牛乳アレルギー インフルエンザ治療薬との関係

調剤業務

先日社内でのヒヤリ・ハットの事例の紹介がありました。内容は以下のようになります。

「新患にイナビル®吸入粉末剤が処方。初回アンケートで牛乳アレルギーであることが判明。イナビル®吸入粉末剤の添付文書で牛乳アレルギーの患者ではアナフィラキシーが出た事例があることを確認。医師に疑義照会したところ、タミフル®カプセルに変更となった。」

結論から言うと禁忌ではありませんが、念のため疑義照会したら処方変更になった事例です。牛乳アレルギーに禁忌ではなくても、念のため疑義照会した方がよい事例もあります。今回の記事で牛乳アレルギーについてと、インフルエンザ治療薬で注意が必要なものについて確認しておきたいと思います。

まず牛乳アレルギーについて確認しておきましょう。
牛乳アレルギーとは牛乳に含まれるタンパク質が原因となって生じるアレルギー反応です。
牛乳に含まれるタンパク質の80%がガゼイン20%がホエイタンパク質(αラクトアルブミン、βラクトグロブリン)です。そのため牛乳アレルギー≒ガゼインに対するアレルギーと説明していることもあります。
これらのタンパク質の摂取によりアレルギー反応が生じ、腹痛・下痢などの消化器症状、蕁麻疹などの皮膚症状、眼の充血・鼻水といった粘膜症状、酷い時は呼吸困難やアナフィラキシーショックなどが生じます。

※牛乳を飲んで下痢や腹痛になる人がいますが、牛乳アレルギーではなく乳糖不耐症によることもあります。牛乳アレルギーとは異なるので注意しましょう。
乳糖不耐症は牛乳に含まれる乳糖(ラクトース)をグルコースとガラクトースに分解するラクターゼの活性が低下してたり、小腸での分泌不足により、乳糖が消化吸収できず下痢や腹痛を生じる疾患です。大人になるにつれラクターゼの分泌が減少するため、大人になってから発症することもあります。

多くのタンパク質は熱で変性しますが、牛乳アレルギーの最大の原因とされるガゼインは耐熱性です。そのため加熱処理によっても抗原性が低下しないという厄介な面があります。

※卵アレルギーの原因となるタンパク質の1つであるオボアルブミンは加熱により変性し、抗原性が失われます。卵アレルギーでも加熱した卵は食べられる人がいるのはこれが原因です。一方同じく卵に含まれるオボムコイドというタンパク質は熱によっても変性しません。オボムコイドにアレルギー反応を示す人は卵を加熱しても食べられないことになります。

以下のような医薬品が牛乳アレルギーに禁忌になっております。

※過去にはラックビーRは禁忌でしたが、2022年6月に禁忌が外れています。また過去に禁忌であったエンテロノンR散は2023年3月で経過措置が終了しており、耐性乳酸菌「トーワ」も2024年3月に経過措置が終了します。そのため今年の4月以降は全ての乳酸菌製剤が牛乳アレルギーでも使用可能となります。

さて今回の記事の冒頭で説明したイナビル®吸入用粉末について見てみましょう。イナビル®吸入用粉末の添付文書には次のような記載があります。

なおこの記載はリレンザ®にも同様の記載があります。これはどちらも吸入薬であるため、乳糖が含まれています。そして乳糖には夾雑物(不純物のことを指します)として乳タンパクが含まれることがあります。そのためこのような記載がされているわけです。
ではなぜ禁忌になっていないのか?それは実際に含有される乳タンパクは極めて微量であるからです。実際に牛乳アレルギーでもアレルギー反応を生じることは滅多にありません。しかしごく稀にわずかな量の乳タンパクでもアレルギー反応を起こす人がいます(実際にアナフィラキシーショックを生じた事例がありました)。そのため添付文書に注意事項として記載されているわけです。イメージ的には「慎重投与」くらいに思って良いでしょう。

吸入薬には乳糖が使用されることが多いので、アドエア®やフルタイド®など片っ端から吸入薬の添付文書を調べました。結果ほとんどの吸入薬に乳糖が含まれていますが、牛乳アレルギーに対する記載のあるものはありませんでした。今のところ確認できたのはイナビル®吸入用粉末、リレンザ®だけのようです。
なおイナビルにはイナビル®吸入用粉末の他にイナビル®吸入懸濁用160㎎セットがあります。イナビル®吸入懸濁用160㎎セットはネブライザーを使って吸入するタイプであり、乳糖が含まれていません。そのため牛乳アレルギーでも安心して使えるでしょう。

冒頭で紹介した事例ではタミフル®カプセルに変更になりましたが、他にもゾフルーザ®に変更してもよいですね。これまでは小児に対してゾフルーザ®の使用は推奨されていませんでしたが、2023年11月19日に日本小児科学会が2023/24 シーズンのインフルエンザ治療・予防指針を発表し、12歳以上の小児にゾフルーザ®の使用を推奨に変更しました。そのため処方変更の幅が広がりましたね。


牛乳アレルギーに禁忌の薬は数が少ないので意外と覚えているものですが、今回のように慎重投与レベルだと忘れがちです。イナビル®、リレンザ®以外にも同じような注意事項の書かれた薬があるかもしれません。時間がある時は添付文書を隅々まで読むようにし、気づいたことがあったらまた記事にしたいと思います。

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