昨日いつもヒューマログ®注を使っている患者さんの処方変更がありました。ヒューマログ®注からルムジェブ®注に変更になりました。当薬局では初めての採用だったので、うちの従業員は誰も知っている人がいませんでした。今回はこのルムジェブ®注について解説します。
ルムジェブ®注はインスリンリスプロの超速効型インスリンアナログです。
この患者さんが今まで使っていたヒューマログ®注もインスリンリスプロでした。有効成分は同じなのですが、今回なぜ変わったのでしょうか?
まずはインスリン製剤についておさらいしてみましょう。
インスリン製剤はその効果の速さによって分類されます。
ヒューマログ®やノボラピッド®、アピドラ®などの超速効型(食事10~15分以内に使用)、ヒューマリン®R、ノボリン®Rなどの速効型(食事30分以内に使用)、ヒューマリン®N、ノボリン®Nなどの中間型(食事30分以内に使用)、混合型、ランタス®やレベミル®などの持続型(1日1回使用)などですね。
インスリンスプロ(ヒューマログ®注)は超速効型です。
インスリンは6量体の構造をしています。膵臓β細胞で産生されたインスリンも、インスリンアナログも同じ6量体です。速効型インスリンは皮下注射すると2量体に分解され、さらに単量体に分解されます。この2量体、単量体が吸収されることにとって効果を発現します。(単量体の方が吸収が速いです)
これに対して超速効型インスリンは2量体が速やかに単量体に分解され、より吸収が速くなっています。
(ヒトインスリンβ鎖の28位のプロリンと29位のリジンを入れ替えた配列に変更し、2量体の形成を困難にしている)
これが食前投与と食直前投与の違いになるわけですね。
今回紹介するルムジェブ®注は同じインスリンリスプロでもクエン酸、トレプロスチニルという2つの添加物を加えることによって、ヒューマログ®注に比べてさらに吸収が速くなっています。
添付文書で15単位の使用のデータを見てみましょう。
Tmax:ヒューマログ®注59分、ルムジェブ®注47分
Early 50% Tmax:ヒューマログ®注23.3分、ルムジェブ®注10.2分
tRmax:ヒューマログ®注122.59分、ルムジェブ®注102.86分
Early 50% tRmax:ヒューマログ®注40.45分、ルムジェブ®注29.85分
※Early 50% Tmax Cmaxの50%に達するまでの時間
tRmax 最大グルコース注入率到達速度⇒インスリンの効果が最大になる速度
Early 50% tRmax インスリンの最大効果の50%を発揮するまでの時間
以上のデータからもルムジェブ®注はヒューマログ®注に比べて速やかに効果が発現することが分かります。効果発現はヒューマログ®注より約5分速いみたいです。
ヒューマログ®注に比べてさらに吸収が速くなったことにより、使い方が少し変わったところがあります。
ヒューマログ®注やノボラピッド®注などの超速効型インスリンは食事10~15分前に注射でした。しかしルムジェブ®注は食事開始2分前に注射します。さらに食事開始20分以内なら効果があります。注射をするのを忘れて食事をしてしまったとしても、途中で気付いて間に合う可能性もあります。
今回うちの患者さんがヒューマログ®注からルムジェブ®注に変わったのは、担当医の先生が積極的にルムジェブ®注に切り替えているからみたいです。今までヒューマログ®注で問題があったわけではなさそうです。
しかし従来の超速効型インスリンよりも使い易いのは間違いなさそうです。食時をする15分以内とは意外に難しいです。注射してから15分ほどして食事と考えると結構気を使うでしょう。しかしルムジェブ®注の場合は2分以内です。これくらいなら気にならないでしょう。さらに食事をしてから20分以内なら使用可能となれば、注射をするのを忘れてしまった場合でも、途中で気付いて注射できます。食事前に注射を忘れてしまう人は多いので、後から使えるのは結構重宝する人も多いのではないでしょうか?
今回はルムジェブ®注について説明しましたが、同様にノボラピッド®注に添加物としてニコチン酸アミドを加えて吸収を早くしたフィアスブ®注もあります。内容としてはルムジェブ®注と同じです。
今後はルムジェブ®注やフィアスプ®注などの新しいインスリン注射がより沢山用いられるでしょう。
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