臨床検査値の記事の初回は直接薬用量に影響することの多い、腎機能について解説していきたいと思います。
腎臓の生理機能の一つに血液をろ過して尿を作るといったものがありますが、この働きは片方の腎臓に100万個存在する糸球体といった組織で行われます。
※糸球体
腎臓の輸入細動脈がボウマン嚢といった袋の中でループ構造をしたものです。ボウマン嚢でループ構造をした後は輸出細動脈として出ていきます。ボウマン嚢の中で血液がろ過され原尿が作られます。
この糸球体でのろ過能力は糸球体濾過速度(以下GFR)で表されます。
GFRとは糸球体が1分間にどのくらいの血液を濾過し、尿を作れるかを見る指標です。
GFRを測定するにはイヌリンを用いるのが適しています。
イヌリンは糸球体で自由に濾過され、尿細管で分泌も再吸収もされません。
イヌリンの血中濃度と尿中のイヌリン濃度を調べることによって、GFRを測定できます。
Cinulin:血中イヌリン濃度(mg/mL)
Uinulin:尿中イヌリン濃度(mg/mL)
V:単位時間当たりの尿量(mL/min)
Cinulin × GFR = Uinulin × V
つまり GFR=Uinulin ・V/Cinulin (mL/min) で計算できます。
GFRの正常値:120~130(mL/min)
ただ臨床の場で実際にイヌリンを用いることは難しいので、実際には内因性物質のクレアチニンを用いることになります。
※クレアチニン
骨格筋中のクレアチンの最終代謝物であり、比較的一定の速度で血中に放出され、糸球体でろ過され、尿中へ排出される。(ろ過率はほぼ100%)
クレアチニンは生理活性をもたず尿中に排出され、再吸収も分泌もほとんど行われないため、イヌリンの代わりに用いることが可能です。
血中クレアチニン濃度の上昇 ⇒ 糸球体でのろ過率が悪い ⇒ 腎機能が低下
を示していると言えます。
クレアチニンの生産量は筋肉量と比例するため一般的に男性の方が女性よりも高い数値を示します。
血清クレアチニンの正常値男性:0.61~1.04 (mg/dL) 女性:0.47~0.79(mg/dL)
GFRを測定するにはイヌリンを注射し、患者を数時間拘束し、多量の飲水と採尿を行い、さらに採血も必要となります。測定方法は非常に困難となるため、一般的には血清クレアチニン値、年齢、性別を用いた推算GFR(以下eGFR)を用いることがほとんどです。
eGFRの計算式
男性:194×Cr-1.094×年齢-0.287 (mL/min/1.73㎡)
女性:194×Cr-1.094×年齢-0.287 × 0.739 (mL/min/1.73㎡)
※Crは血清クレアチニン値 1.73㎡は成人日本人の平均体表面積
eGFRの腎機能の判定基準
eGFR 腎機能
>90 正常
60~89 軽度腎機能低下
30~59 中度腎機能低下
15~29 重度腎機能低下
15> 末期腎不全
以上クレアチニンとeGFRについて理解できたでしょうか?次回はクレアチニンクリアランスなど、もう少し詳しい検査値について解説していきます。
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