2025年9月19日に片頭痛治療薬のナルティーク®OD錠の製造販売が承認されました。初の経口CGPR受容体拮抗薬であり、また片頭痛発作の発生抑制だけでなく、発作時の治療薬としても使用可能です。個人的には片頭痛治療薬の革命だと思っています。今回の記事で紹介しますので、是非ご覧になって下さい。
まず初めに片頭痛の起こるメカニズムについて復習しましょう。
片頭痛が起こる原因として考えられているのが、血管説と三叉神経説です。
・血管説
脳血管の血小板から何らかの原因でセロトニンが大量に放出されます。脳血管には5-HT1B受容体が発現しているので、このセロトニン刺激で血管が収縮します。血小板から大量にセロトニンが放出された結果、セロトニンが枯渇します。すると今度は脳血管の拡張が起こり、血管周辺組織を圧迫し頭痛が生じます。
・三叉神経説
脳血管には三叉神経が分布しています。光刺激や気候変動などが原因となり、三叉神経からCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)やサブスタンスPが分泌されます。CGRP受容体はGs共役型受容体なので、三叉神経から分泌されたCGRPが血管のCGRP受容体を刺激することによって、血管拡張が生じます。
CGRPにより血管拡張が生じることによって血管透過性が亢進し、血管内成分の血管外への漏出します。CGRPは肥満細胞から炎症性サイトカインを放出する働きもあるので、さらに三叉神経が刺激されます。(神経原性炎症)
神経原性炎症を生じた三叉神経は大脳皮質に痛みのシグナルを伝達し、また侵害受容器へのニューロンを刺激し、痛みを増強します。
このように片頭痛の発生には血管説と三叉神経説が考えられていますが、現在有力とされているのは三叉神経説です。
片頭痛の起きるメカニズムについて再確認できたところで、今回の記事で紹介しているナルティーク®OD錠について見てみましょう。
・作用機序について
ナルティーク®OD錠の有効成分はリメゲパントといい、これはCGRP受容体拮抗薬です。前述したようにCGRPは受容体に結合することで血管拡張、血管透過性亢進、肥満細胞からの炎症性サイトカインの放出を行います。このCGRP受容体を遮断することで片頭痛を抑えられることは容易に想像できる思います。
・効能、効果および用法、用量について
「片頭痛発作の急性期治療及び発症抑制」となっています。これが最大の特徴でしょう。
ナルティーク®OD錠は片頭痛の発作時だけでなく、発症抑制にも使えます。
用法・用量については発作時には1回1錠、発症抑制には1錠を隔日投与します。
「用法及び用量に関連する注意」に”1日あたりの総投与量はリメゲパントとして75mgを超えないこと”と記載されています。ナルティーク®OD錠の規格は75mgなので、発作時に効果不十分でも1日1錠以上は使えません。
トリプタン系薬物は通常は2時間(アマージ®錠は4時間)空ければもう1錠使えますが、ナルティーク®OD錠は追加は不可です。ナルティーク®OD錠を服用していても片頭痛発作が起きた場合は、トリプタン系薬物などを使うしかないでしょう。
・禁忌について
レイボー®錠と同様に禁忌は「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」だけです。
トプタン系薬物には多くの禁忌があります。
(ex)レルパックス®錠の禁忌
2.2~2.5に関してはいずれも血管収縮作用によるものです。
リメゲパントもラミジスタンもCGPRの働きを阻害することで片頭痛に対して効果を発揮します。
CGRPは血管を拡張させる作用をもつのですが、これを阻害しても血管が収縮するわけではありません。そのためトリプタン系のような強い血管収縮作用による副作用が無く、禁忌もほとんどないわけですね。
・薬物動態について
吸収については高脂肪食摂取後の投与は、空腹時と比較してCmax、AUCはともに低下したとされています。用法及び用量の項目に食事の記載はありませんが、なるべく空腹時の方が効きそうですね。
代謝は主にCYP3A4(僅かにCYP2C9)により代謝されます。そのためCYP3A4の阻害剤と誘導剤と相互作用を生じます。しかし併用禁忌ではありません。強い又は中等度のCYP阻害剤、CYP誘導剤とはいずれも併用注意です。
・副作用について
重大な副作用には過敏症がありますがこれは頻度不明です。
1%以上の副作用は便秘のみです。0.5~1%未満の副作用に浮動性めまいがあります。同じCGRP関連薬のレイボー®錠では浮動性めまいが18.8%もあることから比べると頻度は非常に低く、全体的に副作用が少なく使いやすいと言えるでしょう。
今回の記事でナルティーク®OD錠について理解できたでしょうか?
CGPR関連薬はいずれも注射剤でした。それが今回より経口薬が登場することになります。さらに発作時と予防のどちらにも有効です。実際の効果は使ってみるまでは分かりませんが、使いやすさは今までとは比較にならないでしょう。現在は片頭痛の治療薬はトリプタン系薬物は主流ですが、今後はこのように発作時と予防の両方に有効な治療薬がどんどん登場すると嬉しいですね。
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