カロナール細粒の不足 錠剤で代用する際の調剤方法

調剤業務

1月13日に厚生労働省が「医療用解熱鎮痛薬等の在庫逼迫に伴う協力依頼」を出しました。これによると特に小児に対する解熱鎮痛剤が不足しており、可能な限り錠剤で処方して欲しい旨や、場合によっては錠剤を粉砕するなどして対応して欲しい旨が書かれています。錠剤を粉砕して散剤とするのは薬局としては普通の業務ですが、事前に考察しておかないと、いざという時にどうすれば分からなくなるかもしれません。今回の記事ではカロナール®錠の粉砕について紹介します。細粒が無くなった時に備えて参考にして下さい。


まず先ほど紹介したように小児に対する解熱鎮痛剤が不足しています。小児に対する解熱鎮痛剤はカロナール®細粒とカロナール®シロップでしょう。シロップを作るのは無理かもしれませんが、散剤なら錠剤の粉砕で用意できそうです。
まず初めにカロナール®錠を粉砕した場合、安定性はどうか、あゆみ製薬に問い合わせてみました。結果は以下のようになります。

温度25℃、湿度75%、遮光状態で3ヶ月後において含有量、外観性状に変化は無かった

なおこのデータは200㎎錠、300㎎錠、500㎎錠のいずれでも同じです。錠剤を粉砕して使うのに問題なさそうです。
ではいざ細粒が無くなった場合はどうすべきでしょうか?体重15kgの子供に頓服でカロナール®細粒が処方される場合を見てみましょう。
アセトアミノフェンの小児薬用量は1回10~15㎎/kgです。ほとんどが1回10㎎/kgで用いられるので、カロナール®細粒20%の場合は以下のようになります。

カロナール細粒20% 発熱疼痛時 1回0.75g 10回分

この時に細粒が無かったとします。これを錠剤で用意しましょう。
カロナール®細粒20%の全量は 0.75g×10回=7.5g になります。20%細粒なので力価は 7.5(g)×200(mg/g)=1500㎎ です。
これを錠剤で用意するのでカロナール®錠(200)なら7.5錠、カロナール®錠(300)なら5錠、カロナール®錠(500)なら3錠を粉砕すれば大丈夫です。これを10回分に分包します。必要に応じて乳糖などで賦形しましょう。

しかしこのやり方はおススメしません。今回の例では10回分でしたので計算しやすいですが、頓服は何回分で処方されるか分かりません。仮に5回分ならカロナール®細粒20%は 0.75g×5回=3.75g 20%細粒なので力価は 3.75(g)×200(mg/g)=750(mg) です。これを錠剤で用意するのは手間がかかります。

そこでおススメの方法として、錠剤を粉砕して賦形し細粒と同等にしたものを、予め作っておきましょう。
前述したようにカロナール®錠は粉砕しても、3ヶ月程度なら品質に問題なかったデータがあります。そのため予め錠剤を粉砕して作って散剤を用意しても大丈夫そうです。
今回は20%散を作るとします。カロナール®錠(200)を1錠粉砕すると、アセトアミノフェンの力価は200㎎です。これに乳糖を賦形して全量(カロナール®錠の粉砕+乳糖の合計)を1gにします。こうして出来た散剤は1g中にアセトアミノフェン200㎎を含有していることになります。つまり20%散になります。

これを10g用意しておくならカロナール®錠(200)を10錠粉砕し、乳糖を加えて全量を10gにします。これで10g中にアセトアミノフェン2000㎎を含有していることになり、20%散が10g用意できたことになります。
処方が来たら必要な分を測り、分包すればカロナール®細粒20%を使ったのと同じです。カロナール細粒®50%を使っている薬局なら、200mg錠の代わりに500㎎錠を使い、同様の手順で50%散を用意しておきましょう。

カロナール®錠の粉砕後の安定性のデータは3ヶ月分しかなく、カロナール®の多くは頓服で処方されるので、一度に沢山作っておくのではなく、必要最小限にこまめに作っておくのが良いでしょう。また投薬時には3ヶ月以上たったものは廃棄するよう伝えるのが良いと思います。
注意点としてカロナール®錠は粉砕すると苦みを生じます。いくら乳糖で賦形しても細粒に比べて苦みはどうしても強くなります。この事は忘れずに伝えましょう。必要に応じておくすり飲めたねゼリーなどをおススメして下さい。

さて今回のように散剤が入手困難な場合に錠剤を粉砕して調剤を行った場合、調剤料の加算は算定できるでしょうか?
同じく令和5年1月13日に厚生労働省が「疑義解釈資料の送付について(その 39)」を交付しており、これによると自家製剤加算が算定できます。
自家製剤加算は個々の患者に対し市販されている医薬品の剤形では対応できないときに、医師の指示に基づいて、容易に服用できるよう調剤上の特殊な技術工夫を行った場合に算定できる加算です。本来はカロナール®細粒が存在するので、錠剤を粉砕して散剤にしたのでは算定できません。しかし今回のケースでは小児に適した製剤が不足しており、やむを得ない状況なので算定が可能となっています。
ただし、レセプトの摘要欄に「小児用の○○(注:当該薬剤の一般名)の不足のため」等のやむを得ない事情を記載する必要があります。こちらも忘れずに記載するようにしましょう。


相変わらず薬の不足が続いており、いつになったら安定供給がされるのか先が読めません。しかしこういう時こそ常に考えて、今あるものでどうするか、これも薬剤師の腕の見せ所だと思います。常に現状を打破できるように学び続けましょう。

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