柴胡加竜骨牡蛎湯 どんな人に使う?

漢方薬

不眠や不安に対してはほとんどがベンゾジアゼピン系向精神薬が処方されます。しかし神経症状に対して時々漢方薬が処方されることがあります。神経症状に用いられる漢方薬は沢山ありますが、何を根拠にその漢方薬が使われているか考えている薬剤師は少ない印象です(あまり会ったことが無いです)。うちの薬局では柴胡加竜骨牡蛎湯が多いので、今回は柴胡加竜骨牡蛎湯について解説します。まずはこれが処方される根拠を理解してもらえればと思います。


柴胡加竜骨牡蛎湯は精神症状に用いられますが、その他の症状を伴っているます。まずは柴胡加竜骨牡蛎湯の適応を見てみましょう。

比較的体力があり、心悸亢進、不眠、いらだち等の精神症状のあるものの次の諸症
高血圧症、動脈硬化症、慢性腎臓病、神経衰弱症、神経性心悸亢進症、てんかん、ヒステリー、小児夜啼症、陰萎


これらを生じる初めの原因は気の流れが悪くなることによります。まずはこれから見てみましょう。
以前からお伝えしているように気には衛気が存在し、これが病気の原因(邪)が侵入するのを防いでいます。

しかしストレスや疲れなどにより気が低下してしまうと、衛気による防御作用が弱まり、邪の侵入を許してしまいます。
体には気と血の流れ道である経絡が存在します。気や血は経絡を通って全身を循環し、全身に栄養を行きわたらせ、また五臓六腑と体の各器官をつなぎ、その機能を整えます。
気・血の通り道になる経絡ですが、外邪の侵入を許すと、外邪の通り道にもなってしまう性質があります。

六邪(風邪、火邪、寒邪、暑邪、湿邪、燥邪)の中でも寒邪は少陽経に侵入しやすいです。少陽経は三焦を循環するため、結果として津液の循環が悪くなります。
※三焦は五臓にまたがって津液を循環させています。
少陽経は胆を循環しており、津液の循環が悪くなることにより胆肝が熱を持つようになります。また津液だけでなく、気の循環も悪くなっています。肝気の循環不足により、これも胆肝が熱を持つ原因となります。
五行説を見ると分かるように、肝は心の機能を高めます。

心は全身に血を送り出す作用の他に精神活動をつかさどります。これにより高血圧や、不安、いらだち、不眠といった症状が出るわけですね。

腎は水分代謝を調節しますが、腎に栄養を与えるのは津液です。津液の循環が悪くなることで腎の機能が低下します。腎は不要な水を膀胱から排泄する働きがあるので、腎の機能低下により尿量が減り、浮腫みになりやすくなります。

肝は脾の働きを弱める作用があるので、食欲不振や吐き気を起こすこともあります。

ここまでの説明でなぜ精神症状の他の症状が出るのか分かったでしょうか?それでは柴胡加竜骨牡蛎湯の含有生薬を見てみましょう。
柴胡、半夏、桂皮、茯苓、黄芩、大棗、人参、牡蛎、竜骨、生姜

柴胡には疏肝作用(肝気のうっ結を取り除き、肝気の循環を促進する作用)、清熱作用をもちます。これにより肝の熱を下げることになります。消炎、解熱効果のある黄芩と組み合わせて使われることが多いです。
竜骨、牡蛎はどちらも代表的な安神(精神を安定させる作用)薬です。
茯苓は代表的な利水薬ですが、他にも安神作用をもちます。
桂皮は体表面を暖める作用があり、これは寒邪の侵入を防ぎます。その他に血の循環を促進します。
半夏や生姜は消化器症状に用います。半夏は気を下げることにより、上焦に滞留した水が逆流することで起こる悪心嘔吐を抑え、生姜は健胃作用があります。
大棗、人参は健脾作用と安神作用をもちます。


これらの生薬の組み合わせで柴胡加竜骨牡蛎湯が精神症状の他に高血圧や腎臓病といった症状に有効なのが分かったでしょうか?
※健胃生薬、健脾生薬が含まれていますが、消化器症状に対する適応は無いようです。
肝の熱とそれによる心の亢進というのが重要なところですね。他の神経症状に有効な漢方薬は心が熱を受けて亢進するまでの過程が異なっていたりして、それに用いる生薬が違ってくるわけですね。それらを理解するにはそれぞれの漢方を1つ1つ解説していかなくてはなりません。時間がかかるので気長に別の記事をお待ちいただければと思います。

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