なかなか時間が取れず前回の記事から2週間以上空いてしまいました💦できれば週に1回くらいの頻度で記事を書きたいのですが、なかなかできずに申し訳ございません。
2025年12月22日に子宮筋腫の治療薬であるイセルティ®錠の製造販売が承認されました。既に販売されているレルミナ®錠もありますが、少しだけ使いやすくなった印象です。今回の記事で子宮筋腫、イセルティ®錠について詳しく解説しますので、効果のでるメカニズム、どなような副作用が起きるかなどについて理解してもらえると幸いです。
イセルティ®錠を詳しく理解するためにまず子宮筋腫について学習しましょう。
・子宮筋腫について
子宮筋腫とは子宮の平滑筋に発生する良性腫瘍です。エストロゲンに依存して増殖するため、閉経前までは大きくなり、閉経後は小さくなる特徴があります。
悪性化することは稀ですが、30代以上の女性の約3割にみられる一般的な疾患です。
子宮筋腫は発生する場所によって筋層内筋腫、粘膜下筋腫、漿膜下筋腫の3つに分けられます。
子宮筋腫は症状が無いケースが多い疾患です。しかし筋腫が大きくなると以下のような自覚症状が起きることがあります。
過多月経: 生理による出血量の増加。レバーのような血の塊が出る。
貧血:過多月経により貧血症状が起きる。
生理痛:下腹部、腰に激しい痛みが起きる。
圧迫感:筋腫が大きくなることでお腹が張る。便秘、頻尿、下腹部痛を感じることがある。
筋層内筋腫、粘膜下筋腫では過多月経や生理痛が起きやすいです。特に粘膜下筋腫の場合は経血が多く貧血になる頻度が高いです。また子宮内膜に筋腫があることによって着床が起きにくくなり、不妊の原因になることもあります。
漿膜下筋腫では筋腫が子宮の外側に広がることによって、膀胱の圧迫による頻尿、排尿困難、直腸の圧迫による便秘、下腹部痛が起きることがあります。
ここまでで子宮筋腫についてある程度理解できたでしょうか?
子宮筋腫の治療法は鎮痛剤による対症療法、筋腫を小さくするホルモン療法、筋腫を取り除く手術療法があります。
今回の記事で紹介するイセルティ®錠はホルモン療法による治療薬です。それではイセルティ®錠について詳しく見てみましょう。
・作用機序について
イセルティ®錠の有効成分はリンザゴリクスといい、GnRHアンタゴニストです。GnRHアンタゴニストは子宮筋腫の主流の治療方法です。
子宮筋腫はエストロゲン依存性疾患であり、エストロゲンが筋腫細胞のエストロゲン受容体に結合することによって分化・増殖します。つまりエストロゲンの働きを抑制すれば筋腫の増殖を抑制したり、筋腫を縮小させることが可能です。
ここで性ホルモンの分泌機構についておさらいしましょう。
視床下部から性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)が分泌され、それを受けた下垂体前葉から卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)が分泌されます。
FSHにより卵胞が成熟し、卵胞からエストロゲン(卵胞ホルモン)が分泌されます。

リンザゴリクスは下垂体前葉に存在するGnRH受容体に対する拮抗薬です。GnRH受容体を遮断することで下垂体前葉からゴナドトロピン(FSH、LH)の分泌が抑制され、その結果卵巣からのエストロゲンの分泌も抑制されます。
子宮筋腫の治療にはGnRHアゴニストが使われることもあります。
GnRHアゴニストはGnRH受容体を刺激します。その結果FSH、LHの分泌が促進され、エストロゲンやプロゲステロンの分泌も促進されます。しかしGnRH受容体を刺激し続けることで受容体のダウンレギュレーションが生じ、さらに受容体の脱感作も生じます。これによりGnRHの働きが抑制され、エストロゲンの分泌も抑制されます。
しかしGnRHアゴニストは投与初期にはGnRHの作用が増強するためFSH、LHが大量に分泌され一時的にエストロゲンの血中濃度が急上昇します。これをflare up(フレアアップ)現象といいます。flare up現象では経血量が増加したり、筋腫の一時的な肥大による下腹部痛といった症状が起きます。
GnRHアンタゴニストではそのようなことは起きないので、flare up現象が起きないのがGnRHアゴニストより優れてる点です。
・効能、効果について
効能効果は以下のようになっています。
「子宮筋腫に基づく下記諸症状の改善 過多月経、下腹痛、腰痛、貧血」
作用機序の項目で紹介したようにリンザゴリクスは最終的にエストロゲンの分泌を抑制し、筋腫の分化・増殖を抑制します。あくまで筋腫を小さくするだけで根治療法ではありません。そのため子宮筋腫による症状を改善することになります。
GnRHアンタゴニストであるレルゴリクス(レルミナ®錠)は子宮内膜症にも有効ですが、イセルティ®錠は子宮筋腫のみです。
・用法及び用量について
用法・用量については以下のようになっています。
「通常、成人にはリンザゴリクスとして200mgを1日1回経口投与する。なお、初回投与は月経周期1~5日目に行う。」
イセルティ®錠の規格は100mgなので1回2錠ですね。1日1回としか書かれていません。これは食事の影響を受けないからです。
同じGnRHアンタゴニストであるレルゴリクス(レルミナ®錠)は食前服用です。レルゴリクスは食事によって吸収が低下してしまいます。
対してリンザゴリクスはバイオアベイラビリティが極めて高く、食事に関係ない服用が可能となります。
初回は月経周期1~5日目に服用するのは妊娠中の使用の回避、エストロゲンの分泌を効率的に抑制するためです。
月経初期はほぼ確実に妊娠していないと言えます。そのため月経初期に服用すれば誤って妊娠中に服用してしまうリスクが避けられます。また月経初期は次の排卵に向けて、新しい卵胞が育ち始める時期です。この段階では卵胞が育ち切っていないためエストロゲンがあまり分泌されません。この時期にGnRHの働きを抑えることで卵胞の成熟を抑えられ、結果的にエストロゲンの分泌が効率よく抑えられます。
”用法及び用量に関連する注意”に次のような記載があります。
前述したようにGnRH受容体を遮断することによってエストロゲンの分泌が抑制されます。エストロゲンは破骨細胞のアポトーシスを促進し、骨吸収を抑制します。つまりエストロゲンの生成を阻害することにより、骨粗鬆症のリスクが増大します。そのため原則6ヶ月以内の使用となるわけですね。※6ヶ月経った場合は休薬期間を設けるのが一般的です。
・副作用について
重大な副作用にうつ状態、肝機能障害があります。エストロゲンが低下することで更年期障害と同様の状態になることが考えられます。うつ症状は更年期障害の代表的な症状ですね。
また頻度の高い副作用としてほてり(52.4%)、不正出血(38.2%)、頭痛・多汗(5%以上)、関節痛・手指等のこわばり・生化学的骨代謝マーカー上昇(5%以上)があります。いずれもエストロゲンの低下によるものですね。
・薬物動態について
吸収については前述したようにバイオアベイラビリティが高く、ほとんどが吸収されます。
代謝については主にCYP2C9、CYP2C8、CYP3A4により代謝され、尿中および糞中に約半分ずつ排泄されます。つまり肝機能、腎機能の両方に影響を受けることになります。
Child-Pugh分類でGrade C、中度以上の腎機能障害患者では血中濃度の上昇により、副作用が強く出る可能性があるとされています。
今回の記事で子宮筋腫およびイセルティ®錠について理解できたでしょうか?
レルミナ®錠と違い食事に関係なく服用できる点は優れていますが、子宮内膜症には使えなかったりとレルミナ®錠と比べると一長一短といった印象です。しかしレルミナ®錠のようにほぼ肝代謝ではなく、半分は腎排泄のため肝機能の悪い患者にはイセルティ®錠の方が使いやすいかもしれません。いずれにしても治療の選択肢が増えるので結果的にはいいのかもしれません。効果のメカニズムについてはレルミナ®錠とほぼ一緒なので、今回の記事でレルミナ®錠の適正使用にもつながってくれると嬉しいです。
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