喘息の治療でアンブロキソールが普通錠から徐放錠に変更

疾病・病態

更新がだいぶ久しぶりになってしまいました💦仕事に家庭にスポーツの大会と非常に忙しかったので記事を書く暇がありませんでした。申し訳ございません。ようやく途中だった記事が書き終わったので公開したいと思います。
私は喘息もちです。普段は薬物治療をしていないですが、風邪をひくとそれが引き金になり喘息発作が起きたり、咳や痰が長期間続くようになります。そのため風邪を引いた後に処方してもらうことが多いです。普段処方される内容は以下のようなものです。

Rp(1)(般)アンブロキソール塩酸塩錠(15) 3錠
       1日3回  毎食後  30日分
Rp(2)シムビコートタービュヘイラー60吸入 2キット
       1回2吸入 1日2回

今回はいつもより痰が絡む感じがしたので、受診時にその旨を伝えたら処方が以下のように変わりました。

Rp(1)(般)アンブロキソール塩酸塩徐放錠(45) 1錠
       1日1回  夕食後  30日分
Rp(2)シムビコートタービュヘイラー60吸入 2キット
       1回2吸入 1日2回

アンブロキソールが普通錠から徐放錠に変わっただけです。普通の感覚なら単に服用回数を減らしただけと思うかもしれません。しかしこれには意味があります。今回の記事でこの理由について紹介しますので、病態を薬の特徴を復習しながら理解してもらえればと思います。

・気管支喘息について
まず初めに気管支喘息について確認しましょう。気管支喘息は気道が慢性的な炎症を生じています。炎症により気道が狭窄したり、過敏性が亢進したりします。その結果、咳・痰・喘鳴・呼吸困難などを生じます。

気管支喘息の特徴として夜間~早朝に症状が悪化しやすいことがあげられます。これの原因について見てみましょう。

ヒトの各臓器は交感神経と副交感神経によって支配されています。

交感神経は興奮時に優位に働き、その神経終末からは主にノルアドレナリンが分泌されます。
副交感神経はリラックスモードの際に優位に働き、その神経終末からは主にアセチルコリンが分泌されます。

ここで気管支平滑筋を見てみましょう。気管支平滑筋にはβ2受容体とM3受容体が発現しています。ノルアドレナリンがβ2受容体を刺激し、アセチルコリンはM3受容体を刺激します。β2受容体はGs共役型受容体であり、M3受容体はGq共役型受容体です。
つまり気管支平滑筋は交感神経により拡張し、副交感神経により収縮することになります。


また消化液、唾液、気道分泌液などの外分泌はM3受容体の刺激により促進されます。
※M3受容体の刺激により細胞内Ca²⁺濃度が上昇。Ca²が分泌顆粒のエキソサイトーシスを促進し、外分泌が起きる。
つまり副交感神経により外分泌は促進されます(汗腺だけは交感神経終末でアセチルコリンが分泌されるため、交感神経による分泌が促進されます)。
気道粘膜が炎症を起こしていると気道分泌が促進され、さらに気道が狭くなっているので痰が絡みやすくなるわけです。

ヒトは交感神経、副交感神経の両方に支配されていますが、夜間からは副交感神経が優位になります。そのため夜間~明け方は気道が狭くなり、痰も絡みやすくなるため、喘息症状が悪化しやすくなるわけですね。

さて気管支喘息が夜間~明け方に症状が悪化しやすくなる理由が分かったところで、今回の処方変更について見てみましょう。

・アンブロキソールの薬物動態
今まではアンブロキソール錠(15)が1日3回の服用でした。アンブロキソールの血中濃度は以下のような推移になります。

Tmaxは2時間少々であり、そこから血中濃度は低下し始め、8時間後には半分程度になります。つまり夕食後に服用しても明け方には効果は半減しているわけです。

これに対してアンブロキソール塩酸塩徐放(45)の血中濃度は以下のようになっています。

Tmaxは6時間前後であり、8時間経過後も高い血中濃度を維持しています(半減期は11時間前後です)。つまり夕食後に服用すれば就寝時や起床時に高い効果が期待できるわけです。添付文書にも以下のような記載があります。


以上のことから分かるように、アンブロキソールの徐放錠や徐放カプセルは、普通錠と比べて単に服用回数が減っただけではありません夕食後に服用することで気管支喘息の症状が一番悪化しやすい時間帯に最大限の効果を発揮できるように工夫された製剤です。私のように痰が絡むことが多い患者には積極的に使うべきと言えます。


今回の記事で気管支喘息の症状の夜間や明け方に悪化しやすい理由、アンブロキソールの徐放製剤が有効な理由が理解できたでしょうか?徐放製剤は数多く存在しますが、たんに服用回数が減ってコンプライアンスの向上につながるだけではありません。今回のように疾患によっては普通錠に比べて高い効果を発揮する場合もあります。それぞれの薬の薬物動態と、疾患の特徴を詳しく調べてみると新たな発見があるかもしれません。

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