カロナールが入荷しない 他剤への切り替えにおける注意点

調剤業務

現在ニュースでも報道されているように新型コロナウイルスによる需要急増によりカロナール®が不足しています。あゆみ製薬も限定出荷することに決定しています。カロナール細粒20%、シロップにいたっては出荷停止です。
カロナール錠 200、300、500 限定出荷のお知らせ
カロナール原末、カロナール坐剤小児用 50、100、200、400限定出荷のお知らせ
カロナール細粒 20% 出荷停止、カロナール細粒 50% 限定出荷のお知らせ
カロナールシロップ 2% 出荷停止のお知らせ
そのため各薬局とも頭を悩ませていると思われます。こんな時こそ代替案を考えて、素早く病院と連携を取らないといけません。今回の記事では他の解熱鎮痛剤への代替について考察したいと思います。

まず初めにカロナールについて確認しておきましょう。
有効成分のアセトアミノフェンは言うまでもありませんが、解熱鎮痛剤です。適応は以下のようになっています。

・下記の疾患並びに症状の鎮痛
頭痛、耳痛、症候性神経痛、腰痛症、筋肉痛、打撲痛、捻挫痛、月経痛、分娩後痛、がんによる疼痛、歯痛、歯科治療後の疼痛、変形性関節症
・下記疾患の解熱・鎮痛
急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)
・小児科領域における解熱・鎮痛

間違いなく熱や痛みに使っているので、他の解熱鎮痛剤に変えることで対応できます。
様々なケースで他剤への変更を検討してみましょう。

・小児への解熱鎮痛の場合
これはアセトアミノフェン製剤以外ほとんど無理でしょう。NSAIDsは基本的に大人からの使用になります。ただしイブプロフェン(ブルフェン®)とメフェナム酸(ポンタール®)は小児でも使用が可能です。

ブルフェン添付文書

イブプロフェンは痛み止めとしては5歳から使用可能です。ブルフェン®は100㎎錠、200㎎錠の他に顆粒20%があります。例えば5歳の子が1日200㎎、1日2回で服用するなら1回1g、1日2回になります。
風邪による解熱は基本は成人の使用になります。適宜増減が可能ですが、明確な基準もないので風邪による解熱への使用は控えたいところです。

メフェナム酸も小児への使用が可能です。ポンタール®はシロップ3.25%、散50%、細粒98.5%があります。いずれも小児への服用も可能でしょう。

ポンタールシロップ添付文書
ポンタール散・細粒添付文書

ポンタール®はシロップと散・細粒で適応が異なっています。ただ小児への適応はどちらも風邪による解熱鎮痛だけです。ここで1点注意があります。インフルエンザによる発熱には使用できません。インフルエンザによる発熱にメフェナム酸、ジクロフェナクを用いるとインフルエンザ脳炎・脳症を生じるリスクが高いからです。またアスピリンもライ症候群の原因になるので避けた方がいいですね。
全てのNSAIDsがインフルエンザ脳炎、脳症の原因となる可能性がありますが、イブプロフェンは比較的安全性が高く、処方する医師もいます。
総括してみれば小児にはやはりアセトアミノフェンが無難でしょう。どうしても在庫が無い時などは、イブプロフェンに切り替えですね。

・妊婦の場合
これもアセトアミノフェン一択でしょう。
NSAIDsは妊娠後期に禁忌です。NSAIDsはプロスタグランジンの産生を阻害します。プロスタグランジンは血管拡張作用を有します。そのためプロスタグランジンの産生が減ることにより、胎児の動脈管の早期閉鎖が起こります。これにより胎児死亡のリスクが症状します。
妊娠後期が禁忌ですが、前期中期もできれば使いたくはないでしょう。

・外科領域の鎮痛の場合
特に問題なければNSAIDsを用いるのがよいでしょう。アセトアミノフェンは鎮痛効果が弱く抗炎症効果はほとんどありません。頭痛になら効くでしょうが、関節痛などの抗炎症作用を必要とする場合にはNSAIDsの方がいいです。
しかし注意しなくてはならないことがあります。外科領域の鎮痛にNSAIDsを用いる場合は長期間使用することになります。この場合腎機能障害の原因になる可能性があります。

前述したようにNSAIDsはプロスタグランジンの産生を阻害します。その結果血管収縮が起こるわけですが、腎臓は非常に細い腎血管が沢山存在しているので、NSAIDsの長期使用は腎臓が虚血になり腎機能の低下につながります。

頓服使用にしてなるべく服用回数を少なくするのはもちろんとして、長期間使用するのでそもそも腎臓へ負担が少ない鎮痛剤がいいでしょう。様々なNSAIDsを調べたところ、セレコキシブ(セレコックス®)が良いと思います。

セレコックス添付文書

慢性腎臓病患者に用いても健常人とのAUCは大差がないとされています。これはセレコキシブはほとんどが肝代謝され、排泄は腎臓によるのではなく肝臓によることを意味します。事実インタビューフォームには以下のようなデータがあります。

セレコックス インタビューフォーム

外科でセレコキシブが頻用されるのは納得できます。一方肝臓に問題のある人はセレコキシブを用いない方が良いでしょう。

またアセトアミノフェンも重篤な肝障害のある患者には用いられません。アセトアミノフェンはほとんどが肝臓で代謝されます。
⇒60%程度がグルクロン酸抱合、35%程度が硫酸抱合、その他がCYPにより代謝され、代謝物は腎臓から排泄されます。

いずれのNSAIDs、アセトアミノフェンの両方とも「重篤な肝障害」「重篤な腎障害」には禁忌です。あくまで「重篤な」場合なので、軽度の場合に使用するのは問題ないでしょう。もちろん医師と相談のうえ決めることになりますが、個人的には肝障害の場合にはロキソプロフェンナトリウムでよいと思います。
アセトアミノフェン、セレコキシブ、ロキソプロフェンナトリウムのいずれも肝臓で代謝されます。アセトアミノフェン、セレコキシブはほとんどが肝臓で代謝されます。
ロキソプロフェンナトリウムはインタビューフォームの資料を参考にすると、投与8時間後にロキソプロフェンナトリウムが約21%、活性代謝物が約16%、グルクロン酸抱合されて尿中に排泄されます。ロキソプロフェンナトリウムの薬物動態のデータは十分にありませんが、アセトアミノフェン、セレコキシブに比べて、肝臓における影響は少ないでしょう。


・コロナの解熱に用いる場合
最後にコロナのケースです。コロナによる発熱にはほとんどがアセトアミノフェンが用いられています。結果としてカロナール®の需要過多により今回の騒動を招いたわけです。基本はアセトアミノフェンでしょうが、無くなってしまった時用の代替案は考えておく必要があります。
今のところアセトアミノフェンの代わりに用いるとしたらイブプロフェンでしょう。厚生労働省、欧州医薬品庁(EMA)、アメリカ食品医薬品局(FDA)、WHOのいずれも
「イブプロフェンが新型コロナウイルス感染の症状を悪化させる科学的な根拠はない」
としています。イブプロフェンなら比較的安全性は高そうです。

以上の情報をアセトアミノフェンから他剤へ代替する時の参考にしてもらえればと思います。
昨今は後発品の在庫不足から始まり、様々な薬の不足が続いています。正直嫌になるでしょうが、やれるだけのことはやらないといけません。常に代替案を考え、医師と適切な連携をとり、この状況を乗り切りましょう。

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