前回、前々回の記事に続き、最後に脊柱管狭窄症の紹介です。長かった腰痛シリーズもこれで終わりなのでお付き合いください。
まず脊椎は椎骨が重なって出来ているのは何度もお伝えしました。この椎骨の構造をもう少し詳しく見てみましょう。
すべり症の記事で椎骨は本体の椎体と関節部分の椎弓に分けられることをお伝えしました。この椎体と椎弓の間には穴が空いています。この穴を椎孔といいます。椎骨はいくつも重なっているので、当然この穴も連なっており、そのためトンネルができることになります。このトンネルを脊柱管といいます。
この脊柱管の中に脳からの神経(脊髄)が通っており、脊髄内は神経と脳脊髄液で満たされています。この脊柱管が何らかの原因で狭くなってしまうと、その中の神経が圧迫されて痛みや痺れを伴うことがあります。これが脊柱管狭窄症です。
腰で脊柱管の狭窄が生じるのを腰部脊柱管狭窄症といい、首で生じるのを頸部脊柱管狭窄症といいますが、世間一般では脊柱管狭窄症と言うと腰部脊柱管狭窄症をイメージしますね。
※この記事では脊柱管狭窄症は腰部脊柱管狭窄症と読み替えて下さい。
脊柱管が狭窄する最大の原因は加齢によるものとされ、加齢により椎骨や椎間板の変形が生じることで脊柱管が狭まります。椎骨同士は靭帯により結び付けられていますが、この靭帯も加齢により肥厚し、脊柱管を圧迫することがあります。
その他にはすべり症や椎間板ヘルニアなどの疾患が原因で狭窄が起きることもあり、また先天的に脊柱管が狭い人もいます。
脊髄は脳から延長した神経の束であり、脊柱管を通って第1腰椎~第2腰椎あたりまで伸びています。脊髄は第2腰椎あたりで終わりますが、脊髄神経は束になってそこからしばらく下降したあと、下肢に向かって分かれて伸びていきます。この神経の束を馬尾(または馬尾神経)といいます。
※馬の尻尾に似ているのでこのような名前になりました。腰神経、仙骨神経、尾骨神経の集合が馬尾です。
腰部脊柱管狭窄症はこの馬尾神経やその神経根が圧迫されることにより様々な症状を引き起こします。
主な症状としては腰痛や脚の痺れ・痛みですが、馬尾神経は主に脚を支配しているので、腰より脚への症状が顕著に出ます。
最も特徴的な症状は間欠性跛行です。これは歩くと臀部や太ももに痛みや痺れを感じますが、休息を取ると痛みは軽減し、再び歩き始めると痛みや痺れが出る状態です。
脊柱管狭窄症はその名の通り脊柱管が狭くなっていることが原因で生じる疾患です。脊柱管の狭窄具合で症状が変化します。例えば安静時には症状はあまり出ませんが、背筋を伸ばした状態で歩くと痺れが出てきます。しかし腰を曲げると症状は緩和します。脊柱管は腰椎を伸ばした状態では狭窄し、曲げた状態では狭窄が緩和するためです。
すべり症やヘルニアと同様に、排尿障害や排便障害を起こすこともあります。(膀胱や直腸にも神経が分布しているからですね)
最後に脊柱管狭窄症の治療について見てみましょう。
基本的にはすべり症やヘルニアと同じ形です。まずは保存療法です。コルセットを用いて腰の負担を軽減し、痛みを伴う時は薬物療法を行います。薬物療法はNSAIDs、プレガバリン(リリカ®)、ミロガバリン(タリージェ®)などの神経障害性疼痛治療薬、オピオイド系鎮痛剤、ブロック注射などです。
その他にリマプロストアルファデクス(オパルモン®)などのプロスタグランジン製剤を用いることが多いですね。脊髄には脊髄神経の他に血管も通っています。血管の圧迫による血流障害が神経根や馬尾を変性させ、痺れの原因になるからです。リマプロストアルファデクスはプロスタグランジンE1受容体を刺激します。E1受容体はGs共役型の受容体なので、血小板凝集を抑制し、血管平滑筋を弛緩させますね。
痛みや痺れが酷く、日常生活に支障が大きい場合は手術も行います。変形した骨や椎間板、肥厚した黄色靭帯の除去により、狭窄の原因を取り除きます。
3回にわたって腰痛の原因疾患を解説しました。3つの記事を読んでみて分かったと思いますが、原因こそ違いますが、いずれも神経を圧迫しているので、症状は非常によく似ており、また治療法もそっくりです。確定診断をするにはMRIなどが必要になるでしょう。
何とか年内に終わらせることが出来ました💦頭では理解できていても、それを文字に起こしたり、なるべく分かりやすい言い回しを考えるのは本当に大変です。まだまだ修行が足りないようです。
にほんブログ村
記事が良かったと思ったらランキングの応援をお願いします。
コメント