ使用すべきでしょう。


以上がナウゼリン®の代わりにプリンペラン®を使う際の注意点です。特に小児に使う時に薬用量、副作用について気を付けて頂ければと思います。
しかしいつになったら医薬品不足が改善されるのでしょうか?常に何かしらの薬が足りていない状況です。こんな時こそ医師と代替薬について十分に相談し、適切な治療を行えるように努めましょう。

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