2024年度 調剤報酬改定 特定薬剤管理指導加算3について

調剤報酬

前回の記事で特定薬剤管理指導加算1,2について説明しました。今回の記事では続きの3についてです。新しく覚えることが非常に多く、ボリュームも多いので、じっくり読んでいただくと幸いです。


特定薬剤管理指導加算1,2は別名”ハイリスク薬加算”とも言われていますが、3についてはハイリスク薬加算とはいいません。内容としては”重点的に丁寧な説明が必要となる場合の評価”とされています。
算定要件として、処方された医薬品について薬剤師が患者に重点的な服薬指導が必要と認め必要な説明、指導を行った場合に、算定できます。算定できるのは患者1人につき、最初に処方された1回に限り5点です。具体的な算定要件は以下のものです。

これを詳しく見てみましょう。

・算定要件イについて
”製造販売業者が作成した当該医薬品に係る安全管理等に関する資料”に該当するのはRMP資材です。RMPとは「Risk Management Plan:医薬品リスク管理計画」のことをいい、「医薬品の開発から市販後まで一貫したリスク管理をひとつの文書にまとめ、リスク低減の取り組みとして、定期的に確実に評価が行われるようにするもの」とされています。
簡単に言うと製造過程で分かったリスクを市販後にあらかじめ情報提供したり、市販後に新たにリスクの情報を集めたり、評価するためのものです。
RMPが提出されている医薬品はこちらで確認できます ⇒ PMDA RMP提出品目一覧
リンク先から患者向けRMP資材を印刷して、服薬指導の際に用いるようにしましょう。

また緊急安全性情報(イエローレター)、安全性速報(ブルーレター)も該当します。
緊急安全性情報とは、発売中の医薬品や医療機器に予期せぬ重篤な副作用や不具合があった場合など、緊急に安全対策上の措置をとる必要があると判断された時に、医療関係者や患者に対し配布される文書のことです。
※記憶に新しいものとしてはタミフル®服用後の異常行動によるものがりますね。

安全性速報とは、一般的な使用上の注意の改訂情報よりも迅速な安全対策措置をとる必要があると判断された場合に配布される文書のことです。(使用制限をかける程ではないけど、注意喚起すべきものといったイメージです)
※記憶に新しいものとしてはラミクタール®錠の重篤な皮膚障害によるものがありますね。

RMP資材かイエローレター、ブルーレターのいずれかを用いて適正な服薬指導が出来れば算定できることになります。

・算定要件ロについて
算定要件ロに該当する1つ目のケースとしては、以下のものです。

「後発医薬品が存在する先発医薬品であって、一般名処方又は銘柄名処方された医薬品について、選定療養の対象となる先発医薬品を選択しようとする患者に対して説明を行った場合」

ここいう選定療養とは、患者が希望する保険適用を前提としない医療のことです。通常保険診療と自費診療の混合診療は禁止されています。しかし厚生労働大臣が定めた場合に限り、併用が認められます。これを「保険外併用療養費制度」といいます。
保険外併用療養費には評価療養選定療養に分けられます。簡単に言うと評価療養は「保険導入のための評価を行うもの」であり、選定療養は「患者が自ら希望して選ぶ療養で、保険導入を前提としないの」です。詳しくは下図のようになります。

今回の改定で、後発品を選択できるのに患者希望で先発品を選択し場合、これが選定療養になることになりました。選定療養の対象なるケースは以下のものです。

①銘柄名処方の場合であって、患者希望により長期収載品を処方・調剤した場合
②一般名処方で長期収載品を使用した場合

※長期収載品とはの特許が切れた後に、薬価基準に収載されている医薬品です。「長期収載品≒後発品のある医薬品」と考えてよいでしょう。特許が切れても必ずしも後発品が発売されるわけではないので、一応分けています。

つまり後発品を選べるのにあえて長期収載品にした場合が選定療養になるわけですね。言い方を変えれば医師が後発品への変更不可の銘柄処方をした場合は除外されます。また後発品が在庫不足で提供できない場合も除外されます。

また全ての長期収載品が選定療養の対象とされるわけではありません。対象となるのは以下のものとされています。
・後発品が発売してから5年が経過したもの
・5年を経過していなくても後発品への置換率が50%に達しているもの
後発品が発売されたと同時に選定療養の対象となるわけではなく、ある程度猶予を持たせているわけです。

さてここまでで選定療養について、対象となる医薬品について説明してきました。
それでは選定療養を選択した場合、いくら負担が上がるのでしょうか?ここから先は中医協の資料を参考にして解説していきます。
選定療養は保険給付対象部分以外は自己負担となります。この考えだと、後発品を選べるのに対象となる先発品を選んだ場合は、その後発品との差額部分が自己負担になることになります。しかしそれでは自己負担が上がりすぎてしまうので、ある程度までは保険給付の対象とすることになりました。

今回の改定では先発品と後発品の差額部分の4分の1を選定療養費として、自己負担することになりました。なお差額を算出する際の後発品の価格は最高価格帯とします。
※後発品は基本的にはどのメーカーも同じ価格ですが、一部の後発品は価格が複数存在するものもあります。今回の差額の算出に用いるのは、最も価格の高いものになります。
また選定療養費には消費税がかかります。これらをふまえて下図をご覧ください。

計算過程が非常に細かいですが、このやり方で自己負担が計算されることになります。今回の改定では選定療養の対象となるのは先発品と後発品の価格の差額分の4分の1ですが、中医協の資料によると今後の改定では3分の1、2分の1にすることも検討されているようです。今度の後発品の使用状況、流通状況、社会保険料の状況等を総合的に判断して決められるのでしょう。

長々書きましたが、つまり先発品を自ら選んで選定療養の対象となるケースで、この事を患者に説明した場合に特定薬剤管理指導加算3の5点が算定できることになります。患者に如何に簡潔に分かりやすく、この事を伝えられるかが肝になりますね。
また患者側も自らの希望で先発品を選択した場合は、今まで以上に自己負担が増えるだけでなく、初回に限っては5点も追加されます。先発品を望むならばそれなりに価格が高くなることを理解しましょう。


算定要件ロに該当するもう1つのケースとしては、医薬品の供給の状況が安定していないため、前回と同じ銘柄の医薬品が確保できず、前回とは別の銘柄に変更して調剤した場合に、患者に説明を行った場合です。
特に後発品はもう何年も品薄が続いています。調剤する後発品のメーカーが「サワイ」⇒「トーワ」⇒「サンド」などコロコロ変わってしまうことも普通にみられる光景です。その都度その理由、有効成分や治療効果に変わりはないことを説明しなくてはなりません。これに対する手間賃と認識してよいでしょう。


以上の説明で特定薬剤管理指導加算3についてはある程度分かったでしょうか?
特に今まで薬局ではあまり関係の無かった選定療養だの、どの薬が選定療養の対象になるかだの、RMP資材を使った説明をした場合だの、新しい概念が沢山登場してきました。しかもこれらを患者に分かりやすく説明できなくてはなりません。特に選定療養の対象となる場合は説明が難しいですね。相手に分かりやすく説明できるためには、何よりも自分自身がよく理解している必要があります。1回で覚えるのは難しいので、理解できるまで何度も繰り返し読んで下さい。

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