目の回るような忙しさと体調不良が続き、更新が途絶えてしまいました。ようやく記事を1個書く余裕ができたので書こうと思います。2023年4月20日に巻き爪の治療薬であるリネイル®ゲルが発売されました。正確には巻き爪の矯正の補助に用いますが、内容としては初めてのものになります。薬局で扱うことはないでしょうが、知識として知っておいて損はないでしょう。今回の記事で巻き爪治療とリネイル®ゲルについて学んでいただければと思います。
まず巻き爪について確認しましょう。
巻き爪が生じる原因はいくつかありますが、主なものは爪に外的な力がかかり、変形してしまうものです。例えば靴が合わないとか、外反母趾があり親指に本来とは異なる力が加わるなどですね。その他には深爪なども原因となります。爪を切りすぎると爪が皮膚に邪魔されてまっすぐ伸びず、盛り上がって変形したりします。
これらの原因により爪が正常な伸び方をせず、内側に巻き込み、皮膚に食い込んでしまいます。これが巻き爪です。
巻き爪については分かったでしょうか?実際に巻き爪になってしまった際の治療法を確認しておきましょう。
・保存療法
爪が伸びることによって解消することがあるので、伸びるまで待ちます。爪の先が皮膚に食い込むと痛みを伴うことがあります(これを陥入爪といいます)。患部が炎症を起こしてしまっている場合は抗炎症薬を用います。細菌感染を起こしている 場合は抗生剤を用います。
・爪矯正
器具やプレートを装着したり、ワイヤーを通したりして爪の形を本来の形に近づける方法です。いずれの方法も1回やって終わりではなく、しばらくすると元に戻ってしまうことがあるので、定期的にやり直す必要があります。病院でもできますし、市販もされていますね。
・手術
皮膚に食い込んだ爪を外科的に取り除きます。さらに巻き爪になっている箇所の爪母(爪を作り出している箇所)を取り除き、今後そこに爪が生えないようにします。
以上が巻き爪の一般的な治療法です。今回リネイル®ゲルが登場したことにより薬物療法の選択肢が増えました。それではリネイル®ゲルについて見てみましょう。
リネイル®ゲルの有効成分はアセチルシステインです。
爪甲は硬ケラチンからできています。硬ケラチンはケラチン同士がジスルフィド結合により結び付いています。
アセチルシステインは構造式中にSH基を含有しており、これがジスルフィド結合を開裂させます。
カルボシステインなどの去痰剤が痰を低分子化して粘度を下げているのと同じ作用機序ですね。実際アセチルシステインはムコフィリン®吸入液という去痰剤で用いられています。
リネイル®ゲルが爪のを軟化するメカニズムは分かったと思います。これでは具体的に使い方について確認します。
・使用は爪矯正器具との併用
リネイル®ゲルの効能・効果は「巻き爪矯正の補正」です。効能・効果に関連する注意として以下のような記載があります。
「 本剤は、医療機器である爪矯正具と併用すること。また、併用する爪矯正具の使用方法等は、当該医療機器の電子添文を参照すること。」
爪矯正器具と併用することで矯正し易くするための薬だということが分かります。用法・用量の項目には以下のように記載してあります。
「巻き爪に爪矯正具を装着後、爪甲全体に適量を塗布し、約24時間後に水又は湯で洗い流す。」
まず初めに爪矯正具を装着します。その後塗布することで爪が軟化します。そのまま矯正具が装着され続けることによって爪が正しい形に矯正されます。リネイル®ゲルを洗い流すことによって爪は再硬化し、矯正された形に固定されるわけですね。
・保険適応はない
巻き爪の爪矯正は保険適応はありません。そのためリネイル®ゲルも保険適応外になります。当然薬価もありません。
・皮膚刺激に注意
リネイルゲルは皮膚に刺激性があります。そのため爪以外の箇所には触れないように、皮膚をテープ等で保護しておく必要があります。リネイル®ゲルは塗布後24時間で洗い流しますが、その際は周辺の皮膚も含めてよく洗う必要があります。
なおリネイル®ゲルには皮膚を保護するテープと、薬剤塗布後に周囲に流れ出ないために患部に塗布するテープの2種類が同封されていますので、これを使うことになります。
リネイル®ゲルは皮膚刺激以外の目立った副作用の記載がありません。去痰剤とほとんど同じなので副作用が少ないのも納得できます。その反面、効果に関してどうなのかな?といった印象も拭えません。去痰剤の効果は実感しにくいですしね。もし実際に使ってみた方が感想を聞かせてくれると嬉しいです。
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