最近は新型コロナウイルスの影響でみんなマスクをしています。
しかし知人でマスクをつけられない人がいました。原因は三叉神経痛です。薬局では三叉神経痛患者にでテグレトール®を調剤することが多いので、皆さん病名についてはご存じだと思います。しかし詳しい病態と症状について詳しく知っている人はあまりいないのではないでしょうか?今回は三叉神経痛について解説します。
まずは三叉神経についておさらいしましょう。
三叉神経は顔の感覚をつかさどる神経であり、脳幹から顔に向かって伸びています。その名の通り3つに枝分かれしており、枝分かれしたそれぞれの神経が異なる領域を支配しています。
おもに第1枝が額、第2枝が頬、第3枝が下顎を支配してます。
三叉神経痛の原因で最も多いのは血管による神経の圧迫です。
これは脳幹からでてすぐの箇所で起きることが多いです。神経が血管に圧迫されることにより刺激され、顔の外部からのわずかな刺激を痛みとして脳に伝えてしまいます。
三叉神経痛の痛みの特徴は以下のようになっています。
・痛みが非常に強い
・一瞬の痛みである(数秒程度)
・顔の片側に起きる
・顔の外部刺激に誘発されて生じる
(洗顔、髭剃り、歯磨き、咀嚼など)
・痛みを誘発する場所(トリガーゾーン)がある
90%以上が血管による三叉神経の圧迫で起きる特発性三叉神経痛ですが、脳腫瘍などが同様に圧迫する二次性三叉神経痛もあります。
次に治療法について見てみましょう。
三叉神経痛の治療は以下のものがあります。
・薬物療法
対症療法にすぎませんが、最も一般的に行われていますね。
カルバマゼピン(テグレトール®)が最も多く使われていますが、近年ではプレガバリン(リリカ®)も使われています。カルバマゼピンはNaチャネルを阻害し、プレガバリンは電位依存性Caチャネルα2δサブユニットに結合し阻害します。どちらもグルタミン酸作動性神経を抑制し、神経の興奮を抑制します。
どちらも副作用としてめまいやふらつき、傾眠があるので注意が必要ですね。
テグレトール®とリリカ®の併用で効果の増強が期待できますが、同様に副作用も強くなるため、慎重な判断が必要です。
・微小血管減圧術
三叉神経痛の根本的な治療です。耳の後ろに穴をあけ、そこから三叉神経を圧迫してる血管を離します。多くの患者さんが手術直後から痛みが消失します(まれに徐々に改善するケースもあり)。ただし術後の合併症として顔面痙攣が出ることがあります。
・ガンマナイフ
放射線(ガンマ線)で三叉神経を照射し、痛みを感じにくくする方法です。神経を圧迫した血管はそのままにし、三叉神経も痛みを感じにくくする程度に壊し、完全に壊すわけではありません。根治療法ではないので術後も内服治療が必要なケースが多く、顔面麻痺などの合併症もあるため、推奨しない医師も多いです。手術ができない患者さんには適した方法といえます。
・神経ブロック療法
ブロック注射により三叉神経の働きを麻痺させ、直接痛みを取る方法です。神経節のあたりに麻酔薬を注射します。数ヶ月おきに注射することにより三叉神経痛をコントロールし続けることが可能です。
以上、三叉神経痛についてまとめてみました。
私自身は三叉神経痛になったことはないので、痛みをうまく説明することはできませんが、最もひどい痛みと言われ、痛みに耐えきれずに自殺する人もいたのも事実です。
このような病気はなるべく多くの人に周知され、マスクをつけられない人にも理解のある世の中になって欲しいものです。
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