乾癬③ 治療(生物学的製剤・光線療法)

疾病・病態

前回の記事に引き続き乾癬の治療法の紹介です。
今回は生物学的製剤と光線療法について説明します。

・生物学的製剤

生物学的製剤はサイトカインなど疾患の原因となるタンパク質や、遺伝子にピンポイントで抑制するものです。高分子タンパク質であり、遺伝子組み換え技術や細胞培養技術を用いて作られます。原因となるタンパク質にピンポイントで作用するため効果が高く、また副作用も少ない傾向にあります。乾癬の他にリウマチや若年性特発性関節炎、ベーチェット病などに用いられます。
前回、前々回の記事で乾癬がTNFα、IL-17、IL-23などの過剰分泌が原因となっていることを説明しました。乾癬の生物学的製剤はこれらのサイトカインを直接抑制することで効果を示します。いずれもこれらのサイトカインに対するモノクロナール抗体です。※モノクロナール抗体 単一の抗原を認識する、人工的に作られた抗体
具体的な薬剤を見てみましょう。

TNFα阻害薬

・インフリキシマブ(レミゲート®点滴静注) 
 抗原に結合する部分のみマウス由来で、その他の箇所はヒト由来。投与間隔は8週間。
・アダリムマブ(ヒュミラ®皮下注シリンジ・皮下注ペン)
 完全にヒト由来。投与間隔は2週間。
・セルトリズマブ(シムジア®皮下注)
 抗体のFc領域を取り除いてFab領域をポリエチレングリコール化(PEG化)したもの。
 これにより分子量が小さくなり、水溶性も増加。血中半減期が長くなり、アレルギーも起きにくい。
 Fc領域を持たないため胎盤を通過せず、妊婦も使用可能。投与間隔は2週間。安定すれば4週間も可。 

IL-17阻害薬

イキセキズマブ(トルツ®皮下注オートインジェクター・皮下注シリンジ)
 IL-17Aに対するヒト化モノクロナール抗体。投与間隔は12週までは2週間、それ以降は4週間。
セクキヌマブ(コセンティクス®皮下注シリンジ・皮下注ペン)
 IL-17Aに対するヒト化モノクロナール抗体。投与間隔は5週までは1週間、それ以降は4週間。
ブロダルマブ(ルミセフ®皮下注シリンジ)
 IL-17受容体Aに対するヒト化モノクロナール抗体。投与間隔は2週までは1週間、それ以降は2週間。

IL-23阻害薬

グセルクマブ(トレムフィア®皮下注シリンジ)
 IL-23P19に対するヒト化モノクロナール抗体。投与間隔は初回、4週間後に1キット。それ以降は8週間。
ウステキヌマブ(ステラーラ®点滴静注、皮下注シリンジ)
 IL-12とIL-23に対するヒト化モノクロナール抗体。主にクローン病に用いる。
 投与間隔は初回、4週間後に1キット。それ以降は12週間。
リサンキズマブ(スキリージ®皮下注シリンジ)
 IL-23P19に対するヒト化モノクロナール抗体。投与間隔は初回、4週間後に2キット。それ以降は12週間。

生物学的製剤は優れた効果を示し、副作用が少ないですが、全くないわけではありません。注射剤なのでアレルギー症状が起きることがありますし、サイトカインを抑制するからには感染症に注意する必要があります。また全ての医療機関で扱えるわけではありません。日本皮膚科学会の承認を得た病院のみ取り扱いができます。承認医療機関は日本皮膚科学会のHPから確認ができます。⇒ 乾癬生物学的製剤使用承認施設|公益社団法人日本皮膚科学会 (dermatol.or.jp)

光線療法

紫外線を皮疹に照射し、免疫反応を抑制する方法です。
UVAとUVBが用いられます。病変部位が全身である場合や、他の治療法で効果が不十分な時に有効です。通院する場合は週に2~3回程度通わなくてはならないデメリットもあります。また長期に行うことで皮膚がんを起こす可能性が高くなることにも注意が必要です。
光線療法にもいくつか種類があります。

・PUVA療法
光感受性を高めるソラレンという有機化合物を塗るか内服して、UVAを照射する方法です。ただしソラレンによる吐き気などの副作用から、現在はあまり使用されていません。

・ナローバンドUVB療法

UVBの中でも乾癬に有効な極めて狭い範囲の波長のものを用いることによって、患部のやけど、色素沈着などの副作用を提言しています。またソラレンを用いる必要もなく、現在光線療法の第一選択となっています。アトピー性皮膚炎にも使用可能です。令和2年4月より円形脱毛症にも適応が追加されました。

・エキシマライト療法
ナローバンドUVBの中でもさらに波長を狭くした方法です。照射時間が極めて短く、また照射するUVBの総量も少ないです。紫外線が強力なので、患部にピンポイントで照射することになります。こちらもアトピー性皮膚炎、円形脱毛症に適応があります。

3回にわたり乾癬の病態、治療法について書いてみました。
乾癬は長期にわたって向き合っていく必要がある病気です。そのためにも乾癬の病態について知り、治療法もその意味や様々な選択肢があることを知っているだけで、症状が安定しない時などに患者さんの気持ちが分かったり、アドバイスなどをしてあげられることもあると思います。そのためのお手伝いができる記事を書けるよう精進します。

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