デュピクセント皮下注300mgペン

免疫系の薬
昨日うちの薬局に医薬品適用情報が届きました。その中にデュピクセント皮下注300mgペンについてのものがありました。

デュピクセント®皮下注は今まではシリンジタイプだけであり、通院することによってしか使用できませんでした。しかし2020年11月よりペンタイプの製剤が発売されたことにより、自己注射が可能になりました。今回はこのデュピクセント®皮下注300mgペンについて解説します。

デュピクセント®皮下注は成分名をデュピルマブといいヒトIL-4受容体、IL-13受容体のモノクロナール抗体です。IL-4受容体、IL-13受容体にはIL-4Rαという共通のサブユニットがあるのですが、これにデュピルマブが結合することにより、IL-4、IL-13の作用を阻害します。

 

IL-4、IL-13はヘルパーT細胞によるB細胞の活性化を阻害します。B細胞は形質細胞に分化するので、抗体産生が抑制されることになります。これによりアレルギーの原因となるIgE抗体の産生が抑制されます。

※IL-4はその他に線維芽細胞に作用し皮膚や粘膜の線維化、血管内皮細胞に作用し接着因子を産生します。(好酸球は接着因子により血管内皮細胞に接着し、血管内から遊走する)

作用機序から見て分かるように、アレルギーに対して有効性を持ちます。
デュピクセント®皮下注の効能効果は以下のものになります。

・アトピー性皮膚炎
ただし以下の条件あり↓
①ステロイド外用剤やタクロリムス外用剤等の抗炎症外用剤による適切な治療を一定期間施行しても、十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲に及ぶ患者に用いること。
②原則として、本剤投与時にはアトピー性皮膚炎の病変部位の状態に応じて抗炎症外用剤を併用すること。
③本剤投与時も保湿外用剤を継続使用すること。

つまり外用薬を使っても十分な効果が得られない時に使えるわけであり、いきなりデュピクセント®皮下注を使えるわけではありません。デュピクセント®皮下注を使っても外用薬は使い続けることになります。

・気管支喘息
ただし以下の条件あり↓
最新のガイドライン等を参考に、中用量又は高用量の吸入ステロイド薬とその他の長期管理薬を併用しても、全身性ステロイド薬の投与等が必要な喘息増悪をきたす患者に本剤を追加して投与すること。

吸入ステロイドやその他の薬を使っても喘息が悪化する場合に使えることになります。もちろんそれまでの喘息治療薬は継続して使用することになります。

・鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎
慢性副鼻腔炎でも鼻茸がある人のみ適応になります。
ただし以下の条件あり↓
全身性ステロイド薬、手術等ではコントロールが不十分な患者に用いること。
※鼻茸 鼻の中にできるポリープです。粘膜が炎症で垂れ下がったものです。

使用方法についてはアトピー性皮膚炎、気管支喘息においては初回のみ600mg(2本)、それ以降は300mg(1本)を2週間おきに用います。 慢性副鼻腔炎においては300mgを2週間おき用います。症状が安定するとは4週間おきで大丈夫になります。

副作用について見てみましょう。
最も多いのが注射部位の紅斑であり、重篤なものはアナフィラキシーショックになります。これは注射剤なので当然でしょう。
サノフィ株式会社のHPを参照に見てみると目立ったものは感染症でした。B細胞の分化を阻害するので当然と言えます。2型免疫応答(Th2細胞による免疫応答)は寄生虫感染に対する免疫反応なので、寄生虫に感染した患者は完治するまでデュピクセント皮下注の使用は中止しなくてはなりません。
その他には皮膚障害、眼障害が多かったです。免疫抑制反応も上手く働けばアレルギーを抑えるが、予想通りに働かないと皮膚や粘膜に障害を起こすようです。

最後に使い方です。
デュピクセント®皮下注300mgペンは針が内蔵されているタイプなので、インスリン注射のように自身で針を付ける必要はありません。また使用後は針が内部に戻るので針刺し事故の心配の少ない薬剤と言えます。以前に紹介したテリボン皮下注オートインジェクターと同じですね。
注射部位は腹部か太ももになります。 保管は冷蔵庫で行いますが、使用する際は45分以上かけて室温と同じにしなくてはなりません。インスリン注射では15~30分と言われているので、それに比べると少し長めですね。

以上分かっていることを書いてみました。 基本的にアレルギーを完治させるものではなく、現状の治療をしても十分な治療効果が得られない場合に追加で用いて症状を緩和させるものになります。注射なので完治を期待してガッカリした人もいるかもしれません。しかし重症なアレルギーを緩和させるのはそれだけで意義のあるものです。気管支喘息が原因の呼吸困難で亡くなる人もいますし、アトピーも重症な人は関節が破壊されたり、瞼の裏の粘膜にポリープが出来て、それが角膜を傷つけ、角膜潰瘍を起こすケースもあります。アレルギーの辛さはなった人にしか分からないものです。重篤な症状を少しでも緩和する選択肢が出来ればそれだけで価値はあります。

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