ビリルビン

臨床検査値
この時期は健康診断を受ける人が多いようで、投薬時に病院から渡された検査値の紙を見せてきて、検査値の意味を教えて欲しがる人が結構います。
過去に記事で腎機能や肝機能について書いてきました。これらの数値が比較的理解しやすく、また医師から説明を受ける人も多いのですが、意外と基準から外れていてもスルーされることが多い項目として、ビリルビン値があります。結構気になっている人が多いようなので、今回はビリルビンについて解説します。

ビリルビンは赤血球に含まれる色素です。
赤血球は古くなると脾臓で分解されます。この時アルブミンと結合し、血中に出てくるビリルビンを間接ビリルビンといいます。その後、間接ビリルビンは肝臓でグルクロン酸抱合され胆汁中に分泌されますが、これを直接ビリルビンといいます。間接ビリルビンと直接ビリルビンを合わせたものを総ビリルビンといいます。
※ビリルビンは黄色い色素なので、体内のビリルビン値が上昇すると皮膚や眼粘膜に色素沈着を起こし、黄疸を生じます。総ビリルビン値が2.0mg/dLを超えると黄疸を起こすと言われています。

ビリルビンの基準値は以下の通りです。
総ビリルビン :0.2~1.2(mg/dL)
間接ビリルビン:0.1~0.8(mg/dL)
直接ビリルビン:0.1~0.2(mg/dL)

間接ビリルビンが上昇しているのか、直接ビリルビンが上昇しているのかでその原因疾患を予想することができます。

・間接ビリルビンが上昇している場合
ビリルビンの生成が亢進していることが考えられます。
ビリルビンは赤血球の破壊で生じるので、溶血性貧血などが原因となります。

・直接ビリルビンが上昇している場合
肝臓から胆道へのビリルビンの通過障害が考えられます。
⇒胆汁うっ滞、胆道閉塞、デュビン・ジョンソン症候群など
また肝炎など炎症性疾患も胆管がつまりやすく、直接ビリルビンが上昇します。

・間接ビリルビンと直接ビリルビンの両方が上昇している場合
肝細胞でのビリルビンの処理能が低下が考えられます。
⇒グルクロン酸抱合が低下し、間接ビリルビンが上昇。肝細胞の障害で、直接ビリルビンが血中に流出。肝硬変や薬物性肝障害など。

ビリルビンは先天的に体外へ排出しにくい人もいます。これを体質性黄疸といいます。体質性黄疸の種類をいくつか記しておきます。

・ギルバート(シベノール)症候群
肝臓でのグルクロン酸抱合能が先天的に低かったり、肝臓へ間接ビリルビンが取り込みにくい。間接ビリルビンが上昇。体質性黄疸で最も多い。

・デュビン・ジョンソン症候群
染色体異常で直接ビリルビンの排出に障害がある。直接ビリルビンが上昇。

・クリグラー・ナジャー症候群
Ⅰ型:グルクロン酸抱合のための酵素が産生されず、ビリルビンのグルクロン酸抱合が全く行われない。間接ビリルビンが上昇。
Ⅱ型:グルクロン酸抱合のための酵素の活性低下。Ⅰ型の軽症型。

体質性黄疸はクリグラー・ナジャー症候群以外は基本的に治療を要しません。
患者さんで若干ビリルビン値が高い人も見受けられますが、そのうち何人かは体質性黄疸であると思われます。患者さんから検査値を見せてもらうとビリルビン値は総ビリルビンだけ記載したものが多いですね。
検診クリニックなどで検査すれば間接ビリルビンと直接ビリルビンの両方が書かれるでしょうが、町のお医者さんでの検診では簡潔なものが多い印象があります。総ビリルビンで明らかな異常が出たら再検査で詳しくといったところでしょうか?

以前に書いたASTやALTγ-GTPやALPと総合的にみると原因疾患が何となく見えてきますよ。ご自身の健康診断の結果などを用いて色々分析してみましょう。

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