2024年度 調剤報酬改定 調剤後薬剤管理指導料について

調剤報酬

5月もあっという間に終わりに近づき、いよいよ来月からは調剤報酬が改定されます。それなりに調剤報酬改定に関する記事を書いてきましたが、どうしても全てについて書くのは困難です💦しかしなるべく多く伝えたいので、急ぎでまだ伝えられていないものについて書きたいと思います。今回の記事では調剤後薬剤管理指導料について紹介します。

調剤後薬剤管理指導料は投薬後の患者の服薬サポートや体調変化などのチェックを行い、必要な情報を医師に提供することで、患者を継続的にサポートしていくためのものです。
2024年度の診療報酬改定で、調剤後薬剤管理指導加算から、調剤後薬剤管理指導となりました。調剤後薬剤管理指導加算は服用歴管理指導料に対する加算でしたが、今後は独立して算定できることになります。

今回の改定で調剤後薬剤管理指導料は1と2に分かれることになります。
まず1,2に共通する要件から見てみましょう。

・調剤後薬剤管理指導料1,2共通の項目
1,2の共通の項目に対象薬局と算定要件があり、これは以下のようになっています。

まず大前提として地域支援体制加算を算定している薬局しか算定できません。これは調剤後薬剤管理指導加算の時と同じですね。
通常のフォローアップと異なるのは、フォローアップの開始が医師の指示や患者(家族を含む)の求めに応じて始まる必要があります。また患者の求めによるものの場合は、医師の了承が必要となります。フォローアップにより患者の状態を把握した後、必要な情報を医師に文書で提供する必要があります。




つまり調剤後薬剤管理指導1,2はやり方は同じ、対象となる患者が異なることになります。
それではまず調剤後薬剤管理指導料1から見てみましょう。

・調剤後薬剤管理指導料1
これは従来の調剤後薬剤管理指導加算のケースと同じで、糖尿病患者に対して新たに糖尿病用剤が処方されたもの場合、または糖尿病用剤に係る処方内容の変更があった場合に、フォローアップをして必要な情報を医師にフィードバックした場合に算定できます。現行の施設基準と改定後の施設基準の違いは次のようになります。

調剤後薬剤管理指導加算は低血糖予防の観点から設けられた加算だったので、低血糖を起こすリスクの高いインスリン注射、SU剤に限定されていました。しかし今回の改定で糖尿病治療薬全てが対象になることになります。

従来の調剤後薬剤管理指導加算は低血糖の予防を目的としていましたが、調剤後薬剤管理指導料1になり糖尿病治療薬全てが対象となりました。このことから低血糖だけでなく、SGLT2阻害薬による脱水、メトホルミンによる乳酸アシドーシス、DPP4阻害薬による類天疱瘡などのチェックなども求められることが分かります。

・調剤後薬剤管理指導料2
今回の改定で新設されたもので、調剤後薬剤管理指導料の対象患者が糖尿病だけでなく、慢性心不全患者に拡大されました。これは慢性心不全患者の症状の悪化、再入院の回避につなげることを目的としています。対象患者は次のような患者です。

心疾患による入院の経験があり作用機序が異なる循環器官用薬等の複数の治療薬の処方を受けている慢性心不全の患者

単に慢性心不全患者であるだけはなく、心疾患での入院歴があること、作用機序が異なる複数の治療薬を使っていることが必要となります。
入院歴があるかは投薬時に患者自身に聞いてみれば分かるでしょう。また慢性心不全は1剤のみで治療をすることはほとんどありません。そのため入院歴がある慢性心不全患者ならほぼ全員が対象となるでしょう。
中医協の資料によれば慢性心不全のガイドライに記載されている治療薬には以下のようなものがあります。

ARBではカンデサルタン(12mgを除く)、ACE阻害薬ではエナラプリル、リシノプリルに適応があります。
β1遮断薬はビソプロロールに適応があります。またカルベジロールも慢性心不全に有効ですが、これはαβ遮断薬です。おそらくβ1遮断薬と同じ括りにしているのでしょう。
MRAはエプレレノンに適応があります。スピロノラクトンは”うっ血性心不全”に用いるので該当しません。
SGLT2阻害薬はフォシーガ®錠、ジャディアンス®錠(10mgのみ)に適応があります。
※参考記事 ⇒ ジャディアンス錠 慢性心不全での使用について
ARNIとはエンレスト®錠のことですね。

慢性心不全は糖尿病に比べて体調面でチェックすべき事も多く大変そうですね。これについては中医協の資料で慢性心不全患者に対する連携の取り組みイメージが紹介されています。

ここに紹介されているように心不全フォローアップシートを作っておくとよいでしょう。特にこれから調剤後薬剤管理指導料2の情報提供をするであろう医療機関とは心不全フォローアップシートを共有しておくと、医師が確認して欲しいことなどのすり合わせができて医師・薬剤師双方にとって扱いやすいものになることは間違いありません。


・算定点数について
調剤後薬剤管理指導料1,2ともに月に1回、60点となります。調剤後薬剤管理指導加算の月に1回、30点に比べて高めになっています。
また調剤後薬剤管理指導加算はかかりつけ薬剤師指導料を算定している患者には算定できませんでした。しかし今回の調剤後薬剤管理指導料は、かかりつけ薬剤師指導料と併用算定可能になります。このことから調剤後のフォローアップ、医師へのフィードバックがいかに重要視されているかが分かるでしょう。
※今回の改定で吸入薬指導加算もかかりつけ薬剤師指導料と併用算定が可能になります。


以上が調剤後薬剤管理指導料についての説明です。
投薬後のフォローアップに高い点数が設定されていること、対象となる疾患が増えたことから考察すると、薬剤師は投薬後も患者と関わっていくことが求められていることが分かります。フォローアップは手間もかかり、なかなか十分に行えないこともあります。電話だけでなく電子お薬手帳やSNS等のつながりを活用し、フォローアップを効率的に行い、定期的に医師に情報提供できることを目指さなくてはなりません。

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