現在トラネキサム酸製剤の在庫不足がずっと続いており、特にトランサミン®散の在庫はどこの卸でも欠品しており、入荷しません。うちの薬局でもトランサミン®散の在庫が底をつきそうになり、流石にまずくなってきました。トラネキサム酸製剤は代替薬が存在しません。しかし風邪薬として普通に処方されますし、特に小児では咽頭炎に頻繁に処方されます。大人ならロキソニン®などで咽頭痛を鎮めることはできますが、小児ではトランサミン®散やトランサミン®シロップを用いる以外ないでしょう。
トランサミン®散がこれ以上出せないので、苦肉の策で錠剤の粉砕して代替することにしました。今回はこの対応方法について紹介します。
まずトランサミン®散の薬用量を見てみましょう。
「トラネキサム酸として、通常成人1日750〜2,000mgを3〜4回に分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。」
適宜増減の程度が分かりません。しかしトランサミン®シロップには薬用量がキチンと書かれています。添付文書を見ると、1日量は以下のように書かれています。
~1歳 75〜200mg (1.5〜4 mL)
2~3歳 150〜350mg (3〜7mL)
4~6歳 250〜650mg (5〜13 mL)
7~14歳 400〜1,000mg (8~20mL)
15歳~ 750〜2,000mg (15~40mL)
これを散剤に換算します。トランサミン®散は50%散なので、計算すると以下のようになります。
~1歳 75〜200mg (0.15~0.4g)
2~3歳 150〜350mg (0.3~0.7g)
4~6歳 250〜650mg (0.5〜1.3g)
7~14歳 400〜1,000mg (0.8~2g)
15歳~ 750〜2,000mg (1.5~4g)
ここまでの内容は過去の記事にも同じことを書いています。
⇒ トランサミン散の小児薬用量
トランサミン®散の小児薬用量が分かったので、これを錠剤で用意しましょう。
第一三共に問い合わせたところ以下の回答が得られました。
「粉砕後、温度25℃、湿度75%の環境下で90日間経過後の品質に問題はなかった」
粉砕して風邪薬として用いるのは全然大丈夫そうです。
粉砕する場合は
トランサミン錠(250) 1錠粉砕 ⇒ 250㎎
トランサミン錠(250)0.5錠粉砕 ⇒ 125㎎
となります。上記で示したように、トラネキサム酸の薬用量にはかなりの幅があります。ほとんどが250㎎錠を0.5錠、1錠、2錠の粉砕で対応できるでしょう。例えば6歳、体重20kgの子供の処方としては
ムコダインDS50% 1.2g
アスベリン散10% 0.6g
トランサミン錠(250) 1錠
1日3回 毎食後 5日分
※トランサミン錠(250)は粉砕
こんな感じになるでしょう。ただし注意点があります。
トランサミン®錠(250)は粉砕すると苦みが出ます。メーカーに問い合わせしたらそこはクギを刺されました。しかし聞いたり読んだりするのではなく、身をもって試すのが薬剤師だと思っているので、錠剤を1錠潰して舐めてみました。結果としては確かに苦みがありますが、思ったほどではありません。舌先につけて舐めた程度ではほとんど感じませんでしたが、後になって苦みが感じられました。まあ味覚を感じる部位は以下のようになっているので、口の中にだんだん広がって、奥の苦みを感じる部位に触れたのでしょう。
しかしクラリス®ドライシロップを酸に混ぜたような酷い苦みではなかったです。投薬時には早めに飲み込んで、いつまでも口の中に残さないよう伝えれば大丈夫だと思います。
門前の医師にトランサミン®散が入ってこない事、錠剤を粉砕しても苦み以外は特に問題がないこと、錠剤に換算した時はどの程度用いればよいかを説明し、了承して頂けました。これでもうしばらくは耐えられそうです。薬が入ってこなくても今あるものを活用すれば何とかなることもあります。知恵を絞ってこの現状を乗り切りましょう。
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