オキシコドン 乱用防止製剤の確認

麻薬

うちの薬局では麻薬処方箋はあまり来ないのですが、先日久しぶりに癌患者に麻薬処方箋が発行されました。その時に書かれていた内容が以下のものでした。

(般)オキシコドン徐放錠5㎎(乱用防止製剤) 2錠
   1日2回 8時、20時

久しぶりの処方であり、また間違えやすい内容であったため、事務員にもレセコンの入力をしっかりと確認してもらいました。麻薬処方箋を頻繁に取り扱っている薬局では知っていて当然の内容でしょうが、使用頻度の少ない薬局では”乱用防止製剤”の意味を忘れてしまっている可能性もあります。今回の記事ではオキシコドン徐放錠の種類と特徴について書きますので、特に扱っていない薬局の人は確認しておいて下さい。

オキシコドンの錠剤についてはレセコンの入力から気を付けなくてはなりません。
オキシコドン徐放性製剤が一般名処方で処方された時の書き方は次の2種類あります。

(般)オキシコドン徐放錠
(般)オキシコドン徐放錠(乱用防止製剤)

オキシコドン徐放錠は後発品のオキシコドン®徐放カプセル「テルモ」になります。(レセコン入力の際は剤形変更を選択しなくてはなりません)
一方オキシコドン徐放錠(乱用防止製剤)は先発品のオキシコンチン®TR錠、後発品のオキシコドン®徐放錠NX「第一三共」があります。

この”乱用防止製剤”の記載がない場合は、オキシコンチン®TR錠、オキシコドン®徐放錠NX「第一三共」での調剤は不可であり、”乱用防止製剤”の記載がある場合はオキシコドン®徐放カプセル「テルモ」での調剤が不可になります。

さてこの乱用防止製剤とはどのような仕組みになっているか確認しましょう。
乱用防止製剤とは簡単に言えば容易に大量投与するのを困難な加工をしたり、仮に大量してもその効果を弱めてしまうような工夫がされています。

・オキシコンチン®TR錠の場合
一言でいうと粉にしたり水に溶かしたりして、大量に服用するのが困難な加工が施されています。錠剤であれば大量に服用するのが困難ですが、粉砕したり水に溶かしてしまえば大量服用は簡単にできます。
※某歌舞伎俳優も自殺ほう助で睡眠薬を粉砕して水に溶かして服用させています。

オキシコンチン®TR錠は錠剤の強度が高く、粉砕するのが容易ではありません。粉砕機を使っても歯が欠ける恐れがあるほどだそうです
さらに錠剤を水に溶かそうとしてもゲル化してしまい、簡単には溶解できません。これらの加工により粉砕したり、水に溶かしたりして大量に服用することが困難となっています。

・オキシコドン®徐放錠NX「第一三共」の場合
大量投与しても呼吸抑制が生じてしまうのを防ぐ加工がされています。これは錠剤にナロキソンが含まれているためです。
麻薬鎮痛薬はオピオイドμ受容体やκ受容体を刺激することで鎮痛効果を生じています。

またそれだけでなく、中脳や延髄から分布しているGABA作動性神経上のオピオイド受容体を刺激することで下行性痛覚抑制系を賦活しています。

しかし大量投与で延髄に存在する呼吸中枢のオピオイド受容体まで刺激してしまい、最悪の場合呼吸抑制により死亡することがあります。
そこでオピオイド受容体拮抗薬であるナロキソンを投与することで呼吸抑制に対処できるわけです。ナロキソン塩酸塩®静注の適応は「麻薬により呼吸抑制並びに覚醒遅延の改善」です。

このナロキソンが含有されているとμ受容体やκ受容体を遮断してしまうので、鎮痛効果が落ちてしまうはずです。しかし内服で用いた場合はナロキソンの効果は得られません。消化管から吸収された薬物は門脈から肝臓に送られ、大半が代謝されたのち全身を循環します。これを肝初回通過効果といいます。

ナロキソンは肝臓でほとんどが代謝されてしまいます。
しかし粉砕して注射した場合はどうでしょうか?直接血管に投与することで肝初回通過効果は得られません。そのためナロキソンが代謝されることなく、呼吸抑制や覚醒遅延を改善します。


以上の理由により”乱用防止製剤”とされている理由が分かりましたでしょうか?
2つを比べると単純に乱用防止という観点ではオキシコンチン®TR錠の方が優れているように感じますが、オキシコドン®徐放錠NX「第一三共」の大量投与しても呼吸抑制が防がれるという点も優れていると言えますね。
いずれにしても一般名処方で記載されていた場合は最後の一文字まで正しく読み、レセコンで一般名⇒商品名の検索をして、さらに調剤後にも薬剤師が目視で確認しないといけません。麻薬の調剤ミスは健康被害の有無にかからわず麻薬事故報告書を保健所に提出しなくてはなりません。麻薬処方箋の場合はレセコンの入力からピッキング、監査まで全て細心の注意を払いましょう。また新しく麻薬処方箋が来た場合は、記事にして情報提供をしていきます。

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