多発性骨髄腫 ①病態について

疾病・病態

平素より当薬局にお係の患者さんがしばらく来局されなくなり、先日久しぶりに大学病院の処方箋をもって来局されました。処方箋と一緒に病院から薬局に渡す用の情報提供書も持って来て下さり、入院中の原因となった疾患名、病院での治療内容、退院処方などが詳しく書いてありました。この患者さんは多発性骨髄腫とのことでした。今回の記事で多発性骨髄腫について紹介します。それなりのボリュームになりそうなので、次回の記事で治療薬について書きます。是非参考にしてもらいたいと思います。

まず初めに多発性骨髄腫について知りましょう。
多発性骨髄腫は形質細胞がガン化する疾患です(ガン化した形質細胞は骨髄腫細胞といいます)。形質細胞は抗体を作る働きをしていますが、骨髄腫細胞は抗原を攻撃する能力のない異常な抗体(M蛋白)を産生します。


このように骨髄腫細胞やM蛋白が増加することで様々な症状がでます。主な症状は以下のようなものがあります。


・骨病変
多発性骨髄腫で最も多い症状です。骨髄腫細胞は破骨細胞を活性化し、骨芽細胞を抑制するので骨が脆くなります。骨痛を伴うことが多く、特に背骨が脆くなり圧迫骨折を生じることもあります(その他にも大腿骨の骨折も多いです)。
骨吸収が活性化されることで骨中のカルシウムが流出し、高カルシウム血症を併発することがあります。

・貧血
形質細胞がガン化する影響で骨髄系幹細胞の分化が阻害され、結果として赤血球の産生が抑制されます。このため多発性骨髄腫患者の約30%が貧血を生じます。
血球の他に血小板の産生も低下するため、出血を伴いやすくなります。


・腎機能障害
過剰産生されたM蛋白が血液中に大量に存在することになります。その結果血液粘度が上昇し、細い血管の障害が生じます。腎臓には細い血管が多く存在するので腎機能が障害されることになります。腎臓では造血因子のエリスロポエチンを産生しているので、腎機能が障害されることで、エリスロポエチンの産生が低下し、貧血を悪化させることになります。

またM蛋白は分解されるとアミロイドという異常蛋白質になりますが、これは腎臓の他にも心臓、消化管、呼吸器などあらゆる臓器に沈着して臓器を障害します。これをアミロイドーシスといいます。


・免疫抑制
M蛋白が過剰産生されることで正常な抗体の産生が低下します。M蛋白が大量に産生されることで血液粘度し、白血球や抗体の血液中での働きが低下してしまいます。さらに前述したように骨髄腫細胞の増殖により、骨髄腫細胞の分化が抑制されるため、顆粒球の産生も低下してしまいます。これらの理由で免疫力の低下を生じ、感染症にかかりやすくなります。


今回の患者さんはいわゆる町の診療所に通っていましたが、健康診断で採血をした結果、貧血であることが判明しました。なかなか良くならないので大学病院に紹介状をもらい受診したところ、多発性骨髄腫であることが判明しました。多発性骨髄腫は初期は無症状であることが多く、その後倦怠感や動悸、息切れといった貧血症状から検査して発見されるケースが多いです。やはり定期的に健康診断などを受け、異常がないか確認しておくのが良いですね。
次回の記事では治療薬について解説します。少しばかりお待ち下さいませ。

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