市販のトローチやのど飴が意外といいかも

OTC・衛生用品

すっかり寒くなってきたせいか、インフルエンザにかかる患者さんが非常に多いです。また最近では一時はだいぶ減っていたコロナ患者もまた増えてきており、最近ではコロナ、インフルエンザの同時流行になってきています。息子の学校でもクラスの半分近くが休んでおり、学級閉鎖になりました。感染症の予防にはうがい、手洗い、程度な運動、十分な睡眠が必要なのは間違いありません。しかしそれ以外にも市販されているトローチや飴がこの時期には結構いいと思います。
私はヴィックス メディケイテッド ドロップを愛用しています。そのため今回の記事ではヴィックス メディケイテッド ドロップを中心に見ていきます。


まず初めにヴィックス メディケイテッド ドロップについて紹介しましょう。ヴィックス メディケイテッド ドロップは指定医薬部外品であり、有効成分にセチルピリジニウム塩化物水和物(以下CPC)を含有しています。このCPCについて確認しておきましょう。
CPCは陽イオン界面活性剤です。陽イオン界面活性剤は4級アンモニウム塩と3級アミンに分類されます。


多くの陽イオン界面活性剤は4級アンモニウム塩であり、陽イオン部分が細胞膜の陰イオン部分に結合します。これにより細胞膜を透過し、細胞膜の変性や、細胞質内のタンパク質の変性を起こすと考えられています。

CPCの働きが分かったところでどのような病原菌に有効か見てみましょう。
一般的にCPCを含む4級アンモニウム塩が有効なのは一般細菌です。それ以外の芽胞生成菌やMRSAなどには効果がありません。カンジダなど一部の真菌にも有効です。一方でウイルスにはあまり効果がないとされてきました。代表的な陽イオン界面活性剤である塩化ベンゼトニウムや塩化ベンザルコニウムはノロウイルスやB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスなどには無効であり、その他の一般ウイルスにも効果が認められるものは少ないとされてきました。当然CPCも同じように思われていました。

しかし大正製薬は熊本大学との共同研究で2021年にCPCが試験管内の試験で新型コロナウイルスの99%を不活化を確認したとの報告を、2022年にA型インフルエンザウイルスの99%の不活性化を確認したとの報告をしています。海外の研究で抗ウイルス効果が認められた実験では250μg/mL(0.025%)以上の濃度で確認されていました。しかし大正製薬の発表したデータでは0.005%でも効果が認められています。

ここでヴィックス メディケイテッド ドロップについて確認しておきましょう。ヴィックス メディケイテッド ドロップには18錠中にCPCが8.28mg含まれています。1錠あたりは0.46mgです。内服ではなく口腔内で溶かすので濃度を測るのは困難ですが、1錠中に0.46mg=460μg これが唾液9.2mLに溶ければ0.05%になります。1錠中から徐々に溶けていくのでなるべく長く口に含んでいる必要があります。
※15歳以上は1回3錠ですが、製品の説明書には1度に3個使用しないで、1個ずつ舐めるよう記載されています。1度に3個舐められれば簡単に0.05%以上になりそうですが、ここは残念ですね。
また大正製薬と熊本大学の共同研究ではインフルエンザウイルスでは1分ほど作用させる程度でそれなりに効果が出ていますが、新型コロナウイルスでは5分以上作用させています。いずれにしてもなるべく長く口に含んでゆっくり溶かしていくのがよいでしょう。

今回紹介したのはヴィックス メディケイテッド ドロップですが、他にヴィックス メディカル トローチとヴィックス メディカル トローチLも発売されています。こちらの違いも確認しておきましょう。

表を見て分かるように、ヴィックス メディカル トローチとヴィックス メディカル トローチLのどちらも去痰剤であるグアヤコールスルホン酸カリウムの他に鎮咳薬を含んでいます。ヴィックス メディカル トローチはdl-メチルエフェドリン塩酸塩なので鎮咳薬というより気管支拡張薬です。ゼーゼーするような咳にはこちらがよいでしょう。
インフルエンザやコロナの予防にはヴィックス メディケイテッド ドロップ、咳を伴う時はヴィックス メディカル トローチ、咳でゼーゼー、ヒューヒューする時はヴィックス メディカル トローチLといった使い分けでいいでしょう。

ここで1点注意があります。dl-メチルエフェドリン塩酸塩は”濫用等のおそれのある医薬品”に指定されています。
※ヴィックス メディカル トローチLの他にもdl-メチルエフェドリン塩酸塩を含有する商品をいくつか挙げておきます。

これらは原則1人1個しか購入できませんし、過剰に服用することで動悸や血圧上昇、悪心などのリスクもあるので、予防使用はお勧めできません。あくまでゼーゼーする咳の時に必要な分だけの使用がよいでしょう。


最近のインフルエンザ、新型コロナの流行であちこちの職場で人が足りなくなっています。いくら気を付けてもかかる時はありますが、少しでも予防するにこしたことはありません。満員電車の中など、人が集まる場所でCPCを含んだトローチや飴をゆっくり舐めておくことで、インフルエンザやコロナの感染のリスクが減少できる可能性があるので、よければ試してみて下さい。

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