腸間膜静脈硬化症 原因となる漢方

疾病・病態

先日うちの薬局でツムラ加味逍遥散を1日3回でずっと服用していた患者さんが、ある時から1日2回に変更になりました。この患者さんは更年期障害で使っていましたが、症状が軽くなったのか聞いたところ、”あまり長い間飲んでいると副作用で腹部に異常が出ることがあるから”だと言われたとの事でした。おそらくこれは腸間膜静脈硬化症のことを言っているのでしょう。今回の記事では腸間膜静脈硬化症について解説します。普段何気なく漢方薬を調剤していても、注意が必要なことを再認識してもらえればと思います。


腸間膜静脈硬化症は静脈硬化性大腸炎ともいい、大腸壁から腸間膜の静脈に石灰化が生じてしまう疾患です。静脈の石灰化が生じると血流障害が起こり、腸管の慢性的な虚血を生じます。

腸間静脈硬化症の原因は不明ですが、現在のところ漢方に含まれるサンシシが原因物質となっている説が有力です。サンシシはイリドイド配糖体のゲニポシドを含んでおり、これが腸内細菌により加水分解されるとゲニピンという刺激物質になります。このゲニピンが大腸粘膜から吸収されることで、静脈血管壁を肥厚、損傷し、石灰化すると考えられています。

静脈血流障害により腹痛、下痢、悪心嘔吐、血便などの症状を生じます(最も多いのは腹痛です)。ただし無症状であることも多いです。重篤な場合はイレウスを生じることもあります。
その他に内視鏡検査では大腸粘膜の色素変化、びらん、潰瘍などを認めます。

なおゲニピンは上行結腸から横行結腸で吸収されやすいので、前述した腹痛の症状はほとんどが右側で生じます。


治療については原因となる漢方薬の中止が第一になります。多くの場合はこれで改善します。その他にはバイアスピリン、ワーファリンといった抗血小板薬や抗凝固薬で改善したとの報告があります。静脈の血流障害が原因なわけですから、これは理にかなっていると言えるでしょう。イレウスを起こしている場合は手術で腸管を切除することもあります。
一般的には漢方薬の中止で改善することが多く、予後も良好です。

ここまでで腸間膜静脈硬化症についてある程度分かったと思います。それでは原因となる漢方薬は何があるか見てみましょう。
前述したようにサンシシを含有している漢方となります。サンシシ含有の漢方薬、サンシシの含有量は以下のようになります。


いずれの漢方にも使用上の注意に以下のような記載があります。

この記載を見て分かるように、腸間膜静脈硬化症は一般的にサンシシを含有した漢方薬を5年以上といった長期使用により生じるケースが多いです。なお腸間膜静脈硬化症の原因として圧倒的に多いのは加味逍遥散です。冒頭で紹介した患者さんも加味逍遥散を長期で使っていたので、医師の判断により1日3回から2回へ減薬となりました。サンシシの服用量と腸間膜静脈硬化症との因果関係があるのかは不明ですが、更年期障害が落ち着いているなら、腸間膜静脈硬化症のリスクを少しでも減らすために減量するのは適切な方法かもしれません。

前述したように腸間膜静脈硬化症は漢方を長期に渡って服用することで発症することが多いです。そのため普段は何気なく使っていたのが、ある時から腹痛や下痢などがでやすくなったりします。ずっと使っている薬だと、副作用だと気付かないかもしれません。そのため長期でサンシシを含有した漢方を服用中の患者さんには、それとなく腹痛や下痢、悪心などがないか聞いてあげるのがいいでしょう。漢方薬を長期使用している人への投薬の際に意識してみようと思います。

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