来月から2026年度調剤報酬が開始します。多くの薬局が地域支援・医薬品供給対応体制加算を算定すると思いますが、地域支援・医薬品供給対応体制加算2~5において、「地域医療への貢献に係る十分な体制」が整備されている必要あります。
「地域医療への貢献に係る十分な体制」の”(10)地域医療に関連する取組の実施のウ”において「緊急避妊薬の備蓄、調剤又は販売を含む女性の健康に係る対応」が明記されています。つまり地域支援・医薬品供給対応体制加算2~5を算定するには緊急避妊薬を取り扱っていることが必須となります。緊急避妊薬の取り扱うに伴ってe-ラーニングによる研修や厚生労働省への登録など様々なことをしなくてはなりません。うっかり登録漏れがあったり、対応する薬剤師を間違えると問題になりますので、今回の記事で緊急避妊薬を取り扱う場合に何をすべきか紹介します。皆様の薬局では登録が済んでいるか、実際に取り扱う場合はどうすべきか確認してもらえればと思います。
緊急避妊薬を取り扱う場合、対象となる患者は以下の3つのケースが想定されます。
①産婦人科を対面受診して、処方箋が発行されるケース
②オンライン診療を受けて、処方箋が発行されるケース
③要指導医薬品である緊急避妊薬を購入しに来るケース
”緊急避妊薬の備蓄、調剤又は販売を含む女性の健康に係る対応”には上記の①~③のいずれのケースでも対応できなくてはなりません。それぞれの場合について見てみましょう。
①対面受診による処方箋の場合
対面受診による処方箋で緊急避妊薬を取り扱う場合は、薬剤師であれば誰でも可能です。自費処方箋になるので保険薬剤師である必要もありません。
②オンライン診療の処方箋の場合
日本薬剤師研修センター等が実施する、「緊急避妊薬の調剤に関するeラーニング研修」を事前に修了している必要があります。
※e-ラーニング研修を修了すると、約2週間後に登録住所に研修修了証が郵送されてきます。
研修が終了したら都道府県薬剤師会と厚生労働省の両方に登録しなければなりません。
緊急避妊薬を取り扱うにあたって、産婦人科医との連携が求められます。しかし実際はすぐ近くに産婦人科が無い場合は難しいでしょう。そのため各都道府県の薬剤師会が作成している緊急避妊薬販売薬局等名簿(連携参加薬局等名簿)に登録が必要となります。
この名簿は都道府県の医師会と共有されるため、産婦人科と連携体制が取れている薬局であるということになります。この登録時に修了証に記載されている「発行番号(修了番号)」が必要となります。
・多くの都道府県薬剤師会ではHP上の専用フォームから申請できます。
(ex)東京都薬剤師会 ⇒ 緊急避妊薬販売薬局等名簿掲載への申し込みフォーム
・千葉県など一部では指定のエクセルファイルに必要事項を入力して、メール送信するなど個別の方法をとっています。
(ex)千葉県薬剤師会 ⇒ 緊急避妊薬(OTC)を販売する薬局・店舗販売業の店舗における近隣の産婦人科医等との連携体制構築(連携参加薬局等名簿)
都道府県薬剤師会の登録が終わったら厚生労働省の登録を行います。
厚生労働省の専用フォーム(Forms)の【調剤】「オンライン診療に係る緊急避妊薬の調剤が対応可能な薬局及び薬剤師の一覧」への登録申請を行う必要があります。ここでも修了証に記載されている「発行番号(修了番号)」が必要となります。
前述した都道府県薬剤師会の緊急避妊薬販売薬局等名簿(連携参加薬局等名簿)に登録した場合は、産婦人科医との連携では「都道府県薬剤師会経由での連携」を選択しましょう。
実際に調剤を開始できるのは、一覧に名前が掲載されてからとなります。名前が掲載されているかは「オンライン診療に係る緊急避妊薬の調剤が対応可能な薬局及び薬剤師の一覧」で確認しましょう。
③要指導医薬品である緊急避妊薬を販売する場合
緊急避妊薬の販売を行う場合もオンライン診療の処方箋の場合と同様に、日本薬剤師研修センター等が実施する「緊急避妊薬の調剤に関するeラーニング研修」を事前に修了している必要があります。
またオンライン診療の処方箋を取り扱う場合と同様に、各都道府県薬剤師会が作成している緊急避妊薬販売薬局等名簿(連携参加薬局等名簿)に登録している必要があります。
さらに薬局が「緊急避妊薬を取り扱う体制が整った薬局」として厚生労働省に登録されている必要があります。
まずは実際に登録されているかの確認しましょう。厚生労働省のHPの「要指導医薬品である緊急避妊薬の販売が可能な薬局等の一覧」のページで、PDFまたはエクセルファイルで確認ができます。これに自薬局が登録されていなかった場合は、管理薬剤師が厚生労働省の専用フォーム(Forms)の「(薬局等管理者用)緊急避妊薬販売可能薬局等一覧への掲載のための薬局等番号取得申請フォーム」から申請を行い、薬局番号を取得する必要があります。
※「要指導医薬品である緊急避妊薬の販売が可能な薬局等の一覧」の一番左の列が薬局番号です。
薬局番号を取得したら、薬剤師個人が「(薬剤師用)緊急避妊薬販売可能薬局等一覧への登録・削除申請フォーム」から登録を行います。
※この時に薬剤師名簿登録番号、eラーニングの研修修了番号、そして薬局等番号が必要になります。
実際に販売を開始できるのは、一覧に名前が掲載されてからとなります。
実際に登録されたかは「要指導医薬品である緊急避妊薬の販売が可能な薬局等の一覧」のページ内にあるPDFまたはエクセルファイルで自薬局の部分を確認しましょう。自分の研修終了番号が書かれていれば登録完了です。
※「オンライン診療に係る緊急避妊薬の調剤が対応可能な薬局及び薬剤師の一覧」の場合は薬剤師名が載りますが、要指導医薬品を販売できる薬剤師の場合は名前は掲載されず、研修修了番号のみです。
ここまでで緊急避妊薬を取り扱うケース、ぞれぞれのケースで薬局・薬剤師は事前に何をしなくてはならないか分かったでしょうか?
上記の①~③のいずれのケースでも共通して薬局がやるべきことは以下のことになります。
・プライバシー対策
緊急避妊薬を使用するのは非常にデリケートな問題なので、患者のプライバシー保護が求められます。薬局はパーティションで仕切られたカウンターや個室の用意が必要となります。
・面前服用の徹底
緊急避妊薬は調剤、販売のいずれのケースでも研修修了薬剤師の面前で服用させることが必須となります。性交後72時間以内という限られた時間であること、転売・悪用・強要といったリスクを防ぐといった観点から当然といえます。その場で服用してもらうので、薬局は服用するための飲料水の確保が必須となります。
・事後受診または検査薬の使用を指導
緊急避妊薬は100%避妊できるわけではありません。そのため服用から3週間後に産婦人科を受診、または妊娠検査薬を使って、妊娠していないか確認する必要があります。
受精卵が出来た場合、7~10日ほどで子宮内膜に着床します(妊娠が成立)。着床すると胎盤の元となる絨毛細胞からhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)という妊娠特有のホルモンが作られ、尿中に分泌されます。
性交から3週間ほど経過しないとhCGの量が十分ではなく、実際には妊娠していても陽性反応がでない偽陰性になってしまいます。そのため緊急避妊薬服用後、3週間してから妊娠の有無を確認するわけです。
ここまでで緊急避妊薬を調剤または販売する際の注意点が分かったと思います。緊急避妊薬の販売は要指導医薬品です。そのため薬剤師の対面販売が義務であり、書面による情報提供・販売記録の保管が必須となります(2年間保存)。書面による情報提供(チェックシート)はどのようなものか確認しましょう。
・販売におけるチェックシート
販売におけるチェックシートは公的なものは存在しません。そのためメーカーの作成したチェックシートを使うのがよいでしょう。
要指導医薬品として販売されている緊急避妊薬はノルレボ®とレソエル®72があります。
それぞれのチェックシートのリンクを貼っておきますので、事前に印刷して薬局に備え付けておきましょう。
ノルレボ®服用前確認チェックシート
レソエル®72適正使用のためのチェックシート
基本的に書かれていることはほとんど同じなので、重要な箇所を確認しましょう。
①本人確認
販売できるのは服用する本人のみです。代理人に対して販売することは出来ません。
②性交後72時間以内である
過去の記事(緊急避妊薬 作用機序から使い方まで詳しく)で紹介したように、緊急避妊薬は性交後72時間以内に服用しないといけません。72時間を超えていた場合は医療機関の受診をする必要があります。
※120時間以内であれば銅付加IUD(避妊リング)を挿入を対応してくれる医療機関があります。また日本では未承認の緊急避妊薬のエラワンを取り扱っている医療機関もあります。(エラワンも120時間以内で有効です)
③販売できるのは研修修了薬剤師のみ
研修修了をしていない薬剤師は販売できません。その他の薬剤師が販売すると行政処分の対象となるので注意しましょう。
④既往歴・併用薬の確認
ノルレボ®、レソエル®72のどちらにも以下の場合は、研修修了薬剤師に相談と書かれています。
・「心臓病」の診断を受けている
・「腎臓病」の診断を受けている
・食物や薬の吸収を妨げる重度の「消化器疾患」の診断を受けている
緊急避妊薬はレボノゲストレルであり黄体ホルモンです。黄体ホルモンはミネラルコルチコイド受容体を遮断します。その結果アルドステロンの作用が阻害されます。すると体内のフィードバック機構によりアルドステロンの分泌が促進されます。そのため心臓や腎臓に問題がある場合は注意が必要となるのですね。
”食物や薬の吸収を妨げる重度の「消化器疾患」の診断を受けている”場合は、レボノゲストレルが十分に吸収できす、避妊効果が得られない可能性があります。
これらは医療用医薬品でいうところの慎重投与に相当します。禁忌というわけではないので、薬剤師側で判断しなくてはなりません。
また肝臓病の診断を受けている場合は販売できません。これは医療用医薬品でいうところの禁忌に相当します。
レボノゲストレルは肝代型であり、CYP3A4で代謝されます。肝臓病だとCYP3A4の産生が低下してしまいレボノゲストレルの代謝能が低下してしまいます。そのため肝臓病では使えないわけですね。
”セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)を含む食品を摂取している”場合は研修修了薬剤師に相談とされています。セント・ジョーンズ・ワートはCYP3A4とP糖タンパク質に対して強い酵素誘導作用をもちます。 前述したようにレボノゲストレルはCYP3A4で代謝され、またP糖タンパクは小腸粘膜に多く存在し、異物を細胞外へ追い出すトランスポーターです。そのためレボノゲストレルの分解や排出が促進され、十分な避妊効果が得られない恐れがあるわけですね。
※セントジョーンズワートにより過剰に産生されたCYP3A4とP糖タンパクは2週間程度残ります。そのため緊急避妊薬を服用する数日前に服用を中止していたとしても、避けた方が無難です。
今回の記事で緊急避妊薬の取り扱いについて理解できたでしょうか?
手続きが複雑で登録までに時間もかかり、現場では混乱も多かったかもしれません。またこれから地域支援・医薬品供給対応体制加算2~5を算定する薬局もあるでしょう。その時にこの記事を参考にしてくれれば幸いです。
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