痛風発作中に高尿酸血症治療薬を使うか 病態と一緒に確認

疾病・病態

過去に記事でもお伝えしましたが、うちの薬局では新卒薬剤師が入社し、現在は色々教えている最中です。特に医療安全については力をいれています。そろそろ投薬を行い患者の前に出してもいいと思っていますが、その前にあらゆる事態を想定した投薬の練習も行っています。ちょうど先日痛風発作を起こした患者さんがいたので、以下のケースではそれぞれ定時薬をどうすべきか答えさせました。

(ex)平素はアロプリノール(100) 1錠 朝食後に処方の患者
   痛風発作が起きたのでロキソプロフェンナトリウム(60)が頓服処方

ケース①
アロプリノール(100)を毎日正しく飲んでいるが痛風発作が起きてしまった。
ケース②
コンプライアンスが悪く、普段からアロプリノール(100)をほとんど飲んでいない。そのため痛風発作が起きてしまった。

なかなか優秀な子なのでちゃんと答えられました。
ケース①ではアロプリノール(100)は飲み続けます。ケース②では痛風発作がおさまるまではアロプリノール(100)は中止します。
しかしなぜそうすべきかまでは理解していませんでした。今回の記事で痛風発作のメカニズムを紹介するので、なぜこうすべきかまで説明できるようにして欲しいです。

・痛風発作は何が原因で起きるか
まず初めに痛風発作は血液中に溶けきれず析出した尿酸結晶が原因で生じます
関節腔内に析出した尿酸結晶の一部が遊離すると、遊離した尿酸結晶はマクロファージに異物として認識され、貪食されます。マクロファージは尿酸結晶を貪食した際にミトコンドリアが損傷されてしまい、炎症反応を惹起するインフラマソームという細胞内タンパク質複合体が活性化されます。
このインフラマソームによってIL-8、IL-1βなどの炎症性サイトカインが放出されます。IL-8、IL-1βは好中球を遊走、活性化します。好中球は尿酸結晶を貪食すると、好中球自身が死滅してしまいます。その際にサイトカイン、ケモカイン、プロスタグランジンなどの炎症性物質や活性酸素を放出します。
これらの炎症性物質や活性酸素によって血管透過性の亢進、疼痛、発赤、腫脹、組織破壊などが生じます。これが痛風発作です。





ここまでで痛風発作のメカニズムは分かったでしょうか?
ここで記事の冒頭で紹介した、痛風発作中の高尿酸血症の治療をどうすべきか見てみましょう。

・痛風発作中に尿酸値を下げる治療をした場合
痛風発作が生じた時点で関節腔内には析出した尿酸結晶が沈着しています。この時に急激に尿酸値を低下させると沈着していた尿酸結晶の結合が緩くなり、結晶の脱落が起きてしまいます。関節腔内に遊離した尿酸結晶はマクロファージや好中球に貪食されやすくなり、結果として痛風発作が悪化することがあります。

今までコンプライアンス不良だったのに、痛風発作が起きたことにより慌てて高尿酸血症治療薬を真面目に服用するようなケースが該当しますね。

・痛風発作中に尿酸値が急上昇した場合
尿酸値が急上昇すると血中の尿酸の結晶化が促進します。また既に沈着した尿酸結晶が剝がれやすくなることもあります。そのため痛風発作は悪化します。

真面目に高尿酸血症治療薬を服用していたのに、発作中に飲むのをやめてしまったり、あるいは飲酒、プリン体を多く含む食事の過剰摂取、ストレス、無酸素運動などが該当します。

以上のことから分かるように、大切なのは「痛風発作中は尿酸値を変動させない」ことです。前述したように痛風発作中は尿酸値を上げても下げても、痛みが増悪する可能性があります。
そのため高尿酸血症治療薬を処方されている患者が痛風発作を起こした場合は、治療薬を正しく服用していたかを確認するよう教えました。
正しく飲んでいるならそのまま継続してもらい、コンプライアンス不良でほとんど飲んでいないなら、痛風発作がおさまるまで高尿酸血症治療薬は服用しないようにしないといけません。
痛風発作が起きた場合、たいていはNSAIDsや湿布が処方されるだけですが、普段の定時処方をどうするかまで説明する必要があるでしょう。

服薬指導で必要なのは処方されて薬に対する説明はもちろんですが、その患者の疾患とその特徴、さらには生活背景まで把握しておく必要があるといえます。基本的なことを教えている最中ですが、おかげで初心に返ることができています。今後は薬局全体を巻き込んで、疾患の特徴、患者の生活背景なども把握していく方針です。

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