肝機能の検査値②γGTP、ALP

臨床検査値

前回の記事でALT、ASTについて説明しました。
今回はその他の肝機能の状態を表す検査値について書こうと思います。

・γーGTP
γグルタミン酸トランスフェラーゼといい、肝ミクロゾームで薬物代謝に関与します。(ペプチドのN末端のグルタミン酸を他のアミノ酸やペプチドに転移する酵素であり、グルタチオンの生成に関与しています。)
薬物代謝に関与する関係で、肝細胞に大量に含まれます。肝細胞が障害を受けると血液中に漏れ出てくる逸脱酵素です。
ALTやAST同様に  γGTPの値が高い⇒肝機能に障害がある  ということが言えます。

γGTPの基準値 男性:10~50(IU/L) 女性:5~30(IU/L)

γGTPは肝臓の他に腎臓、膵臓などにも含まれていますが、他の組織障害では肝臓ほど血清γGTPの数値に変化はほとんど起きません。そのため肝特異性が高い酵素といえます。
アルコール性肝障害、薬物性肝障害で特に上昇することが多いですが、数値が障害の程度と相関しないことに注意が必要です。
またアルコールやジアゼパム、フェニトインなどで酵素誘導を受けるため、これらを摂取している人では高値になることがあるので注意が必要です。
肝細胞の障害以外にも胆道の閉塞による胆汁うっ滞があると、γGTPの逆流が起こり血中濃度が上がります。
そのため他の検査値と合わせて肝疾患のスクリーニングに用いることが出来ます。(肝細胞のみに障害があるのか、あるいは胆道に閉塞を起こす疾患の可能性もあるのか)

・ALP
アルカリホスファターゼといい、細胞形質膜(外膜)に存在するリン酸化合物を分解する酵素です。
肝臓、腎臓、骨、腸粘膜で作られ、肝臓で処理された後に胆汁に分泌されます。
胆石や胆道炎、胆道癌などで胆道が塞がれて胆汁がうっ滞したり、肝臓の機能が低下すると胆汁中のALPが逆流して血液中に流れ込みます。

ALPの基準値:100~325(IU/L)

ALPは胆汁うっ滞では大きく上昇しますが、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変などではあまり大きな変化は見られません。そのため黄疸等が現れた際に原因が肝臓にあるのか、胆道にあるのかを特定するのに有効です。またALPは臓器特異的な6つのアイソザイムが存在するので、アイソザイム検査をすることにより、その由来組織を調べることが出来ます。

ALPアイソザイム  1、2:肝臓 3:骨 4:胎盤 5:小腸 6:肝臓、骨

注意点としては 成長期の数値は成人期の2~3倍の高値を示すことがあります。(骨の新生が盛んなので、骨由来ALP3が高くなる)
また妊娠30週以降は妊娠前より高値になります。(胎盤由来ALP4の上昇)

前回の記事と合わせて4つの検査値について書いてみました。
以前にも申し上げたように、単に基準値を暗記するのではなく、一体どういう経緯で異常値になっているのか、それによってどのような疾患の可能性があるのかを探っていくことが重要だと思います。私もまだまだ勉強中です。患者さんに検査値を見せてもらったときは十分に考察して、処方内容に問題ないかなどを確認していくつもりです。

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