排尿障害時における対処法

その他

先日患者さんに教えてもらったことがあります。薬物治療ではないので薬剤師の専門外の内容ですが、いざとなった時のために知っておいた方がいいので、この記事で紹介したいと思います。

うちで高血圧と関節リウマチの薬を調剤していた患者さんに前立腺癌が発見されました。しばらくは薬物療法を行っていたのですが、治療のかいもあって癌細胞が非常に小さくなりました。医師に「癌も小さくなっていることだし、今のうちに睾丸を摘出してはどうか」と言われ、睾丸の摘出手術を受けることになりました。
前立腺癌の手術には前立腺と睾丸(精巣)を摘出します。前立腺癌の原因となるアンドロゲンの大半は精巣で作られます。そのため精巣を取り除くことによって癌細胞の増殖が抑えられるわけですね。
しかし精巣摘出後、頻尿になったようです。前立腺摘出手術後のほとんどの患者さんが頻尿・尿漏れを経験します。これは前立腺摘出の際に尿道括約筋も一緒に切除するためですね。

この患者さんは夜中に何度もトイレに起きなくてはならなくなり、癌の手術をした病院からベオーバ®錠が処方されました。他薬局で調剤されたようで、お薬手帳にも記載されていました。しかし一向に改善しないので、ベオーバ®錠がベタニス®カプセル(25)に変更になりました。すると今度は尿がでない事態になってしまったようです。
※ベオーバ®とベタニス®のどちらも重大な副作用に尿閉の記載がありますが、どちらで起きやすいかの比較試験はありませんでした。ベタニス®の方が尿閉になりやすいわけではありませんのでご理解ください。

どうしても尿が出ないので病院に連絡しましたが、大病院なので主治医と連絡は取ることが出来ず、「受診してください」との返答。薬をもらった薬局に連絡しても「受診してください」との返答でした。解答としては間違っていません。直接見てもらうのが一番ですからね。しかし高齢のため体力的にも受診はキツく、とにかく早く何とかしたいと思ったようです。
この患者さんの娘さんは看護師さんでした。そのため娘さんに連絡をしたところ、「シャワーでお湯を陰部にかければ大丈夫」とアドバイスしれくれたようでした。
言われた通りにまずはお風呂に行き、シャワーでお湯を陰部にかけ続けました。すると尿意を催し、排尿できたとのことです。今まで排尿できなかった反動か分かりませんが、その後は1時間おきにトイレに行きたくなってしまいましたが、排尿困難が続くよりはマシでしょう。とりあえず陰部をお湯で刺激しただけで排尿障害は改善されました。

この事から分かるのはお湯を陰部にあてることで膀胱が刺激され、尿意を催すことです。理論的に説明するなら、お湯で暖められることによって副交感神経が刺激され、膀胱平滑筋が収縮し、排尿につながったのでしょう。
※膀胱平滑筋にはM3受容体が分布。副交感神経から放出されるアセチルコリンがM3受容体を刺激し、平滑筋が収縮。


全員に効果があるか分かりませんが、排尿困難になった時に手軽にできる対処方法です。患者さんがこれを教えてくれて、「他の患者さんにも是非教えてあげてよ!」と言っていたので、この場を使って紹介させて頂きました。
排尿障害を起こす疾患で代表的なものは前立腺肥大症ですが、治療を受けていない人も含めると80歳以上の9割の人が罹患していると言われています。つまりそれだけ排尿障害を起こす可能性のある人がいるということです。薬物治療以外にも手軽にできる対処法を患者さんに教えてあげられるようにしましょう。

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ
にほんブログ村

記事が良かったと思ったらランキングの応援をお願いします。

301 Moved Permanently

サブブログもよろしくお願いします。

1

コメント

タイトルとURLをコピーしました