まず結論から言うと麦門冬湯は「乾いた咳(空咳)」に用います。
この乾いた咳が起きるメカニズムについて学びましょう。今回は大学で習ったような病態生理学や薬理学ではなく、東洋医学の考えを採用します。
乾いた咳の原因の1つに脾胃の乾燥が考えられています。
東洋医学は人体の内臓を五臓六腑と考えています。五臓とは心・肺・脾・肝・腎のことであり、西洋医学の臓器とは異なり、機能により大まかに体を分けたものと考えて下さい。
心:血を全身に送り、精神活動をつかさどる。
肺:呼吸をする。水(津液)の流れをコントロールしている。
脾:食べ物を消化・吸収する。これにより気・血・津液を作り出す。
肝:血を貯蔵し、全身への血の流れと量をコントロールする。
腎:水の代謝をコントロールする。精を蓄える。肺と協力して気を取り込む。
また東洋医学では口から肛門、膀胱までが一本の管になっていると考えられており、これを部位によって六腑と分けています。胃・小腸・大腸・胆・膀胱・三焦です。六腑は食べ物から栄養素を取り出す働きをしており、この取り出された栄養素が五臓によって気・血・津液・精を作り出し、貯蔵、循環しているとされています。
東洋医学では万物に陰陽があると考えられています。脾胃に陰が不足することによって、脾胃が熱をを持つようになります。この原因には水分の不足などがあげられます。脾胃の陰が不足いて陽が強くなった結果、熱は肺に及びます。これは五行説により、脾が肺を機能を高めるためです。
※五行説については別の記事で詳しく解説します。
麦門冬湯に最も多く含まれる麦門冬は肺や心、胃に潤いを与える作用があり、肺や胃の乾燥を和らげます。結果として咳や痰を抑えることになります。
麦門冬湯がどのように用いられるかある程度は分かりましたかね?
漢方は全てを完全に理解することは不可能に近いですし、今だに何で効くか分かっていないものも多いのも確かです。しかし東洋医学的考えを理解すればある程度は分かるようになります。次回以降の記事では他剤を例にとりながら、なるべく分かりやすく書いていきます。記事が良かったと思ったら、ランキングの応援お願いします。
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